ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズが、30周年記念のリイシュー盤『Talk is Cheap(原題)』についてローリングストーン誌の電話インタビューに応えてくれた。今回は全員がバンドのレガシーを考えており「歴史は書き換えられるべきだと思うな。どんなエンディングが待っていてもね」と語ってくれた。

「いつも通り、俺は元気に……凍りそうだぜ!」と、1月下旬のある午後、キース・リチャーズが受話器の向こうのコネチカット州の自宅で叫んだ。リチャーズは30周年記念のリイシュー盤『Talk is Cheap(原題)』について話そうと電話取材を受けてくれた。X-Pensive Winosを結成して行ったソロ・プロジェクトの1988年のアルバムのリイシュー盤は3月29日に発売される(このアルバムに関する詳しい記事は発売間近に公開予定)。このアルバムの再発に加え、これから数ヶ月間のリチャーズは大忙しだ。目玉は4月20日のマイアミからスタートするローリング・ストーンズ4年振りのUSスタジアム・ツアーだろう。しかしその前にバンドが4週間の予定でスタジオに戻ることを、今回リチャーズが教えてくれた。2005年の『ア・ビガー・バン/A Bigger Bang』以来のオリジナル楽曲のアルバムとなる新作の制作を続けるという。「今、その準備に余念がない。マテリアルを整えている最中さ」とリチャーズが言う。

2018年後半のロニー・ウッドの発言で、すでに始まっていたアルバム制作が滞っていると知ってヤキモキしていたファンにとって、これは吉報だ。「ミックとキースは収録曲全部を確実に良い曲にしようと思っていて、現段階は一歩退いている状態だ」と、そのときロニーが語っていた。そして、時を同じくして、リチャーズはいつバンドがスタジオに戻るのか決まっていないと話していたのである。

しかし、リチャーズは今回の休暇中に、書き溜めたマテリアルを掘り起こしていた。そのプロセスを彼はこんなふうに表現する。「時々、新たに作るのではなくて、過去に作ったマテリアルを引っ張り出して、それを聞きながら、あっちを切ったり、こっちを削ったり、形を整えて曲に作り上げることがある」と。そして「これって本当につまらないんだよ。まるで木工所で古い木材を整えている感じさ」と笑う。

リチャーズはツアー直前にスタジオに戻ることを「完璧なタイミング」と言う。そして、ニューオーリンズ・ジャズ・フェストが含まれ、ニュージャージーとシカゴのスタジアムで複数の公演を行う今回のUSツアーを心待ちにしている。「それが俺の仕事だからな」とリチャーズが言う。また、1964年にブレークするきっかけとなった思い出深い国であるアメリカについて「この国でまたライブができるのは最高だよ。しばらくぶりのツアーだからな。アメリカは初期の頃の俺たちにとって絶好の猟場だったといつも思う。イギリスでは成功していたけど、アメリカ大陸を縦断するなんて本当に度肝を抜くことだった。そんなこともあって、アメリカでの仕事は俺の感受性を刺激するんだよ」と言う。

これまでのストーンズのツアーは、最初にクラブでサプライズ的なライブをすることが多々あった。狭いクラブで間近でストーンズを観るなんて、ファンは間違いなく夢心地になる。その可能性があるのかをリチャーズに聞くと「可能性はあるよ」と言って続けた。「前回2回のツアーではやっていないからね。あのときもやりたかったんだよ、実は。機材の運搬の都合で無理だったと思ったな。最適なクラブが見つかればやるし、見つからなかったらやらないってだけ。つまり、メニューにはオードブルとしてちゃんと載っているってことさ」と。

今回のUSツアーにもファンお待ちかねのサプライズがあると言う。去年のツアーで彼らは「シーズ・ア・レインボー」や「愚か者の涙」のようなレア曲を披露した。急に掘り起こしてみんなを驚かせる楽曲のアイデアがいくつかあるとリチャードが言う。「ずっと考えていたのさ。でも君がこの質問をしたおかげではっきりしたよ。詳しくは教えられないけど。この件に関して明言を避ける俺の気持ち、分かるだろう?」

75歳の今もスタジアムのステージを飛び回って疲れないと言うリチャーズ。「全然疲れない」と彼。彼がそうすることで他のメンバーも元気になると言う。「つまりさ、あそこでどうやったら嫌な気分になれる? 俺たちはスタジアムで大好きな仕事を思う存分やれるんだぜ。ラッキーなことに、それをものすごい数の観客が見に来てくれるんだから。大したことないなんて絶対に言えないよ、だろ? それに、それが俺の仕事なのさ。バンドのメンバー全員がそう思っている。この仕事は全員が同じ気持ちじゃなきゃできないんだ。ほんと、みんなが同じ気持ちでいるってことは最高の贈り物さ。みんな、とにかくやりたいんだよ」

リチャーズはローリング・ストーンズが活動期間の長さで記録を作っていると知っていて、このバンドのレガシーこそが彼らが今でもツアーを続ける要因だと言う。「それに、これを止める方法があるかい?」と言って続けた。「(歴史は)書き換えられるべきだと思うな。どんなエンディングが待っていてもね」と。