「余力はない」病床切迫 医療現場の今
県内の新型コロナウイルスの新規感染者は、連日100人を超える人数が発表されています。
病床使用率は12日現在で55.6%。さらに、入院率は16.5%。5人のうち4人は感染しても入院できていない状況です。
重症患者の治療を担う済生会宇都宮病院に医療現場の切迫した現状を聞きました。
「余力は全くない。コロナ診療だけでなく、救急の診療にも余力がない。これは異常事態。」こう話すのは、宇都宮市竹林町にある済生会宇都宮病院の小倉崇以救命救急センター長です。
この病院では、コロナ患者に対応する病床はほぼ埋まった状態が続いているといい現場はぎりぎりの状況です。
小倉センター長は、「いま重症のコロナ患者をなかなか中等症を担当する病院から引き取れない、受け入れられないという現状がある。だから、夜間、人工呼吸が必要になったとか、人工心肺装置ECMO(エクモ)が必要になったという患者が発生した場合には、我々が現地に出向いて、人工呼吸、夜中の3時や4時に出向いて、やっている。そうしないと、命を落とす可能性がある。そういった現実といま向き合いながら日中夜問わず、やっている現状。」
病院が対応するのは新型コロナウイルスの患者だけではありません。
一般の外来や入院診療、救急医療も平行して行っています。
しかし、これらの医療提供を制限せざるを得ないという危機的状況にまできています。
済生会宇都宮病院・篠崎浩治副院長は「コロナ対応の比重増やし、医療資源もそちらに比重を移しているので、一般診療および、救急医療を、ある程度制限せざるを得ないところがでてきている。延期できる入院(良性疾患の手術など)少し先延ばしても大丈夫な患者は一時的に、入院を延期させていただくことをお願いすることがある。可能な限り病院の中で対応し、そういったことがないように努めるが、残念ながら、入院のベッド数自体が減っているので、一部のベッドを制限せざるを得ない状況。病院としてできることを最大限やっていきたいと思う。この病院で働く全スタッフは最大限頑張っている、ぜひ県民の皆さんも自分の生活様式を見直せることがあるなら協力を。」と呼びかけました。
最後に小倉センター長は「いまコロナの患者で重篤化しているのは、若い世代。30、40、50代はザラ。今病院で起こっていることは、非常に危機的な状況なんだということを、認識してもらい、日々の生活で振り返られるところがあれば、改善できることがあれば、ひとつでもいいので、それを今すぐ行ってほしいと思う。医療崩壊させたくない。させないために今努力をする。個々人レベルでも、病院レベルでも、行政レベルでも、今、医療崩壊させないために、努力しなきゃいけない段階にきている」と話します。
感染拡大を受けて済生会宇都宮病院では、全部で644床ある病床のうち新型コロナウイルスに対応する病床をおよそ30床に増やすということです。
また、対応するには一般診療と比べ物にならないほど医療従事者の多くの手が必要だといいます。
このため、休床。つまり、使わないベッドをつくり、生じた人手を新型コロナウイルスの対応に充てるということです。
この病院では新型コロナウイルスの重症患者を受け入れているということを、これまでは差別や偏見からスタッフを守るため明らかにすることは避けてきました。
ですが、今はこれまでにないほど現場が切迫し現状を伝えなければならないと取材に応じてくださいました。
それほど、医療の現場は厳しい状況だということです。
お盆休みも気を緩めず一人ひとりが対策を徹底し感染拡大を防ぎましょう。