『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』井上芳雄インタビュー|ファンを想い磨き続ける“個性”、「悪役って面白い」敵<ヴィラン>視点の見どころ告白
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』
井上芳雄インタビュー
2014年に「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で連載が開始され、コミックス累計発行部数2500万部を突破した「ヒロアカ」こと、「僕のヒーローアカデミア」。2016年からTVアニメが放送され、昨年公開された初の劇場版も興行収入17.2億円の大ヒットを記録。そんな「ヒロアカ」ファン待望の劇場版最新作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』が、12月20日(金)より全国公開される。
圧倒的な強さを誇る、シリーズ史上最凶の敵(ヴィラン)ナインの声を担当した“ミュージカル界のプリンス”井上芳雄に、「普段と勝手が違う」という声優の仕事の舞台裏や、敵(ヴィラン)の視点で考える本作の見どころ、いまの自分に“足りない個性”の磨き方について語ってもらった(取材・文:渡邊玲子/撮影:ナカムラヨシノーブ)。
──声優オファーを受けるにあたっては、お子さんからの強い後押しもあったとか。
井上:いま上の子が中2なんですけど、まさに思春期真っ只中で(笑)。息子が「ヒロアカ」の単行本を持っているのは知っていたので、「今度こういう仕事の話が来たんだけど……」と相談したら、「絶対にやって欲しい!」と言われたんです。舞台では悪役をやらせていただく機会がほとんどないこともあって、「面白い提案だなぁ」と思ったのもありますね。
──本作には、主人公のデクや爆豪、お茶子、轟をはじめ、一人前のヒーローを目指して成長していく雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちが全員集結しています。個性豊かなキャラクターの中でも、特に井上さんが気になったのは……?
井上:お恥ずかしながら、僕は今回「ヒロアカ」の世界に初めて触れたこともあって、キャラクターが沢山いて最初は誰が誰だかよくわからなかった、というのが正直なところです(笑)。でも、あえて挙げるとするなら「もぎもぎ」を“個性”に持つ峰田実ですかね?彼は路線がみんなと違っていて面白い!ディズニーのキャラクターみたいな可愛らしい顔をしてるのに、ものすごく女性好きで(笑)。彼のことは気になりますね。
──アニメの声優は、役者の仕事とどんな違いがありますか?
井上:声だけでお芝居するのは、舞台やドラマで演じるのとは全然違う技術だと思うんですよね。声優さんたちは専門職で、皆さんプロでいらっしゃるので、僕みたいな者が入っても同じにはできっこない。だから「いつも舞台をやっている僕にできることがあるならば……」という感じなんです。
──具体的にはどんなところが難しいですか?
井上:やっぱり普段とは勝手が全然違うっていうのはありますよね。声を吹き込むときも、映像が全部完成しているわけではなくて、ちゃんと絵があるところもあれば、まだ線みたいなところも沢山あったりするんです。特に戦闘シーンなんて頭の中では「これ、一体どうなってるんだろう?」と思いながらも、「いま、ナインは攻撃を受けています!」と監督から言われるがままに「ウ〜」って声を出したりする感じでしたから(笑)。
──井上さんが演じた“ナイン”はどんなキャラクターですか?
井上:自分でやっておきながら「どうやったらこんな強いキャラに勝てるんだろう?」と思ってしまうくらい、ナインは強いです(笑)。彼には「どんなことをしてでも、自分たちが思い描いた通りの理想の世界を絶対に作ろう!」というはっきりした目的があって、その名の通り使える個性が沢山あるのが、最凶と言われる所以なんです。ナインはもともと口数が少ない上に、マスクをしていることもあって、普段はボソボソと喋る感じなんですが、いざ戦う場面になるとテンションがMAXになって、ものすごい怒りを爆発させる。彼のエネルギーや思いが強い分、平常時との落差が激しいんです。
──具体的には、どんな風に役作りをされたんですか?
井上:もちろん事前に台本は読ませていただいたんですが、現場に入ってから「ここはもっと自信たっぷりに!」とか「ここは抑揚をつけずに!」みたいな感じで、監督に演出していただきながら一緒に作り上げていきました。悪役だけに、普段の話し方もすごく意味ありげだったり、怪しげだったりするんです。そういった意味では、これまであまり経験したことがないことばかりでしたね。
──他のキャストの皆さんとは一緒に収録されたのでしょうか?
井上:いや、僕以外誰もいなかったんです。以前「ソードアート・オンライン」という作品で声優をやらせていただいたときは、皆さん一緒に揃って声を吹き込んでいくスタイルだったのですが、今回は僕一人だけだったので、「はい、このタイミングで!」という感じで声を吹き込んでいきました。
──どちらのスタイルの方が難しいですか?
井上:掛け合いの方が断然難しいです。秒刻みのタイミングで入っていって自分のセリフを言うのは、本当にすごい技術だなと思いますね。
──完成した作品は、もうご覧になりましたか?
井上:先日試写で観させていただいて、自分の声で演じたシーンも含め「あぁ、こういうことだったのか!」と、ようやく全体像が掴めました(笑)。なかでも戦闘シーンの描き方が本当に素晴らしくて。どんな仕組みになっているのかまではまったく分からないんですが、「日本のアニメはこんなにすごいバトルシーンが描けるところまで来ているのか!!」と、この作品を観て改めて思い知らされました。それはもう、「このままだと地球が壊れちゃうんじゃないか?」っていうくらいの、とんでもない激しさです(笑)。
──今田美桜さんが声を演じるスライス役も、すごくカッコよかったです!
