ドラえもんだらけの高岡市へ。トラムに乗ってドラえもんの世界に浸る

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「ドラえもん」が誕生して、ちょうど50年目。それが今年(2020年)であるという。

藤子・F・不二雄作品のファンである私、ワクサカソウヘイは、なんだかうずうずとした想いを持て余していた。

この記念すべきタイミングを祝うような、そんな旅がしてみたい。

そうだ、藤子・F・不二雄の出身地、富山県の高岡市はどうだろうか。そこはファンであれば一度は訪れておきたい「聖地」であるし、聞くところによると、ドラえもんの世界に浸れるようなスポットも各所に点在しているという。私はさっそく、JR東京駅から、富山県を目指すことにした。

東京駅

アクロバティックなスネ夫に出会える「ドラえもんの散歩道」

乗車したのは、今年で開業5周年を迎えた北陸新幹線の「はくたか」号である。

東京駅から、わずか2時間50分ほどでJR新高岡駅まで連れて行ってくれる北陸新幹線。かつては「めちゃくちゃ遠い」というイメージのあった北陸だけれども、この北陸新幹線が開通してからは、「どこでもドア」を利用しているようなスピード感でもって、あっという間に東京から富山へと移動することができる。ああ、私たちは21世紀の未来を生きているんだなあ、という感じである。

そして新高岡駅から城端(じょうはな)線に乗り換え約3分、JR高岡駅に到着。さっそく、駅前を散策してみることにする。

すると、駅から3分ほど歩いた場所に、このような景色が広がっていた。

ドラえもんのキャラクターが大集合

ドラえもんの散歩道」と名付けられたこの広場では、12体のキャラクター銅像たちが高岡を訪れた人々を出迎えている。

ドラえもん

のび太

もちろんジャイアンもいます

ご覧いただければわかる通り、ほとんどの銅像がポールの上で「片足立ち」の状態でポーズを決めている。「運動神経の乏しいイメージがあるのび太に、こんな優れたバランス感覚があったのか……」などといった感想を浮かばせつつ、一体ずつ鑑賞していく。

すると、やけに無茶なポーズをとっているキャラクターがいた。こちらである。

アクロバティックすぎないか、スネ夫

なぜ彼だけ、こんな無理のあるポーズで固まっているのか。このままだと、頭に血がのぼってしまうのではないか。そもそもスネ夫って、ここまで曲芸性を求められているキャラクターであっただろうか。

たくさんの疑問と心配とが、胸によぎる。実に味わい深い銅像である。

下から顔を覗き込んだら、とりあえず本人は楽しそうな表情をしていたので、ちょっと安心した。

高岡駅

ワクワク感満載の「ドラえもんトラム」

さて、この場所から何駅か辿った先には「高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」なるスポットが存在している。

そこへと向かうため、高岡駅で路面電車「万葉線」のホームに立つ。すると、そこに現れたのは、なんとも可愛らしい「ドラえもんトラム」であった。

ドラえもんトラム©Fujiko-Pro

運転席にはドラえもんの顔が描かれていて、車両側面の窓にはのび太やジャイアンがいて、そして乗車ドアは「どこでもドア」になっている。四次元ポケットから飛び出てきたような、ワクワク感の溢れるトラムである。

車内にも、ドラえもんの世界が広がっている。天井を見ても、座席を見ても、つり革を見ても、ドラえもん。

「わー! すごーい!」「めっちゃ、かわいいー!」

同じ車両に乗り合わせた観光客のファミリー、その子どもたちが声を上げて喜んでいる。ああ、なんて平和な景色であろう。私も一緒になって「ひぇー! マジでかわいいー!」などと叫んでみたかったが、車内に緊張感を走らせるだけになるので自粛した。

片原町電停

古民家を改装したお店「あんしんごはん」

と、ここで少し腹が減っている自分に気がついた。そういえば朝からなにも食べていない。高岡駅から約5分、「ドラえもんトラム」を片原町電停で途中下車し、昼食をとることにする。

目指した先は、電停から徒歩約5分、古民家を改装した総菜レストラン「あんしんごはん」だ。

なんとなく、店名がドラえもんのひみつ道具っぽい語感である。大山のぶ代の声で「あんしんごはん〜!」と脳内再生しながら、店内へと足を進める。

こちらのお店では、地元でとれた無農薬の野菜などをふんだんに使った総菜が量り売りされている。買ったものはテイクアウトすることもできるし、奥の座敷でゆっくりと味わうこともできる。

