料理好きなら外せない魅惑の調味料。スパイスの雑学&豆知識【後編】

プロに教わるスパイスの雑学&豆知識、後編!

macaroniの7月のテーマ『夏の暮らしにスパイスを』にあわせて、朝岡スパイスのスパイスコンシェルジュ 伊藤綾子さんにスパイスの特徴やおすすめの使い方などを教えてもらう記事の後編。

せっかく購入したスパイスを賢く、上手に使うためにはまず基本的な特徴を知ることが大切です。ご紹介するスパイスは、macaroniで実施したアンケート『おうちでよく使うスパイスは?』でTOP10にランクインしたもの。本記事では、前編に続き5~1位の人気スパイスをご紹介します!

前編でもお伝えしたとおり、伊藤さんは大のスパイス好き。「そのスパイスにも合うと思います!あとそれも!」とさまざまな使い方や豆知識を教えてくれました。

上位の話になるにつれて、話もヒートアップ。スパイス紹介のまえに、まずは5~1位のアンケート結果からチェックしてみましょう。

『おうちでよく使うスパイス』TOP5は個性が光る結果に!

アンケートでは、スーパーで購入できる身近なスパイス20種類から、おうちでよく使うスパイス5種類をmacaroniユーザーに選んでもらいました。堂々の1位はシナモン!伊藤さんはこの結果をどう見るのでしょうか。

「TOP5を見ると、香りが特徴的なスパイスが人気なのかなと感じました。個性的な香りのスパイスは、料理のアクセントになるので意外と使いやすいですし、いい順位だな~としみじみ(笑)。

ホアジャオ(花椒)は、アジア料理の人気からか、使う人が増えたように感じます。クミンパウダーはクミンシードと原料は同じですが、シード同様人気なんですね。シナモンは料理やお菓子、ドリンクにも使えるのでやっぱり1位なんだなという印象です!」

ここからは、5~1位のスパイスについてお聞きします。それぞれ魅力的な特徴がたくさんあり、人気である理由に納得です。

【5位】ホアジャオ(花椒)

中国のミカン科サンショウ属の落葉樹。痺れるような辛さを持つ香辛料として、特に四川料理で親しまれています。

「四川料理に欠かせないホアジャオ(花椒)。唐辛子とはまた違った舌が痺れる辛さが特徴で、やみつきになります。四川風麻婆豆腐や火鍋、台湾まぜそばなど、辛い料理には欠かせないスパイスです。

個人的にはホールで挽きたてを楽しむのがおすすめ。清涼感が出て、風味が豊かになります」

【相性の良いスパイス】スターアニス、ジンジャー、ガーリック

おすすめの使い方

「唐揚げの下味にホアジャオを入れてみてください!ピリッと辛さが効いて、味や風味に奥行きが出ます。醤油、塩ベースどちらでもいいですね。下味をつける際、ホアジャオを適量入れるだけでOKです。

あと、私はよく卵とトマトの炒め物にホアジャオを入れます。辛さと食材の甘みが絶妙にマッチするので、食べる箸が止まらなくなるんです」

【4位】チリパウダー

中南米のミックススパイス。1890年代にアメリカの食品関係者が開発したとされています。

「チリパウダーは、トウガラシの粉末に、オレガノ、ニンニク、クミンなどの香辛料がブレンドされています。辛さのなかに旨味があるのが魅力ですね。

ほんのり辛味を加えたいときや、辛い料理に旨味をプラスしたいときなど、いろいろな場面で活躍します。メーカーによって味が違うので、自分の好きなチリパウダーを探してみるのも楽しいと思いますよ」

【相性の良いスパイス】クミン、オレガノ、トウガラシ

おすすめの使い方

「代表的なのはチリコンカンですが、個人的にはチリマリネにするのがおすすめ。柑橘系の果物やシーフードをチリパウダーとオイルでマリネにすると、さっぱりした食材に辛さと旨味がプラスされます。シンプルですが、これだけで立派な前菜に。

