もともと両社の間には、ルノーが日産に最高執行責任者(COO)以上の役員を送り込めるとの協定があり、ルノーは今回の会長人事に介入する姿勢を隠さなかった。

 日産は11月22日の取締役会で、ゴーン容疑者の会長職と代表取締役の解任を全会一致で決めた。ルノー出身の取締役2人を説得し、全会一致で決議できるかが焦点だった。

 日産はこの第一関門を突破し、いったんは賭けに勝った。このため「(解任しなければ)コントラスト(対比)になるので、ルノーも同じ結論を出す」(関係者)と期待していた。

 日産がルノーとの資本関係見直しをゴールとする一連の改革を主導するには、ルノーがゴーン容疑者の不正を認めることが出発点だ。そうでなければ、日産のガバナンス改善やルノーとの資本関係見直しが必要という理屈が成り立ちはしない。

 関係者は「『日産がゴーン容疑者を解任したことの意味』をルノーが理解すれば、特殊な状況の中で、今後どうしていくかを(ルノーでなく)日産に任せるだろう」と日産側の期待を述べていた。しかし両社の溝は埋まらず、日産主導のシナリオは狂い始めた。

日産が下支え…譲れないルノー

 ルノーとしては、両社の資本関係見直しまで含めた改革を日産主導で進めることを簡単には容認できない事情がある。99年の資本提携当時はルノーが日産を救済したが、現在の状況は様変わりした。

 日産は米中という自動車の二大市場で足場を着実に築き、17年の世界販売台数は581万台。それに対しルノーは376万台にとどまる。17年は当期利益の約4割を日産からの持ち分法利益や配当収入が占めており、日産がルノーの経営を下支えしている。

 日産は技術面でも電気自動車(EV)分野などでリードしており、「実力としては上」と自負する。「連合が瓦解したら両社にマイナスだが、そのショック度はルノーの方が上回る」(SBI証券の遠藤功治企業調査部長)。仮に日産が独立性を高めれば、ルノーは経営が立ちゆかなくなるリスクも生じる。

 ルノーに15%を出資する大株主の仏政府は最低でも連合の現体制の維持を狙う。フランスでは失業率が10%前後で高止まりのうえ、マクロン政権は大規模デモの頻発で求心力が一段と落ちている。

 さらに足元では米フォード・モーターの仏国内工場の閉鎖計画に対し、ルメール経済・財務相が非難し、計画変更を求めている。雇用吸収力の高い自動車は政府の産業政策の要なだけに、日産の独立性を高めるような大胆な決断は期待しにくい。