宮本慎也が選ぶ現役最強サード。気になるのは「村上宗隆の起用法」

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 プロ野球の"花形"のポジションとも言われるサード。これまで、多くの球界を代表する選手たちが、投打でファンを湧かせてきた。

 長くヤクルトのショートで活躍し、2008年のシーズン途中からサードにコンバートした宮本慎也氏もそのひとり。ふたつのポジションで合計10回のゴールデングラブ賞を獲得しただけでなく、打撃面では2000本安打を達成した宮本氏が、現在のプロ野球のサードについて語った。


昨年、本塁打王のタイトルを争った巨人の岡本和真(左)とヤクルトの村上宗隆(右)

──宮本さんが現役選手の中で最強のサードを選ぶなら誰になりますか?

「現役選手の中で選ぶなら、巨人の岡本(和真)でしょう」

──岡本選手は昨シーズン、本塁打王と打点王のタイトルを獲得(31本塁打・97打点)するなど球界屈指のバッターですが、守備面はいかがでしょうか。

「少し俊敏性には欠けるものの、強い打球に対して、ボールとの距離の取り方がうまいですね。イージーなミスが少ないです。スローイングに関しては、ちょっと"抜く"ような投げ方が気になるところですが、悪送球もあまりない。

 サードは速い打球が来るため足を止めて捕球することが多く、ファーストまでの距離も長いので、肩の強さが必要とされるポジションです。ショートもファーストから遠いですが、流れの中で捕球からスローイングにつなげるケースが多いですから、単純な肩の強さによらないところがある。その点、岡本の"肩"の安定感は大きなプラスポイントですね」

──その岡本選手に続く「次点」の選手を挙げるとしたら?

「DeNAの宮崎(敏郎)です。まず打撃面では、率も残せて一発もある。逆方向のライトに長打が打てるのも魅力ですね。守備面は、スローイングのモーションが少し大きい印象ですが、肩が強くハンドリングもいいので安心して見ていられます。

 宮崎とは、彼がプロ入りする前に所属していた社会人野球のセガサミーで会ったことがある......ようなんです。大学時代の先輩が監督をされていた時に、1、2日くらい自主トレで顔を出したことがあって、その時のメンバーにいたそうなんですよ。でも、彼がDeNAに入団した際には挨拶をしてくれた時も、申し訳ないですがピンと来ませんでした」

――当時は、そこまで印象に残る選手ではなかった、ということでしょうか。

「まだセカンドを守っていた2年目くらいに、バント処理でファーストにカバーに入った宮粼が、ボールから目を切って投手からの送球を逸らしたことがありましたよね。それを見た時は、『プロで活躍するのは難しいかな』とも思いましたが、ゴールデングラブ賞を獲得するまでに成長した。自分に足りない部分を自覚し、突きつめてとことん努力した結果、球界を代表する選手になれたのでしょう」

──その他の候補としては、2年連続でゴールデングラブ賞に輝いた中日の高橋周平選手、パ・リーグではソフトバンクの松田宣浩選手などになるでしょうか。

「松田は年齢的にも全盛期ではないですし、(高橋)周平は打率こそ高いものの、長打が少ない(2020年シーズンは7本塁打)ですよね。個人的に、サードの選手は守備範囲が限定される分、長打が求められるポジションだと考えています。

 今の中日だと、石川(昂弥)のほうがイメージに近いかもしれません。僕も現役時代は長距離ヒッターではなかったので、サードにコンバートされた際には少なからず葛藤がありました。ヤクルトではそれまで、池山(隆寛)さんや岩村(明憲)などが担っていましたからね」

──過去を遡ると、さまざまなサードの名手が頭に浮かんでくるかと思います。

「やはり僕が少年時代にプレーを見ていた中では、巨人の原(辰徳:現監督)さんの印象が強いです。僕と同じくらいの世代で活躍していた選手だと、中村紀洋(元近鉄など)ですね。打率も高くて長打力があり、守備もうまかった」

──外国人選手ではどうでしょうか。

「パッとは思い浮かびませんね......。打撃力を期待して獲得をするケースが多いですから、守備力の高さまで求めるのはかわいそうな部分もあります。しかし今シーズンは、コロナ禍の影響で来日は遅れていますが、巨人、ヤクルト、ロッテの新外国人選手の中に守備もいい選手がいるようなので、どれだけ活躍できるか楽しみにしています」

──将来的にサードとして期待する選手はいますか?

「ここ2年はファーストでの起用が多いですが、ヤクルトの村上(宗隆)でしょうか。今シーズンは高津(臣吾)監督が外国人選手のサード起用を明言しているので、よりサードでの出番は少なくなるかもしれませんが。1年実戦を離れると育成の点では難しくなるので、サードで鍛えるなら今年が重要なのですが、どういった道を辿ることになるのか注目しています」