香川真司(ベジクタシュ)のトルコでの2戦目は、ホームでのブルサスポル戦だった。2-0とリードした67分から2列目の中央でプレー。無得点でシュートも0本に終わった。

 デビュー戦となったアンタルヤスポル戦での3分間で2得点という衝撃と比べれば少々肩透かしかもしれないが、それでもホームのサポーターは、試合前、ハーフタイム、ウォーミングアップ中、そして試合後と、熱狂的に香川を迎えた。スタジアムは大げさではなく”香川フィーバー”に浮かれていた。


ブルサポル戦でホームデビューを飾った香川真司(ベジクタシュ)

 23分間の香川のプレーについていえば、まず、ドイツほどのタイトなディフェンスもないため、比較的自由にボールを持つことができていたのが印象的だ。相手のボランチがマンマーク気味についていたため、決定的シーンは作り出せなかったが、ボールを持って相手をかわすなど、余裕を持ってプレーできている。

 香川は手応えと課題についてこう話す。

「ドイツとは違うリーグというのは明らかで、サッカーの仕方、クオリティを含めて、違ったものがあるのかな、と。よりスペースがあると感じますし、個人の強さは非常に感じるけれど、組織的かと言ったら組織的ではないので、ポジショニングの細かいところのズレだったりを非常に感じます。

 攻撃を見ていると、前半から非常にスペースを与えてくれると感じました。なので、うまく連係できたら、もっとスムーズに点がとれるかなと感じます」

 ピッチに立つと、味方との小さなズレを感じるが、そこを修正できればもっと向上できる可能性を感じているという。周囲からは自身へのリスペクトも感じるが、感覚を共有し、理解し合える仲間はまだ探しているところだ。合流からまだ日も浅く、そのあたりはいたし方のないところだろう。

 一方、チームから求められているものについては、明確に理解している。

「それはやっぱり得点。どれだけチャンスを作れるか。そこに大きなものを求められている。仲間と、まだまだポジショニングのズレや(ボールが)ほしいタイミングのズレがあるので、練習のなかでも、次の1週間に向けて修正しないといけない」

 何度か繰り返した「ズレの解消」というのが具体的なテーマになってくるのだろう。

 ベジクタシュサポーターに熱狂的に迎えられ、それを現地メディアも盛り上げる。インスタンブールに来てからのそんな1週間をこう振り返った。

「ありがたいですし、これだけの歓迎を受けることは当たり前ではないので。それを自分自身のいいプレッシャーに変えたい。彼らは優しさを与えてくれるけど、それに甘えちゃいけない。これを結果に変えられるか。

 メディアは盛り上がっているけど、自分自身は冷静にやりたいと思っています。あまり周りを気にせずに、自分自身がどういう状況なのかというのを常に把握しながら、1週間トレーニングしていく必要があるし、1試合、1試合が非常に重要になっていくと思います」

「フレッシュですし、新しい環境、新しいチームメイト、そういうものを楽しんでいる最中なので、いろいろなことにトライしていきたい。どうやってこのチームを助けるのか、それがこの半年間の自分のチャレンジだと思う。そこをつきつめてやりたい」

 この半年間、極端に試合出場が少なかったことを考えると、まずは90分間の出場をコンスタントに重ねることが必要になる。ただ、香川がフォーカスすべきは、目の前の1試合であると同時に、再び移籍が可能となる半年後でもある。

「着いた日から、サポーターたちからのリスペクトを感じます。過去にもすばらしいキャリアを残した選手たちがトルコに来て、気持ちよくプレーしているのは、そういうリスペクトを感じるからこそだと思う。僕もありがたいですけど、これに甘えたら(いけない)。ここで結果を残してこそ、次(の移籍)につながるものがあると思う。そこは自分に厳しくやっていきたいと思います」

 2試合連続出場は前進だとはいえ、香川の言う「次」を見据えるとなると、あまり時間は残されていない。「甘えちゃいけない」と繰り返した香川は、周囲の熱に浮かされず、冷静に、トルコでの日々をスタートさせていた。