高齢化社会では“介護脱毛”が新常識に?美容脱毛と異なる目的と理由
世界的に少子高齢化といわれる現在。高齢者とは、一般的に65歳以上と定義されていますが、日本の総人口を占める高齢者の割合はなんと世界第1位とされています。さらに、この高齢者の割合は増え続けると予想され、2025年には約30%が高齢者になる見込みとも…。
少子高齢化社会。その割合は増え続ける一方です(※画像はイメージです。以下同)
人は平等に年齢を重ね、いずれ自身も介護を受ける側になるときがやってきます。そのときに、最も不安に思うことは“排泄ケア”ではないでしょうか。そこで、今回は排泄ケアにまつわる美容医療施術「介護脱毛」についてをオーロラクリニック院長の川上真央先生にお話を伺いました。
介護脱毛とはデリケートゾーンの脱毛のことを指し、美容クリニックでいうVIOラインの脱毛のこと。体毛がないことで介助者が排泄ケアをスムーズに行えるといったメリットがあると言われています。
ーー最近、美容クリニックの広告などで「介護脱毛」という言葉を見かけるようになりましたが、「介護脱毛」とはどのような脱毛でしょうか?
「当院も介護脱毛についてのご相談が年々増えており、男性女性問わず早い方では50歳くらいで介護脱毛を受ける患者さまがいらっしゃいます。介護脱毛に明確な定義はありませんが、将来、自身に介護が必要となったとき、介助者の排泄ケア負担を少しでも減らしたい方が行う脱毛を介護脱毛、と呼んでいます」
ーー体毛がないことで介助者の排泄ケアの負担が減らせる以外に、介護脱毛のメリットはありますか?
「介護が必要になると、多くの場合は大人用オムツを使用します。オムツはどうしてもムレが生じ、かぶれなどを引き起こしてしまうのです。アンダーヘアを脱毛することでムレにくくなり、皮膚のかぶれや異常なども早期発見できることがメリットと言えます。
なかでも深刻なのは痔ろうと呼ばれる肛門の炎症です。これは肛門の溝に便などが付着し、細菌が繁殖することで引き起こります。とくに男性の高齢者に多く、衛生面や疾患予防の観点から介護脱毛を検討する方が増えていますね。また剃毛などで自己処理を行う場合は、カミソリによる肌荒れや、剃毛時の怪我といったリスクがあるため注意が必要です」
ーー介護脱毛に明確な定義はないとのことでしたが、一般的な美容脱毛と違いはあるのでしょうか?
「美容脱毛は脇や腕、脚などのムダ毛を脱毛することで肌をなめらかに見せる審美的要素が強い脱毛です。VIOラインと呼ばれるアンダーヘアの脱毛も下着から毛がはみ出ないように脱毛を行うことはもちろん、ハート型やV型などデザイン性のあるラインに整える方もいらっしゃいますよ。
一方、介護脱毛は排泄ケアを目的としているので、脱毛部位はVIOとなります。無毛状態にすることで、排泄物のふき取りを素早く衛生的に行うことができます」
ーー美容脱毛であれば自主的に施術を行うと思われますが、介護脱毛の場合はいかがでしょう? 家族からの提案などでしょうか?
「介護脱毛はおもに娘さんやお嫁さんからのアドバイスです。初めは難色を示す方が多いようですが、やはり将来の排泄ケアの一環であること、看護師が施術を行うことを伝えると前向きに検討される方がほとんどのようです」
ーー介護脱毛のメリットは衛生管理と皮膚の健康維持とのことですが、介護脱毛のデメリットはありますか?
「介護脱毛のデメリットは施術前の羞恥心ですね。現在の30〜40歳はアンダーヘアの美容脱毛が珍しくない世代ですが、シニア世代の男性は、下半身への施術に抵抗があるという方がとても多いです。
そのほか、介護脱毛のデメリットとして施術時の痛みや、複数回の通院(脱毛施術)が必要であること、保険適用がないため費用が高額であることなどが挙げられます。また、温泉などの公衆浴場で他人の目が気になるといったケースも。医療脱毛を行うと毛を元の状態に完全に戻すことはできないため、ご注意くださいね」
ーー美容脱毛と使用するレーザー機種は同じでしょうか?
