ビニールラッピングされた新聞を手にするASA自由が丘の佐々木所長

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筆者は約20年、新聞社に勤めてきた。今でも朝起きると、朝刊に目を通すことが日課となっている。当たり前だが、新聞は紙のため、雨や雪の日には紙面が濡れないよう、ビニールに包まれた「雨用ビニールラッピング(通称『雨ビ』)」に入ってくる。

ところが最近、晴天の日でも、新聞がビニールに包まれていることがある。はて? 何で?? ということで、朝日新聞販売所「ASA自由が丘」(東京都目黒区)の佐々木敏和所長に聞いた。

理由は「花粉症対策」

この時期、多くの人が悩まされる「花粉症」。2019年4月10日に話を聞いた佐々木所長も、その1人だった。一方、新聞は、外から家へと運ばれてくる。当然、この時期は、新聞には花粉が載ってくることも想定される。そこで、佐々木所長は考えたそうだ。

「このサービスを始めたのは、2008年頃ですかね。私も妻も花粉症で...。そこで、お客さまの中にも、そういう方がいらっしゃると思い、『花粉症の方には新聞をビニールに入れてお届けします』というような内容の折り込みチラシを入れてみました。すると、意外にも問い合わせがあり、約10年、サービスを継続しています」

と説明した。

同サービスは、花粉が舞う毎年2〜5月にかけて行っており、あくまで「希望がある方のみ」とのこと。しかし、全国の新聞販売店一律で行っているものではないそうで、ASA自由が丘をはじめ、東京都内でも数店しか行っていないという。

コンクリートとアスファルトのジャングルである都内は、土の多い地方に比べ、特に花粉が舞いやすいという。いわゆる「逆転の発想」で思いついたサービスだった。

配達員の秘密道具「順路帳」には...

一方、新聞配達員は、各区域担当者1人当たり300〜400軒に新聞を届ける。雨や雪の日なら、すべての新聞を「雨ビ」でラッピングするから問題ない。しかし、晴れの日は...となると、すべての新聞をラッピングするには経費がかさんでしまう...。では一体、「花粉症の家」「そうでない家」を、どうやって配り分けているのか?

ここで重要なのが「順路帳」と呼ばれる秘密道具だ。順路帳とは、一般的に横長の手帳のようなものが主流で、新聞配達員にしか分からない独自の「暗号」で記されている。佐々木所長によると、

「私たちの店では、花粉症のお客さまには『花粉マーク』を記すようにしています。これを順路帳に書き込んで、このお宅は『花粉症』、隣のお宅は『OK』というような形で、日々の新聞をお届けいたしております」

いやはや...。そこまでの手間をかけ、読者サービスに徹するとは「アッパレ!」である。

(J-CASTニュース編集部 山田大介)