新政権のサウサンプトンで存在感を高める吉田麻也は、いかに失地回復を果たしたか? 【現地発】
横に並ぶヤン・ベドナレクとヤニク・ヴェステゴーと頻繁にコミュニケーションを図り、ラインの上下動を調節しながら守備を巧みに操舵。チェルシーのプレッシャーを跳ね返し続けつつ、必要に応じてタイミング良く飛び出してはインターセプトを繰り返した。
スタンフォード・ブリッジは試合後の選手取材の規制が厳しく、基本的に映像関係以外の媒体にはパスを出さない場合が多い。しかし、この夜はミックスゾーンに入り込むことに成功し、殊勲の活躍を見せた日本代表キャプテンに話を聞くことができた。
「大活躍だった」と声をかけると、吉田は「つまり、めちゃくちゃ攻められたってことだよね」と、苦笑しながらも嬉しそうに言った。
「守備に関しては、もちろん(満足している)。ゼロに抑えられたのは良かった。アジアカップに行く前に、チームに貢献しなくてはいけないと感じていたので、DFとして最低限のことはできたと思う」
とはいえ、攻撃面でも効果的なフィードで好機を導き出す場面が数回見られた。例えば44分のプレーは、その象徴的なシーンだった。
自陣でボールを受けた吉田は、すかさず右サイドへ展開。この好パスを受けたヤン・ヴァレリーのクロスは、惜しくも相手DFにブロックされたが、通っていれば確実に先制点に繋がっていた。
このプレーぶりからも、吉田がいま、自身のプレーに自信を持っていることが窺える。
昨年12月5日にラルフ・ハーゼンヒュットルが監督に就任して以来、直後のカーディフ戦ではスタメン落ちしたものの、以降は5戦中4戦で先発出場。出場機会のなかった12月30日のマンチェスター・シティ戦も、指揮官は、吉田を含めたレギュラー陣を温存したことを示唆していた。
さらにチェルシー戦後には、アジアカップでチームを離れる吉田について、ハーゼンヒュットル監督は、こう述べている。
「イエス、(出場停止処分となっている)ピエール=エミル・ホイビェアと吉田麻也が1月末までいないのは厳しい。私にとっては、ベストプレーヤーの2人なんだ」
この一言は、イングランド南部にやって来てから、まだ1か月足らずの新監督と吉田の間に、確固たる信頼関係が築き上げられていることが分かる言葉である。その結果、選手の自信は上昇し、プレーにも好影響をもたらしているのだ。
それにしても、マーク・ヒューズ前監督の時とは雲泥の差である。短期だったとはいえ、同監督の時代に信頼関係は存在していなかったからだ。
サウサンプトンに来る前にヒューズ監督が率いていたストークは、確固たる戦術がなく、何を目指しているのかが分かりづらかった。
昨シーズン終盤に監督就任を果たしたセインツでも、どうにかプレミアリーグ残留を決めたとはいえ、迎えた今シーズンは何ら目立った対策を立てられず、開幕早々から負けが込んでいき、チーム内の雰囲気の悪さは周囲にいるだけでも感じ取れるくらいだった。
昨年9月下旬に取材した際のこと。チーム内の雰囲気について聞くと、吉田はこうぼやいていた。
「悪いでしょ。さっきも(チームメイト同士で)怒鳴り合っていたし。負けが込むと、こうなる。追い込まれると、監督もそうだけど、本性が見えてくる。良い選手は、こういう時にどうにか軌道修正しようとするし、ダメな選手は誰かのせいにする」