「介護脱毛も美容脱毛も使用するレーザー機種は同じです。しかし、ショット式と呼ばれるメラニンをターゲットとするレーザーは、加齢により色素の抜けた毛根には反応しません。また照射時に輪ゴムで弾かれたような痛みがあるため、毛の色素が薄い方や、痛みが苦手な方はその両方をカバーする蓄熱式というレーザーにより施術を行います」
ーー50代・60代と介護脱毛を早めに行うことで、何かメリットはありますか?
「なにより通院です。脱毛は数回の施術が必要なため、フットワークの軽い年齢のうちに行うことが大切。また、毛の減少によりムレやニオイから解放されるといったメリットが挙げられます」
ーー介護脱毛はデリケートゾーンの脱毛といえますが、それであれば脱毛サロンで施術を受けても問題はありませんか?
「現在、多くの脱毛サロンがありますが、薬機法の関係でレーザーとはエネルギーが異なる照射機器での”光脱毛”となります。また、サロンスタッフは医療資格がなく、毛根を破壊することはできないことから、正しくは脱毛ではなく減毛といえるでしょう。一般的に医療脱毛より安価で行われていますが、サロンへ通う回数は増えてしまいます。
医療脱毛は脱毛前に皮膚の状態などを医師が診察を行います。そして施術は看護師によって行われるため、安全性は高いと言えるでしょう。また万が一、施術後に皮膚トラブルが生じた際も医師により適切な処置がなされるため、安心して施術を受けていただけます。
高齢化により今後、介護脱毛を検討する方は増えていくと思われます。とてもデリケートな部位である介護脱毛を行う際は医師の診察を受け、必要回数や総額をしっかり質問することが大切ですよ」
介護脱毛は介助者が排泄ケアをスムーズに行えることから「思いやり脱毛」とも呼ばれています。介助者だけでなく、皮膚かぶれや疾患予防となり、自身の健康を守る施術とも言えるでしょう。介護脱毛を受ける部位はとてもデリケートです。まずは医師の診察を受け、不安なことはどんな些細なことも相談しましょう。
<取材・文/城戸香>
●教えてくれた人
オーロラクリニック新宿院
院長。総合病院で研鑽を積み、オーロラクリニック新宿院院長就任。外見と内面の健康と美しさをモットーとし、誰もが通いやすく親しみがあるクリニックを目指す。
少子高齢化社会。その割合は増え続ける一方です(※画像はイメージです。以下同)
人は平等に年齢を重ね、いずれ自身も介護を受ける側になるときがやってきます。そのときに、最も不安に思うことは“排泄ケア”ではないでしょうか。そこで、今回は排泄ケアにまつわる美容医療施術「介護脱毛」についてをオーロラクリニック院長の川上真央先生にお話を伺いました。
最近見かける、“介護脱毛”とは?
介護脱毛とはデリケートゾーンの脱毛のことを指し、美容クリニックでいうVIOラインの脱毛のこと。体毛がないことで介助者が排泄ケアをスムーズに行えるといったメリットがあると言われています。
●高齢化の影響か美容クリニックにも問い合わせが増加?
ーー最近、美容クリニックの広告などで「介護脱毛」という言葉を見かけるようになりましたが、「介護脱毛」とはどのような脱毛でしょうか?
「当院も介護脱毛についてのご相談が年々増えており、男性女性問わず早い方では50歳くらいで介護脱毛を受ける患者さまがいらっしゃいます。介護脱毛に明確な定義はありませんが、将来、自身に介護が必要となったとき、介助者の排泄ケア負担を少しでも減らしたい方が行う脱毛を介護脱毛、と呼んでいます」
ーー体毛がないことで介助者の排泄ケアの負担が減らせる以外に、介護脱毛のメリットはありますか?
「介護が必要になると、多くの場合は大人用オムツを使用します。オムツはどうしてもムレが生じ、かぶれなどを引き起こしてしまうのです。アンダーヘアを脱毛することでムレにくくなり、皮膚のかぶれや異常なども早期発見できることがメリットと言えます。
なかでも深刻なのは痔ろうと呼ばれる肛門の炎症です。これは肛門の溝に便などが付着し、細菌が繁殖することで引き起こります。とくに男性の高齢者に多く、衛生面や疾患予防の観点から介護脱毛を検討する方が増えていますね。また剃毛などで自己処理を行う場合は、カミソリによる肌荒れや、剃毛時の怪我といったリスクがあるため注意が必要です」
●介護脱毛と美容脱毛の違い
ーー介護脱毛に明確な定義はないとのことでしたが、一般的な美容脱毛と違いはあるのでしょうか?
