2021年卒の大学別(卒業生1000人以上)就職率ランキング。トップは5年連続で金沢工大。

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2021年卒の実就職ランキングで2位にランクインした愛知工業大学の自由ヶ丘キャンパス。八草キャンパス、本山キャンパスなど愛知県内に3つのキャンパスを有する (写真:天空のジュピター/PIXTA)

2020年卒まで続いてきた大学生の売り手市場。コロナ禍の影響により、2021年卒の就活戦線の途中からこの流れは一転した。こうした状況を端的に表しているのが、大卒求人倍率(新卒生の民間企業の求人総数÷民間企業就職希望者数で算出)の変化だ。リクルートワークス研究所が発表している2021年卒の大卒求人倍率は、2月の調査時点では1.72倍だったが、6月調査では1.53倍にまで下がった。

全体の実就職率は前年比3.3ポイント減の85.4%

コロナ禍の影響が大きいが、識者は「リーマン・ショック以降、最も低かった2011年から2014年にかけて、1.2倍台の求人倍率が続いた時期に比べれば堅調。就職氷河期の再来ではない」と口をそろえる。


それでも、航空業、観光業、旅行業などの採用数の縮小や、経験したことがないオンライン就活など、就活生に吹いた逆風は、大学別の実就職率(就職者数÷<卒業者数−大学院進学者数>)のランキングに少なからず影を落とした。

大学通信が、医学部と歯学部の単科大学を除くすべての大学を対象として行っている就職状況調査によると、2021年卒の平均実就職率は85.4%。前年を3.3ポイント下回った。卒業生数1000人以上の大学の中で、実就職率が90%を超えている大学は、前年の89大学から53大学と大きく減っている。

個別の大学の実就職率の状況を、卒業生が1000人以上の大学を対象とした実就職率ランキングで見ていこう。

1位の金沢工業大学は、この条件の実就職率ランキングで5年連続のトップだ。実就職率が高いだけではなく就職先に関しても実績が高く、上場企業と大手企業(資本金3億円以上または従業員300人以上の企業)の就職者は、卒業生の64%に上る。

2位は昨年の4位から上がった愛知工業大学。トップ2大学以外にも工科系大学が数多くランクインしているのは例年通りだ。製造業の求人は多く、情報技術の発達に伴う事務系職の減少の影響を受けにくいことに加え、銀行や商社、シンクタンクなど文系のイメージが強い業種でも理系的な知識が求められていることなどが、工科系大学の実就職率が高い要因となっている。

ランキングを見ると、大阪工業大学(4位)、名古屋工業大学(5位)、芝浦工業大学(9位)、広島工業大学(10位)と、上位10大学中6大学が工科系大学となっている。

総合大学では、福井大学が3位に入った。卒業者数1000人以上かつ複数の学部を持つ国立大の中で13年連続のトップだ。就職に強い工、教育、医の3学部の定員が多いことが、高い就職率の背景にある。名城大学(7位)や宮崎大学(8位)も教員養成系や理系学部の定員規模が大きな大学だ。

実就職率を下げる大学が大半

この中で注目されるのは、8位の宮崎大。2021年卒は、大半の大学が前年の実就職率を下回った。そうした中、0.9ポイント上がり、前年の41位から大きく順位を上げているのだ。前年と比較できるランキング中の大学の中で実就職率が上がっているのは、宮崎大を除いて7大学しかない。

実就職率が下がる大学が大半ということもあり、この7大学は順位を大きく上げる傾向にある。順位の変動を見ると、13位の大阪府立大学は、前年順位52位から上がっている。同様に、16位の茨城大学は前年の77位から、34位の京都工業繊維大学は82位から、44位の金沢大学は124位から、54位の長崎大学は105位から、101位の九州大学は156位から、127位の岡山理科大学は159位からそれぞれ順位を上げている。

ランク外の大学では、筑波大学(154位)と京都大学(167位)が前年の実就職率を上回っている。厳しい就活環境にもかかわらず、近畿と地方の国公立大が実就職率を伸ばしている傾向がうかがえる。

女子大では、卒業生1000人以上の女子大の中で11年連続トップを続けている昭和女子大学が14位で最上位となった。その他、東京家政大学(17位)、安田女子大学(31位)、椙山女学園大学(38位)、武庫川女子大学(42位)、実践女子大学(49位)などがランクインしている。

女子大は、航空業や観光業、旅行業など特定業種の採用抑制や、事務職の採用減少などの影響を受けやすいこともあり、表中の13大学中、半数近い6大学の実就職率が3ポイント以上の減少となっている。

ランキング中の難関大学に注目すると、旧帝大に東京工業大学、一橋大学、神戸大学を加えた難関国立10大学では、一橋大学(20位)と東京工業大学(57位)といった、文系と理工系それぞれのトップ大学が肩を並べた。総合大学では名古屋大学(85位)がトップ。

以下、九州大学(101位)、神戸大学(121位)、北海道大学(132位)、大阪大学(142位)、東北大学(149位)の順となった。京都大はランク外の167位。東京大学は現時点で実就職率を公表していない。

問われる大学の就職支援体制

早慶上智、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)といった難関私立大では、関西学院大学が56位で最上位となった。

次位は首都圏の大学でトップの中央大学(84位)。以下、明治大学(86位)、関西大学(94位)、法政大学(99位)、青山学院大学(104位)、同志社大学(115位)、慶應義塾大学(120
位)、立命館大学(122位)、立教大学(125位)と続く。早稲田大学(157位)と上智大学(158位)はこのランキング表では圏外になっている。

難関国家試験合格を目指して勉強を続ける卒業生や、国内外大学の学部への進学、起業などは、実就職率の進路決定者に算入されない。こうした多様な進路を選択する学生が多いことが、難関大の実就職率が上がりにくい要因となっている。もちろん、就職先は有名企業が多く、ランキングの順位は低くても、自己実現の可能性が高い大学であることに疑う余地はない。

リクルートワークス研究所によると、今回の集計結果の1つ下の学年にあたる2022年卒の新卒求人倍率は2021年卒並みの1.50倍となっている。コロナ禍で募集が停滞している業種はあるが、求人数は十分にある。こうした状況で実就職率を上げることができる大学はどこなのか。大学の就職支援体制が問われることになりそうだ。