さらに「またポジション争いをして、絶対に勝ってやろうという気持ちでいたので、試合に出られないから移籍したということでは正直ないです」とも語っている。世代交代を急速に進めるチーム、そのなかでの自らの立ち位置、一方で、7年半苦楽を共にしてきたチームメイトたちへの想い。すべてを呑み込み、移籍を選んだと推測する。
 
 今回の流出劇の主な理由は、急激な世代交代のひずみだ。開幕当初、J3が主戦場だったFW食野亮太郎やMF福田湧矢、高江麗央、DF高尾瑠が成長を遂げ、トップチームに定着。その結果、ベテラン選手が押し出された。この事実は、世代交代を進めたいクラブにとって悪いことではない。FW宇佐美貴史が復帰、川崎フロンターレからMF鈴木雄斗を獲得し、さらにMF井手口陽介の復帰も狙うなど、補強も進めている。しかしそんな状況が、長くチームを支えるベテラン選手にとって、どこか居心地の悪い空気になっていたように見えた。
 2015年を最後にタイトルから遠ざかっているクラブが、ふたたびJ1で優勝を争うクラブになるために、必要な痛みがあることは理解する。
 
 ただ個人的な意見としては、クラブや宮本恒靖監督は、もっと選手たちと対話を増やしていくことで、その痛みを少しでも和らげることはできるのではないか、と感じる。いくら対話しても、出場機会を失った選手の場合はいい顔をしないかもしれないし、納得もしないだろう。それでも、真のこもった一言で、胸のつかえが軽くなることはある。
 
 プロの世界である以上、いくら過去に貢献した選手でも、かならず別れるときは訪れる。それでも功労者が涙を浮かべて去るようなことは、今後ガンバ大阪がより強く、愛されるクラブになっていくためには、もう避けなければならないはずだ。
 
文●金川 誉(スポーツ報知)