大学時代は、パッとしなかったあの子が…？インスタ1投稿で10万円を稼ぐ女の正体
いまや私たちの日常に溶け込んでいるSNS。
InstagramやYouTube、Twitterなど、とても便利で面白いツールだが…。
そこには、とんでもない“ヤバイ世界”が潜んでいる可能性も。
SNSの沼にハマった女たちに待ち受ける衝撃の事件と、その結末は…？
▶前回：ご近所妻たちに対する、内緒の愚痴ブログがバレた…！女の悪行を暴いた意外な人物
インスタグラマーとして成功したい女〜優樹菜（29）の場合〜【前編】
「では、明日の10時までにインスタグラマーのリストをお出しします。はい。引き続きよろしくお願いいたします…」
机の上にある時計をちらっと横目で確認すると、すでに21時を回っていた。
私は、数分前に閉じたばかりのPCを再び開き、指に力を込めてパスワードを入力。仕事モードに入る。
― 明日の10時出しでリスト依頼をしてくるなんて。今日、まともに寝れるかな…。
新卒で現在の会社に入り、SNSのインフルエンサーキャスティングの部署に配属されてから、早いものでもう6年が経つ。
私が担当する販路は、無理難題を押し付けてくるクライアントが多く、ここ最近は夜遅くまでの残業を強いられている。
この仕事の難しさは、クライアントとのやりとりだけではない。もっとも大変なのが、インフルエンサーの扱い方だ。
彼、彼女たちは芸能事務所に所属していない人が大半で、約束に対してルーズなところがある。平気で納期を破ったり、撮影現場に来なかったりすることもしばしば。
『インフルエンサーのキャスティング』と聞けば、友人たちはみな華やかな仕事だねと、羨ましがる。
しかし、現実は毎日、気苦労が絶えない。
「みんな、アプリで顔加工ばっかり。実物は大して美人でもイケメンでもないのに…」
ひとりぶつぶつと不満を漏らしながら、まとめ上げたインスタグラマーの候補リストをにらみつけた。
とある休日。大学時代の友人から、衝撃的な現実を突きつけられる…
ある休日。
大学時代に1番仲の良かった同級生4人と、『アペロ ワインバー青山』で久しぶりのランチ女子会が催された。
コロナ禍になって以来、集まることを控えていたから、会うのは実に半年ぶり。今日だけは一旦仕事のことは忘れて、思いっきり楽しもうと思っていた。
一堂に会した私たちは、みなわれ先にと、近況を報告し合う。
「え〜じゃあもうすぐ入籍って感じ？おめでとう！」
「そうなの。このご時世だから結婚式は少人数でやるけど、みんなは絶対に呼ぶから来てね！」
友人が満面の笑みで話す。私も笑顔で頷いていたものの、内心、大ダメージを食らっていた。
というのも、結婚はこのメンバーの誰よりも早いと思っていたから。
私たち4人は、大学内でもトップクラスと噂される美人グループだった。ちやほやされることが多く、このグループにいることが何より誇らしかった。
中でも、私は当時ダントツでモテていたという自負がある。
― まさか、先を越されるとは…。
仕事が多忙すぎたせいでフラれて以来、もう3年ほど彼氏ナシだ。
「優樹菜は仕事が充実してて、本当にカッコいいよね」
「そうそう。優樹菜みたいに華やかな世界で働くの、憧れる〜」
瞳を輝かせてはしゃぐ彼女たちを見て、私は、はははと渇いた笑い声を漏らした。
ここでタイミングよく、オーダーしていた料理が続々と運ばれてきて、一旦おしゃべりはストップ。
私は、話をうまくさえぎってくれたウエイターに、内心とても感謝をした。
料理がずらりと並ぶと、みな、スマホ片手に料理の写真を撮るのに夢中になる。
「そういえば…優樹菜、大学で同じ学部にいた“真美子”って覚えてる？」
写真を撮り終えて、食事をというタイミングでふと新たな話題を私に振られた。
私は、必死で記憶を遡る。そして、おぼろげに彼女の姿を思い出した。
真美子は、可愛らしいルックスをしているが、いつも自信なさげで気が弱く、目立たない子。グループも地味めのグループに属していた。
私は「いたね〜思い出した！」と返す。
「なんかさ、インスタグラマーになって大人気らしいんだよね。優樹菜、知ってる？」
そう言って、あるアカウントのホーム画面を見せられた。
「フォロワー15万人！？え…ちょっと、これ本当に真美子のアカウントなの？」
画面に表示されていたアカウント名は「mamico_outfit」。私の会社でも度々PR案件を依頼している、顔出しなしのファッション系インフルエンサーだ。
― あの地味な真美子が、インフルエンサーのmamico！？ウソでしょ…。
どう考えても、“真美子＝フォロワー15万人の人気インフルエンサー・mamico”というのが、頭の中で結びつかない。
記憶にも残らないほど目立たない存在だった彼女が、今や華やかな世界でちやほやされている。
一方の私は、そんなインフルエンサーたちのご機嫌をうかがいながら、必死で仕事をこなす日々。学生時代とはまるで立場が逆転したように感じた。
― こんなのあり得ない…。
その後の会話を覚えていないほど、私は茫然としていた。
◆