マヨネーズとも相性が良いので、エビマヨにパパッと振りかけると、エキゾチックな味になります。肉にまぶして焼いたり、フライドポテトにかけたりするのもいいですよ」

【3位】クミンパウダー

セリ科の一年草である、クミンシードを粉末にしたもの。もっとも古くから栽培されているスパイスです。

「クミンの香りを嗅ぐと、一番に思い浮かぶのがカレー。カレーには欠かせないスパイスなんです。クミンシードのように香りを油に移すのではなく、食材やほかのスパイスと絡めて使用します。

クミン自体は辛くないので、辛さが苦手な人でも使えますよ。辛さ控えめカレーや、カレー風味の和物などを作るときに活躍します」

【相性の良いスパイス】コリアンダー、ターメリック

おすすめの使い方

「相性の良いコリアンダーとブレンドして、マヨネーズと潰したゆで卵を混ぜ合わせると、いつもとひと味違った異国情緒漂う卵サンドができあがります。

また、焼き菓子に混ぜれば、こちらもエキゾチックな味に変身。元のレシピに少し加えるだけで、全然違う印象になるのが面白いですよね」

【2位】ナツメグ

およそ3,500年前のインドネシアで使われた痕跡が残っている植物、ニクズク属樹木の種子です。料理の臭み消しにも活用されます。

「ナツメグは一家にひとつはありそうなほど人気なスパイスですね。ハンバーグや肉料理の際に、臭み消しとして使われることが多いですが、ナツメグ自体は甘い香りがします。料理に使う際は、少量で十分香りがするので、入れすぎないようにしましょう。

味や刺激はほぼないのですが、そのままだと少し苦味があります。 ただ、加熱すると苦味は消えて、甘味に変化しますよ」

【相性の良いスパイス】シナモン、オールスパイス

おすすめの使い方

「甘い香りのナツメグは、相性の良いシナモンとブレンドしてお菓子を作るのがおすすめ。パウンドケーキ、スコーン、クッキーやコンポートなど、何にでも合います。

乳製品とも相性が良いので、リゾットやグラタンに少量加えると、ふんわり甘い香りが口の中に広がりますよ。あとは、自家製サングリアに入れれば風味が増して深みが出ます。お酒にも合うなんて、本当に万能!」

【1位】シナモン

ニッケイ属の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料で、別名はニッキ。熱帯地域で幅広く栽培されています。

「ついに第1位ですね!シナモンは産地によって種類が異なります。ベトナム・中国で生産されているカシアシナモンと、スリランカ地方で生産されているセイロンシナモンの2種類で、特徴も違いますよ。

市場に多く流通しているのは、カシアシナモン。スッとした甘さで京都のお菓子「八橋」のような香りです。セイロンシナモンのほうが香りが上品で、価格が少し高め。料理にはカシアシナモンを、甘さを際立たせたいお菓子にはセイロンシナモンをと、用途にあわせて使い分けしましょう」

【相性の良いスパイス】ナツメグ

おすすめの使い方

「甘さと鼻に抜けるスパイシーさが魅力のシナモン。アップルシナモンポテトサラダなんていうのはどうでしょう?酸味、甘味、スパイシーさが一体になって、贅沢な味わいが楽しめます。このまま食べるだけでなく、クラッカーにのせてもいいですね。

肉の煮込み料理を作るときは、カシアシナモンがおすすめ。肉の臭みを緩和してくれますよ」

【すべてのスパイス共通】使用・保管上の注意

「スパイスは湿気が弱点。湿気にふれると香りが飛びやすくなります。なので、湯気が立っているところに容器から直接振りかけるのはNG。使用するときは小皿や手にとって使ってくださいね。

また、保管場所は冷暗所がベスト。紫外線にも弱いため、直射日光もNGです。香りは徐々に飛んでいってしまうので、開栓後はなるべく早く使用しましょう」

スパイスの可能性は無限大!ひと振りで料理が大変身

おうちでよく使われているスパイスTOP5は、個性的ながら幅広いジャンルで活躍するものばかりでした。伊藤さん曰く、スパイスならではの香りや旨味を活かせば、塩分に頼らない調理ができ、減塩にもつながるのだそう。

奥深いスパイスの世界を知れば、料理の可能性はぐんと広がります。おうちに使い切れていないスパイスがあれば、いろいろな料理にぜひ活用してみてくださいね。新しい発見があるかもしれませんよ♪

取材・文/猪狩明日奈
撮影/有竹亜季(macaroni ライター)