6月は長雨に負けない「タイム」を植えよう!【ベランダ菜園におすすめの野菜&ハーブ #16】
教えてくれた人
てしま農園代表/龍 慶介さん
自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトに『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者にも植物を育てることの楽しさを伝えたいと、購入者への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注ぐ。
不安定な天候に合わせた対策を
ーー本格的に梅雨入りしている地域もあり、最近は台風の発生が増えてきましたね。
龍 慶介さん(以下、龍) 農家にとっての台風被害は死活問題ですから、嫌な時期ですよ。だけど意外にてしま農園がある山口県は、台風被害自体は少ないんです。雨による水害はありますね。特にうちは海沿いなので、盛土で対策をしていますよ。
ーー確かに海水が入ってきたらアウトですよね……!
龍 そうですね。ただ、不思議なことに被害にあった翌年は海水のミネラルの影響なのか、とてもおいしい野菜ができるんです!塩分糖分を蓄えやすいと言いましょうか、一長一短ですが悪いことだけではないんですよ。
また、最近はお客さんへのアドバイスのために、てしま農園でもプランター栽培を始めて質問にリアルタイムで答えています。
6月におすすめのハーブは「タイム」
ーー6月におすすめのハーブを教えてください!
龍 今月は、タイムを植えましょう!タイムは時期を選ばず、病気にも強いのが特徴です。乾燥を好むので、水が入りすぎないよう工夫さえすれば、どんどん育ってくれますよ。
ーー雨が特に多い梅雨でも大丈夫ですか?
龍 はい!例え冬に完全に枯れてしまっても次の春には復活するくらい、タイムの生命力は強いんです。日が当たる出窓や、のき下でも育てることができるので、ベランダ菜園に躊躇している方もチャレンジしやすいですよ。
タイムを上手に育てるには?
最適な環境と植え付け方法
ーータイムを育てるときの注意点はありますか?
龍 一番気を付けたいのは、気温です。さほど神経質になる必要はありませんが、気温は10度を下回らないほうが良いですね。寒いと、成長が鈍くなります。
ーーおすすめのプランターの形はありますか?
龍 小さなプランターで構いません。言ってしまえば9cmのポットのままでもそれなりに育ちます!でもたくさん増えるので、ボウル型のプランターがベストですかね。
水と肥料のやり方
ーー乾燥を好むとのことですが、水やりの頻度はどれくらいですか?
龍 やはり乾燥気味に育てたほうが良いので、土の表面が完全に乾ききってから水をやってください。
ーー肥料はどうですか?
龍 肥料はそんなに必要ありません。月に1回、固形肥料を1つまみパラっとやるくらいで大丈夫です。
想定されるトラブルと対処法
ーー気を付ける病害虫などは、どうですか?
龍 先ほど、水やりの頻度は少なくて大丈夫と言いましたが、極端に少なすぎるとハダニが発生します。ハダニは水に弱いので、葉っぱ全体に水を与えて落としてしまいましょう。
ーーハダニというくらいですから、ダニの仲間なんでしょうか?
龍 じつはクモの仲間なんです。アブラムシよりかなり小さく、目視で見つけるのはむずかしいのですが、発生してくると葉色が悪くなったり、葉に細かなクモの巣が張ったような感じになったりします。ただ、苗全体に水がかかるように水やりをすれば、すぐにいなくなりますよ。
ーーもし枯れてしまったときはどうしたら良いですか?
龍 枯れたところを部分的に取り除けば、みるみる復活していきます!
タイムの収穫時期と収穫方法は?
ーー今植えると、いつ頃に収穫できますか?
龍 種の場合は、発芽して育つまで1カ月くらいですかね。苗からなら、すぐに収穫できちゃいます。伸びてきた葉は、上部のやわらかい部分からハサミで切って収穫してください。
ちなみにパクチー並みの生命力なので、ワサワサ増えていきます。もう、採り放題ですよ(笑)。
ーータイムは、どのように保存するのが良いですか?
龍 風味はやや落ちますが、乾燥させれば軽く1~2カ月は保存がききます。
タイムをおいしく食べるには?
ーーじつは、タイムそのものの味ってあまり印象がないんです……。どう調理するのがおすすめですか?
龍 確かに、タイム単体だとあまり味がしないですよね。お肉の上にのせたり、魚の生臭さを消してくれたりと、あくまで風味付け。主役というよりは、縁の下の力持ちってところでしょうか。殺菌作用のバランスで、塩との相性がすごく良いんです。なので、ぜひタイムソルトは作ってみてください。
ーータイムソルトならタイムの香りも損なわず、どんなお料理とも相性が良さそうですね!
龍 醤油に漬け込んでもおいしいんですよ。とにかくタイムは万能です!これをきっかけに、タイムの魅力に気付いてくれる方が増えると嬉しいですね。
多湿で伸び悩む6月でもベランダ菜園は楽しめる!
6月は、長雨の影響で土カビや根腐れなどのトラブルに悩まされることも。この時期は水やりを少なめに、乾かすくらいの心づもりで見守りましょう!野菜やハーブは、雨に負けずちゃんと育ってくれます。
タイムを使えば料理のクオリティがグッと上がり、レストランのような仕上がりになりますよ。万能なタイムを育てて料理にフル活用してみてくださいね。
取材・文/鎌上織愛