帰宅後、私はmamicoのインスタ投稿をくまなくチェックした。
投稿内に「#pr」がついているものは、企業からの案件。つまり、ギャラが発生しているものだ。
見ると、ファッションだけでなく、コスメや飲料まで、有名企業から多くの案件を受けているようだった。
― フォロワー15万人だったら、1投稿で10万円以上はもらえるはず…。
写真を撮って、少し加工して、クライアント側が考えた文章とハッシュタグを付けて1つ投稿するだけで、真美子は10万円以上のギャラをもらっている。
対する私は、上司やクライアントに詰められながら毎晩遅くまで残業し、休日稼働も度々あって、月収は40万円ほど。
会社勤めは給与が安定するし、いざという時は会社が守ってくれるから、堅実的な働き方なのは間違いない。
しかし、大学時代のようにちやほやされることはなく、華やかさとは無縁だ。
不安定な仕事とはいえ15万人という多くのフォロワーを抱え、自分より稼ぎながら、周りにおだてられる真美子のことを素直に羨ましく思った。
と同時に、悔しい気持ちも募る。
理不尽な現実に打ちひしがれながら、私はふと思った。
自分の何が彼女に劣っているだろうか？と。
学生時代はミスコンに選出されたりモデル活動をするなど、ビジュアルにはかなりの自信がある。
Instagramだって、この6年仕事で嫌というほどノウハウをため込んできた。
仕事のおかげでインフルエンサーとの強い結びつきもあるから、アカウントを開設すれば、彼女たちに拡散してもらってある程度はフォロワーを伸ばせるはずだ。
― 真美子がインフルエンサーになれるなら、私にだってできる！
私は打倒、真美子を掲げて、インスタグラマーとして成功することを決意した。
フォロワーを増やすため、優樹菜が実践したインスタ投稿の工夫とは？
早速、私は今まで使っていたプライベート用の鍵アカウントのほかに、公開用のInstagramアカウントを作成した。
そして、「これから案件関連でも使うアカウントだから、ストーリーとかで拡散してくれたら嬉しいな」と適当な理由をつけて、インフルエンサーたちにアカウントを知らせた。
すると思惑通り、彼女たちは私のアカウントをストーリーにタグ付けするなどして広めてくれた。
彼女たちも、仕事をオファーしてくれる私のことを邪険にはできないのだろう。
このアカウントはあくまでフォロワーを増やすことを目的としているため、投稿にはあえて一貫性を持たせず、流行のバズりネタはなんでも載せて投稿した。
たとえば、美容情報、韓国グルメ、映えるスイーツ、飼っている猫。そして自分の水着写真など。
男女、年齢問わず、いろいろな層に見てもらえるのはもちろん、PR案件で幅広い商材を受けられるというメリットがある。
加えて、必ずハッシュタグは最大数の30個を付ける、画像1枚目にはわかりやすい見出しを入れる、自分からいろいろな人の投稿にいいねを付けにいって相手にも見に来てもらうよう仕向けるなど、地道な工夫も行った。
自分が持つすべてのネットワークを利用してInstagramを運用し、1ヶ月で5,000以上のフォロワーの獲得に成功した。
― たった1ヶ月でこれだけフォロワーを増やすことができるなら、PR案件なんてすぐに受けられるようになるはず…！
私は期待で胸をいっぱいにした。
◆
Instagramの本格的な運用を始めてから、早くも3ヶ月が過ぎた。
フォロワーは1万人を超えたが、明らかに伸び悩んでいる。仕事が忙しすぎて、なかなか更新頻度を上げられないことが大きな原因なのだろう。
映える投稿をするためには、想像以上に時間と労力がかかる。
コスメひとつ撮影するのにも、ライティングや配置にこだわり、何十枚も写真を撮りなおして、画質を落とさないように細かく加工を施す。
自分自身が映る投稿をするとなれば、撮影してくれる人も連れて行かなくてはならないうえ、どんな画を撮りたいのか意図を理解してもらう必要がある。
改めて、mamicoのインスタのフォロワー数が15万人という数字が、とんでもないものだと思い知らされる。
― なんで真美子にはできて、私にはできないんだろう…。
このときの私は、仕事とインスタ運用のバランスがうまくいっておらず、なんだか無性にイライラしていた。
そして、魔が差した私は…こっそりと“3つ目のInstagramアカウント”を作成した。
プロフィール画像は、真っ黒。名前も「あ」だけ。
― 1回くらいなら、バチは当たらないよね…？
私は、mamicoの最新の投稿に『同じような構図ばかりで、つまらない投稿ですね。服も地味でまるでトレンド感がない。こんなレベルでインフルエンサーを名乗って恥ずかしくないんですか？』と書き込んだ。
彼女のコメント欄に、自分のアンチコメントが堂々と並ぶ。なんだか、胸がすく思いだった。
少し気が晴れた私はアカウントを閉じ、気を取り直して仕事に励んだ。
▶前回：ご近所妻たちに対する、内緒の愚痴ブログがバレた…！女の悪行を暴いた意外な人物
▶Next：3月29日 火曜更新予定
インフルエンサーとして成功を掴むため、躍起になる優樹菜だったが…。
