Surface NeoとSurface Duoで何をするのか? Microsoftが仕掛けるユーザーへの問いかけと挑戦

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●2画面端末「Surface Neo」&「Surface Duo」の新たな提案
Microsoftは10月2日(現地時間)、新たなモバイル端末となる「Surface Neo」および「Surface Duo」を発表しました。

Surface NeoはOSにWindows 10Xを採用した、約9インチ液晶ディスプレイを2つ搭載するタブレットタイプの端末です。
Surface DuoはOSにAndroidを採用した、約5.6インチ液晶ディスプレイを2つ搭載するスマートフォンタイプの端末です。
いずれも2020年末の発売を予定しており、発売まではかなり時間がありますが、すでに実機も公開されています。


スッキリとしたシンプルなデザインは現行のSurfaceシリーズを引き継いでいる



●フォルダブルスマホとは設計思想が違う!
2画面(2つ折り)タイプのモバイル端末は、現在、モバイル業界のブームの1つでもあります。
auからはサムスン電子製の1つの画面を折りたたんで使える「フォルダブル」タイプのスマートフォン「Galaxy Fold」が10月25日に発売されました。

2つ折りタイプのモバイル端末には、
・大画面をコンパクトに持ち運べる
・多くの情報を表示できる
・スマートフォンとタブレットの2つを持ち歩く手間が不要になる
これらのメリットがあります。

しかし一方で、
・端末が重くなる
・2つ折り状態で厚みがでる
・構造や素材面でコストが増え、価格が上昇する
こういったデメリットも生まれるため、従来のスマートフォンとは若干異なった用途や使い方が求められるようになります。


革新的な端末となったGalaxy Foldだが、その構造と素材から価格は24万円超になってしまった


Surface NeoやSurface Duoでは、1つの画面を折りたたむフォルダブルタイプではなく、2画面をヒンジで繋げた構造としたことで、
・素材コストと設計コストを下げる(価格上昇を抑える)
・構造を単純化することで薄型化と耐久性を両立
このようなメリットを持たせたものと思われます。

また、フォルダブルスマホでは画面を一方向にしか曲げられません(反対方向へ曲げようとすると、本体の厚みから画面が引っ張られてしまう)。
しかし2画面をヒンジで繋ぐ方式であれば、360度回転させることも可能になります。
Surface Neo/Surface Duoでは、このメリットを最大限に活かし、1画面での利用と2画面での利用の利便性を単純な構造で実現したのです。


ヒンジが360度開くからこそ、このように立て掛けて両側に映像を表示し対面視聴する、といった使い方も提案できる



内向きに開けば、電子書籍を読むのに適したスタイルへ)


実は、こういった360度ヒンジを持つモバイル端末はSurfaceシリーズが初めてではありません。
いわゆる「2 in 1」と呼ばれるノートPCでは一般的なヒンジ構造でもあり、
Surface Neo/Surface Duoは、その2 in 1ノートPCのキーボード部分をディスプレイにしてしまったような構造と言えます。

例えばレノボ ジャパンの「Yoga Book」シリーズなどは、キーボード部分を全面タッチパネルとし、ディスプレイと巨大なタッチパッドを合体させたようなデザインです。
Surface Neo/Surface Duoは、このタッチパッド部分も全てタッチパネル式のディスプレイにしてしまったわけです。


Yoga Bookはキーボードよりもペンタブレットを多用したいイラストレーターやクリエイターに評価が高い



●ヒットへのカギは「提案とコンテンツ」
Surface Neo/Surface Duoは、2画面というデザインやスタイルだけに注目が集まりますが、実は重要な部分はそこではありません。

ユーザーにとって最も重要なのは、「2画面で何ができるのか」という点です。

・折りたたんで1画面のスマートフォンやタブレットに
・広げて巨大な1画面や複数の作業を同時に行えるマルチディスプレイ環境に
・文庫本のように開いて電子書籍端末に
・一方の画面にキーボードやタッチパッドを表示させてノートPC風に
・立て掛けて両側から映像を見られるマルチメディア端末に
Surface Neo/Surface Duoの画像を見ただけでも、これだけの用途を想定できます。

しかし、それらを実際に使うにはコンテンツが必要です。
2画面に最適化されたUIやアプリがあってこそ、ユーザーにとっての新しい使い方や楽しみ方が実現します。


ゲームパッド(ゲーム用UI)を表示させれば携帯ゲーム機にもなる


「2画面」というコンセプトや360度ヒンジなどは、既に多くの製品が登場しています。
今となっては。2画面というだけでは先進性を感じることはできません。

Surface Neo/Surface Duoが注目される理由は、そこではないのです。

タブレットサイズのSurface Neoは、
Microsoftが長年培ってきたWindowsシリーズの最新OSを採用し、タブレットサイズでパソコンアプリケーションとサービスを活用するという、新たな提案を感じさせます。

スマートフォンサイズのSurface Duoは、
ユーザーが日常で使い慣れているAndroid OSを採用することで、現在のモバイルシーンの延長線上にある、進化したコンテンツの楽しみ方やアプリの可能性を描こうとしています。

サイズ以外は非常に似通ったデザインの2機種ですが、そのコンセプトやユーザーターゲットは明らかに違います。

Microsoftが発売まで1年以上という期間があるにも関わらず発表したことは、
この1年で、「コンテンツやアプリ、サービスを用意する」という覚悟と意思の現れでもあります。
そして、Microsoftからユーザーに向けた
「Surface Neo/Surface Duoをどう使いたいか、じっくり教えて欲しい」
という問いかけであり、試されているようにも感じられます。

あなたなら、Surface Neo/Surface Duoをどう使いたいですか?


執筆 秋吉 健