多彩な総菜を前にテンションが上がり、次から次へと器に盛りつけていく。気づけば「一汁四菜(しかもプリン付き)」という、少々オーバーな昼食となってしまった。どの総菜も、芯までしっかり味が染みていて、とても美味しかった。

志貴野中学校前電停

高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー

さて、いよいよ、この旅のメインの目的地ともいえる「高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」を訪れよう。

再び万葉線に乗り約8分、志貴野中学校前電停で下車。そこから10分ほど歩いていくと、それらしき建物が現れる。

「高岡市美術館」の2階にあるのが「高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」である。

「どこでもドア」になっているギャラリーの入り口、そこをくぐると、藤子・F・不二雄がまんが家として残した軌跡の数々が展示されているコンパクトな空間が広がる。

彼が10代の頃に手作りしていたまんが雑誌『妖怪島』や、デビュー作の4コマまんが『天使の玉ちゃん』、そして愛用していた仕事道具など、藤子・F・不二雄の活動にまつわるさまざまな資料が展示されていて、実に興味深い。

真ん中に土管が置かれている部屋は企画展示室で、その時期ごとの企画展が行われている。

藤本弘(藤子・F・不二雄)と安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ)は、共同ペンネームとして有名な「藤子不二雄」の前に、「足塚不二雄」を使用していた。その足塚から藤子に変更する際に書いたと思われるアイデアメモも展示されている。その試行錯誤の跡が面白くて、しばらく見入ってしまった。

いやはや、満足である。藤子・F・不二雄の世界を存分に堪能することができた。

高岡の伝統産業「高岡銅器」によって作られたドラえもん像に別れを告げて、ギャラリーを後にする。

こうしてドラえもんづくしの1日目が終わり、私は高岡駅近くの「ホテルニューオータニ高岡」で、ぐっすりと眠りについた。

高岡駅

「ドラえもんポスト」に自分へのハガキを投函する

2日目。ホテルをチェックアウトしたのち、すみやかに万葉線の高岡駅に隣接する待合室へと足を向けた。

そこには「ドラえもんポスト」なるものがあるのだ。

ここからハガキを送ると、ドラえもんの消印を押してもらえるらしい。それを聞いて、試さない手はない。今朝、ホテルの部屋で自分宛に書いたハガキを、ポストへと投函する。

旅先から自宅の住所にハガキを送るのって、なんだか「SF(すこし不思議)」な気分である。

高岡おとぎの森公園

「あの空き地」と出会う

さて、そろそろ帰京の時間である。しかし、最後にどうしても立ち寄っておきたい場所があった。

城端線で再び新高岡駅まで戻り、そこからひたすらに歩くこと約15分。広大な緑の芝生が広がる「高岡おとぎの森公園」へと足を踏み入れる。

いったい、この場所になにがあるのか。さっぱりとした秋空の下、目的のスポットを探し求める。

おお。
突如として、それは目の前に現れた。

「ドラえもんの空き地」である。
あのおなじみの「空き地」の景色がそこでは再現されていて、キャラクターたちがこちらに向かって手を振っている。

ドラえもんを求めて高岡に来たからには、このスポットを拝まないわけにはいかない。

公園の中に「空き地」を作っているというのも、よく考えたら不条理な話ではあるが、まあそこは目をつぶりたい。

園内には「ドラえもんの日時計」もあります

新高岡駅

最後はどら焼きで

高岡市は、本当にドラえもんだらけの場所であった。

聖地の巡礼を終え、私は新高岡駅ナカの「おみやげ処高岡」に立ち寄った。いったい、なにをお土産で購入して帰ろうか。

答えは決まっている。「どら焼き」しかない。中尾清月堂の「どら焼き 清月」だ。

東京の家に帰り着き、2日後。

郵便受けに、ドラえもんポストから投函した自分宛のハガキが届いていた。そこにはしっかりと、ドラえもんの消印が押されていた。

その消印を眺めつつ、そしてお土産に購入したどら焼きを食べつつ、私は楽しかった1泊2日旅のあれこれを、しみじみと振り返った。

東京駅

掲載情報は2020年11月13日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。