基本のたけのこご飯レシピ。「分とく山」野粼洋光さんの料理メソッドvol.8

旬ならではの味!春香るたけのこご飯

旬の時期にしか味わえない、生のたけのこを使う炊き込みご飯です。ふわっと立ちのぼるたけのこと木の芽のさわやかな香りに、食欲をそそられますよ。たけのこのフレッシュなしゃっきり感に箸が進みます。生ならではの風味を損なわないアク抜き方法で、“たけのこらしさ”を存分に楽しめる逸品です。

教えてくれる料理人

「分とく山」総料理長 野粼 洋光(のざき ひろみつ)さん

1953年(昭和28年)福島県石川郡古殿町生まれ。武蔵野栄養専門学校卒業後、東京グランドホテルの和食部に入社。5年間の修行を経て八芳園に入る。1980年に東京・西麻布の「とく山」料理長に就任。1989年に南麻布「分とく山」を開店し、現在、グループ店を含む5店舗を総料理長として統括。雑誌、TVなど各種メディアを通して、調理科学、栄養学をふまえた理論的な料理法に基づくわかりやすい和食を提唱。

著書に「常備菜でつくる和のお弁当」(世界文化社)「季節を楽しむ おもてなしの食卓」(KADOKAWA)「日本料理 前菜と組肴」(柴田書店)「じつは知らない和食の常識」(洋泉社)「野粼洋光が考える 美味しい法則」(池田書店)「和食のきほん、完全レシピ」(世界文化社)ほか多数。

材料(4人分)

・たけのこ(小)……1本(150g)
・油揚げ……1枚
・木の芽……適量
・大根おろし汁……100cc(皮ごとすりおろし、しぼり汁を使う)
・水……100cc
・塩……2g
・米……2合
a.水……300cc
a.淡口しょうゆ……30cc
a.酒……30cc
a.塩……小さじ1/2杯

カロリーと糖質・塩分量(1人分)

エネルギー(カロリー):325kcal
糖質:121.3g
食塩相当量:2.9g

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年

調理のポイント

・油揚げを細かく切ると米粒とよくなじむため、たけのこの食感が際立ちます。米と米との間に隙間を作り、べたつきを防ぐ効果も。油揚げを入れることで出汁がいらず、水と調味料だけで味が決まります。

・たけのこは食感を際立たせるため、厚めに切ります。味が浸みにくいことから、通常の炊き込みご飯より少し濃い味付けに。塩を加えることでたけのこの風味が際立ちます。

下ごしらえ(準備時間:15分 ※たけのこをおろし汁に浸す時間はのぞく)

たけのこの皮をむいて切る

たけのこは外側の厚い皮を2~3枚むき、穂先を斜めに切り落とします。縦に、深さ1~2cmほどの切り目を入れ、開いて皮をすべてむいていきます。根元のごつごつした硬い部分は包丁でこそげ取ります。

ここが気になるQ&A

>編集部大河内
「穂先を斜めに切り落とすのは、何か理由があるのでしょうか。」

>野粼さん
「真っすぐ切るよりも斜めに切ったほうが、皮がむきやすいからです。」

>編集部大河内
「なるほど、確かに切り口の断面積が広がることで、むきやすくなるんですね。」

根元から1~2cmほどの硬い部分は切り落として取り除きます。

厚さ1cmほどのひと口大に切ります。穂先のやわらかい皮(姫皮)も使いましょう。

たけのこのアク抜きをする

おろし汁に水・塩を加えて、たけのこを2時間漬け込みます。

ここが気になるQ&A

>編集部大河内
「たけのこのアク抜きに、大根のおろし汁を使いますが、米ぬかや米のとぎ汁を使う手順もよく見かけます。大根のおろし汁をおすすめするポイントを教えてください。」

>野粼さん
「米ぬかや米のとぎ汁で、ただ火にかけただけではアクは抜けません。大根の酵素の働きと塩の浸透圧作用でアクが抜け、その後軽くゆでて使うことで歯ごたえ、香りとフレッシュな味わいが感じられます。」

>編集部大河内
「なるほど。大根の酵素の働き、そして塩もアク抜きに重要な役割を果たしてるんですね。」

アクが強いときは

上記の工程後、以下の手順でアク抜きをしてください。

・水500ccと米ぬか20gを合わせて火にかけ、約50℃にする
・水洗いしたたけのこを加えて10分置き、再び火にかける
・ひと煮立ちしたらそのまま1分間煮る。新しいお湯で洗ってザルにあげ、水気を切る

米ぬかの酵素を動かすためには、約50℃の温度が大切です。そのため50℃の汁に約10分浸すことで、アクがさらに抜けますよ。

油揚げを切る

油揚げはフードプロセッサーにかけ、みじん切りにします。フードプロセッサーがない場合は包丁で細かく切ってもかまいません。

熱湯をまわしかけて油抜きをし、きつく絞って水気を切ります。

作り方(調理時間:40分 ※炊飯する時間はのぞく)

1. 米を洗い水に浸し、ザルにあげる

米を洗って水に15分浸したら、ザルにあげて15分置きます。

2. たけのこを水洗いしてひと煮立ちさせる

たけのこを水洗いして鍋に入れ、水(分量外)を加えて火にかけます。

ひと煮立ちさせたら、ザルにあげて水気を切ります。

3. 早炊きモードで炊飯

炊飯器に米とaの水・調味料を入れてよく混ぜたら、たけのこと油揚げをのせて早炊きモードで炊飯します。

ここが気になるQ&A

>編集部大河内
「鮭の炊き込みご飯を教えていただいた回でも、洗ったお米は浸水と水切りをして、早炊きモードで炊くことを教えていただきましたね。」

>野粼さん
「通常の炊飯には浸水の時間が含まれています。すでに浸水して水切りしたお米なので、浸水時間を短縮する早炊き(高速炊き)モードで炊いてください。」

4. 盛り付ける

炊き上がったら全体をサックリ混ぜて器に盛り、木の芽を添えます。

たけのこご飯で旬の味わいを楽しもう

大根のおろし汁を使うアク抜きや具材の切り方など、たけのこが持つ食感や風味を最大限にいかすためのポイントが詰まった野粼さん流たけのこご飯。新鮮な生のたけのこが手に入ったら、ご紹介したレシピをぜひお試しください。

春の香りいっぱいのたけのこご飯で、旬ならではの味わいを堪能しましょう。

店舗情報

店舗名:分とく山(わけとくやま)
電話番号:03-5789-3838
最寄駅:東京メトロ日比谷線 広尾駅4番出口 徒歩5分
郵便番号:106-0047
住所:東京都港区南麻布5-1-5
市区町村:港区
町域:南麻布5-1-5
営業時間:ランチ:11:30~15:30(L.O. 14:00)ディナー:17:00~23:00(L.O. 21:00)
定休日:日曜、年末年始
サービス料:10%
個室料:10,000円

取材・文/大河内美弥(macaroni編集部)
料理・撮影/とも花