井上:今田さんご本人はすごく可愛らしい方で、スライス自身も魅力的なキャラクターなんですが、戦うときはめちゃくちゃ強いんです。長い髪の毛がいきなり刃物みたいな武器に変わるので、「どんな戦い方なんだよ!」って感じではあるんですが(笑)。でも、敵(ヴィラン)チームの皆もナインのことを気遣って、それぞれ一生懸命戦ってくれていたんだなって、完成した映画を観て知りました。
──改めて史上最凶の敵(ヴィラン)を演じた感想は?
井上:やっぱり、演じる上では悪役の方が面白いですよね。「一体、彼の過去には何があったのか」と、いろいろ想像する楽しみもあったりして。ナインが他の敵(ヴィラン)を仲間に誘うときに「お前を化け物呼ばわりする奴らを見返してやる!」「一緒に倒そう!」と声を掛ける場面があるんです。敵(ヴィラン)チームは、ある種のマイノリティーというか、自分ではどうすることもできない、持って生まれた“個性”のせいで虐げられてきた者同士の集まりだと思うんですよね。「いまはこんな境遇だけど、いつか世の中の価値観を全部ひっくり返してやるんだ!」という彼らの思いには、きっと共感できる部分もあるんじゃないかな。ヒーローになるか悪役になるかの違いって、実は紙一重のようなところもあって「思いの強さ」という意味では、きっとどのキャラクターもそれほど変わらない。敵(ヴィラン)チームは敵(ヴィラン)なりに、命がけで戦っているんですよね。
──誰もが「自らの中にある正義」のために必死に戦っているというわけですね。
井上:そう。敵(ヴィラン)たちも実際には余裕があるわけでもなくて、決して完全なわけではないんです。史上最凶のナインですら、意外とすぐに咳き込んだり、倒れたりしがちなんですよ(笑)。ナインは、完璧になるために「あるモノ」を探しているので、その分余計に思いが強くなっている。なにせ一般人や子ども相手にもまったく容赦がないですから、我ながら「本当に酷くて恐ろしいヤツだなぁ」と思います(笑)。
──「足りない個性をどうやって手に入れるか」というのが、今回の作品のテーマなんですよね。
井上:現実世界においては、完璧を求めること自体が不可能なわけだけど、でもだからこそ「それを求めずにはいられない」というナインの気持ちもわかるんです。ある意味、とても人間的な弱さであるとも言えるし、僕自身、自分に足りないものに憧れてしまうところがあったりもするので……。
──完璧そうに見える井上さんにも“足りないもの”がある?
井上:もちろんありますよ。ミュージカルで必要なものはもっともっと欲しいですし、声優の仕事をするときは、自分もタイミングよく入れるようになりたいと思う。バラエティ番組に出るときは「もっとうまくしゃべれるようになりたい!」と、欲が出てしまう方なので(笑)。普段どちらかというと僕はツッコミの方が得意なつもりでいるんですが、さらに絶妙なタイミングでボケられたりしたら、「いまよりもっと使い勝手がいいタレントになれるのに……!」と思ったり(笑)。そういう意味では僕もナインと一緒ですごく貪欲なので、出来ないことにぶち当たるたびにすぐに悩んだり落ち込んだりしてしまいますが、それと同時に「じゃあ、どうすれば出来るようになるのか?」という解決策も必死で考えるようにはしています。
──井上さんが思う、ボケのセンスを磨く方法とは?
井上:もちろん技術も必要だと思うけど、なにより一番大事なのは「スベるのを恐れない勇気」なのかもしれないですね(笑)。あとはちゃんとツッコミ担当の人がいるところじゃないと、いくらボケても意味がない(笑)。はっきり「ボケてるんだぞ!」って分かるように相手に伝えないと、しっかりツッコんでもらえないですからね。そんなことを、僕は日夜考えたりしてるんです(笑)。
──“絶妙な毒舌キャラ”としても知られる井上さんですが、毒舌の秘訣はありますか?
井上:それこそ毒を吐くにも結構技術がいるんですよ(笑)。守りに入りすぎても全然毒にならないし、まさに怒られるか怒られないかのギリギリのところを攻めていく感じですね。ギリギリまでやらないと人はなかなか喜んでくれない。ですが度を超すと相手に怒られますからね(笑)。もちろん傷つけたいわけではないから「怒らせちゃったかな……?」と思ったら、「すみません!!さっきは失礼なこと言っちゃって」とひたすら謝ります。最後は人柄で許してもらう感じです(笑)。
──多少リスクを冒してでも、井上さんが“攻め続ける”理由とは?
井上:僕はただ普通にしているだけだと、面白みがない人間だから(笑)。そういう意味では、根っからのサービス精神とも言えるのかもしれないけど、応援してくださるファンの方々や人前で何かをするときは「楽しかったね」「あの人やっぱり素敵だね」と思って帰って欲しいんです。だから結局は自分なりに得意だと思うことを精一杯頑張って、「皆さんに喜んでもらいたい!」という気持ちが強いんじゃないかな?
──では最後に、本作の魅力を改めてお願いします!
井上:僕は今回初めて「ヒロアカ」の世界を知りましたが、原作でも十分すぎるほど面白い作品がこれだけスケールの大きなアニメ映画になって、皆さんに観てもらえるということにワクワクしています。どこか現実世界に置き換えながら観ることもできるような、ものすごく奥が深い作品に仕上がっているので、「ヒロアカ」ファンはもちろん、原作コミックやアニメを知らない人でも絶対楽しめるはず!僕が演じている“ナイン”は悪いヤツですが、「一生懸命生きている過程を描いている」という意味では、ヒーローもヴィランも同じ。ぜひヴィランチームのチームワークにも注目しつつ、ハラハラドキドキしながら映画館で楽しんでいただけたらいいなと思います。
──楽しいお話をありがとうございました!
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— 映画ランド (@eigaland) 2019年12月19日
映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』は12月20日(金)全国東宝系にて公開
(C)2019「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (C)堀越耕平/集英社
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