「ぺこぱ」のシュウペイ(左)と松陰寺太勇(@pekopa.shupeiより)

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「それも悪くないだろう」

【写真】過激コスも! みちょぱ、ゆきぽよ、ニコル、生き残るギャルタレは?

 お笑いコンビ「ぺこぱ」が大人気だ。松陰寺太勇とシュウペイが織りなす“否定しないツッコミ”が、“誰も傷つけないお笑い”として受け入れられている。

「いわゆる“お笑い第7世代”に数えられる2人は、昨年の『M-1グランプリ』で3位になり堂々のブレイク。

 彼らのポジティブな“名言”が書かれた日めくりカレンダー『毎日ぺこぱ』は5万部を越す大ヒットに。コロナで何かと我慢が続いた日だけに、勇気づけられる人も多かったのでしょう」(広告代理店関係者)

 また、テレビに欠かせない存在になっているのが、ギャルタレントとしてブレイクした「みちょぱ」こと池田美優に「ゆきぽよ」こと木村有希。一見、視聴者受けが限定的になりそうな2人だが、バラエティー番組のみならず情報番組でも幅広く活躍する。

「これまでのギャルタレといえば“おバカ”なキャラクターを期待されて番組に呼ばれがちでしたが、彼女たちは政治でも、コロナ関連でもしっかりと自分の意見を言うことができる。マスコットのような愛称とのギャップで好感度が高く、制作サイドからも重宝されています」(前出・広告代理店関係者)

 ブレイク真っ只中にあるお笑い芸人とギャル。彼らに共通するのは名前に「パ行」、半濁音が含まれていることだ。

JK流行語は「ぴえん」「べびたっぴ」

「確かに名前や芸名に“パ行”を、特に平仮名表記でつける人はあまり見ません。最近で思いつくのは“きゃりーぱみゅぱみゅ”くらいですか。名前ではありませんが、2019年の女子中高生の流行語が“ぴえん”や“べびたっぴ”でした。SNS上では今もこの言葉があふれています」(前出・広告代理店関係者)

 なるほど、気がつけば多くの“ぱぴぷぺぽ”を目にしているようだ。ではナゼ「半濁音ネーム」が今、人々に“刺さっている”のか。

「そもそも、現代人が普通に話している“はひふへほ”、実はこれら、古代の日本ではすべて“ぱぴぷぺぽ”と発音していたのです」

 そう教えてくれたのは、言葉を研究する、大東文化大学文学部教授の山口謠司先生。なんと、私たち日本人が“はひふへほ”と発音できるようになったのは江戸時代からなのだとか。

「日本最古の歴史書とされる『古事記』などが書かれた西暦700年くらいにはすでに“ぱぴぷぺぽ”と発音していて、『源氏物語』あたりのちょうど西暦1000年くらいには、“ふぁふぃふゅふぇふぉ”と発音するようになりました。江戸時代になってようやく、現在の“はひふへほ”の発音に変化していったのです」(山口先生、以下同)

 そして現代に残ったのがパ行とハ行というわけ。つまりは“半濁音”は、日本人にとって古来より馴染みのある言葉なのだ。

「奈良時代には、お母さんのことを“はは”ではなく“ぱぱ”と言っていたんですね。日本の読み方に“にほん”と“にっぽん”と2つの読みがあるのも、その名残りというわけです。また“ぱぴぷぺぽ”は語感の面から言うと、少し赤ちゃんぽいかわいらしい印象を受けると思います」

 確かに、何かとかわいらしく見せたい女子中高生。「ぴえん」や「べびたっぴ」が流行ったのは必然か。きゃりーもまた、「はみゅはみゅ」よりかわいいのは「ぱみゅぱみゅ」だろう。

「“ふくふく”よりも“ぷくぷく”のほうが、パンパンと張ったかわいらしい赤ちゃんのイメージが膨らむと思います。また、赤ちゃん言葉であると同時に、“パーンパーン”や“ピューンピューン”と聞くと、子どもが生き生きと元気よく跳ねているような躍動感を感じませんか? 」

「バカ」「ブス」濁音は悪口が多い

 半濁音の語感には、子どもに好かれる、ウケるという効果もありそうだ。

「“ピカチュウ”や“ポケモン”は子どもに受け入れられる名前をつけていますよね。実際、“ばびぶべぼ”のような濁音から始まる言葉は、“ゴミ”“ブタ”“バカ”“ブス”など悪口のような汚い言葉が多く、日本人が嫌う傾向にあるのです。

 “かいじゅう”や“ゴジラ”は強そう、怖そうな感じがしますが、かたや“ピカチュウ”は子どもっぽい生き生きしたかわいらしい言葉に聞こえます。“ぱ”と“ば”で同じハ行の言葉なんですけども、与える印象は全く違いますね」

『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』が世界的に大ヒットした「ピコ太郎」も一見、強面(こわもて)と金ピカ衣装で敬遠されそうなキャラだが、これも半濁音のおかげか、不思議と子どもにやさしそうなおじさんに見えてくる。

 また、子どもからの人気が衰えない、小島よしおのギャグ「おっぱっぴー」もまた覚えやすく口にしやすいのかもしれない。

「ギャルタレントの“みちょぱ”さんや“ゆきぽよ”さんも、半濁音が入った名前でピチピチとした若さと元気さ、親しみやすさが伺えます。同じく“ぺこぱ”も、これが“へこは”や“べごば”では人気が出なそうですね。意外と、彼らピコ太郎さんもそうですが、しっかり考えて名前をつけているのかもしれませんね」

時代が求める「半濁音ネーム」

 そして新型コロナウイルスの流行という国難を迎えており、またSNS上での誹謗中傷が問題になっている今だからこそ、世間は「半濁音ネーム」を求めていると山口先生は話す。

「気持ちが落ち込んでいる時は、たくさんの“ぱぴぷぺぽ”を使うと元気になりますし、心が跳ねるような楽しさをもたらしてくれます。今は時代が必要としているのでしょう。“パーン”と跳ね上がるような、躍動感のある言葉をどんどん使っていくと良いのではないでしょうか」

 元気な日本に向かって「時を進めよう」。