「美容脱毛は脇や腕、脚などのムダ毛を脱毛することで肌をなめらかに見せる審美的要素が強い脱毛です。VIOラインと呼ばれるアンダーヘアの脱毛も下着から毛がはみ出ないように脱毛を行うことはもちろん、ハート型やV型などデザイン性のあるラインに整える方もいらっしゃいますよ。
一方、介護脱毛は排泄ケアを目的としているので、脱毛部位はVIOとなります。無毛状態にすることで、排泄物のふき取りを素早く衛生的に行うことができます」
ーー美容脱毛であれば自主的に施術を行うと思われますが、介護脱毛の場合はいかがでしょう? 家族からの提案などでしょうか?
「介護脱毛はおもに娘さんやお嫁さんからのアドバイスです。初めは難色を示す方が多いようですが、やはり将来の排泄ケアの一環であること、看護師が施術を行うことを伝えると前向きに検討される方がほとんどのようです」
●介護脱毛のデメリット
ーー介護脱毛のメリットは衛生管理と皮膚の健康維持とのことですが、介護脱毛のデメリットはありますか?
「介護脱毛のデメリットは施術前の羞恥心ですね。現在の30〜40歳はアンダーヘアの美容脱毛が珍しくない世代ですが、シニア世代の男性は、下半身への施術に抵抗があるという方がとても多いです。
そのほか、介護脱毛のデメリットとして施術時の痛みや、複数回の通院(脱毛施術)が必要であること、保険適用がないため費用が高額であることなどが挙げられます。また、温泉などの公衆浴場で他人の目が気になるといったケースも。医療脱毛を行うと毛を元の状態に完全に戻すことはできないため、ご注意くださいね」
●介護脱毛に使用するレーザーとは
ーー美容脱毛と使用するレーザー機種は同じでしょうか?
「介護脱毛も美容脱毛も使用するレーザー機種は同じです。しかし、ショット式と呼ばれるメラニンをターゲットとするレーザーは、加齢により色素の抜けた毛根には反応しません。また照射時に輪ゴムで弾かれたような痛みがあるため、毛の色素が薄い方や、痛みが苦手な方はその両方をカバーする蓄熱式というレーザーにより施術を行います」
ーー50代・60代と介護脱毛を早めに行うことで、何かメリットはありますか?
「なにより通院です。脱毛は数回の施術が必要なため、フットワークの軽い年齢のうちに行うことが大切。また、毛の減少によりムレやニオイから解放されるといったメリットが挙げられます」
●介護脱毛は脱毛サロンと医療脱毛のどちらを選ぶべき?
ーー介護脱毛はデリケートゾーンの脱毛といえますが、それであれば脱毛サロンで施術を受けても問題はありませんか?
「現在、多くの脱毛サロンがありますが、薬機法の関係でレーザーとはエネルギーが異なる照射機器での”光脱毛”となります。また、サロンスタッフは医療資格がなく、毛根を破壊することはできないことから、正しくは脱毛ではなく減毛といえるでしょう。一般的に医療脱毛より安価で行われていますが、サロンへ通う回数は増えてしまいます。
医療脱毛は脱毛前に皮膚の状態などを医師が診察を行います。そして施術は看護師によって行われるため、安全性は高いと言えるでしょう。また万が一、施術後に皮膚トラブルが生じた際も医師により適切な処置がなされるため、安心して施術を受けていただけます。
高齢化により今後、介護脱毛を検討する方は増えていくと思われます。とてもデリケートな部位である介護脱毛を行う際は医師の診察を受け、必要回数や総額をしっかり質問することが大切ですよ」
●介護脱毛は“思いやり脱毛”とも
介護脱毛は介助者が排泄ケアをスムーズに行えることから「思いやり脱毛」とも呼ばれています。介助者だけでなく、皮膚かぶれや疾患予防となり、自身の健康を守る施術とも言えるでしょう。介護脱毛を受ける部位はとてもデリケートです。まずは医師の診察を受け、不安なことはどんな些細なことも相談しましょう。
<取材・文/城戸香>
●教えてくれた人
【川上真央先生】
オーロラクリニック新宿院
院長。総合病院で研鑽を積み、オーロラクリニック新宿院院長就任。外見と内面の健康と美しさをモットーとし、誰もが通いやすく親しみがあるクリニックを目指す。