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新型iPhoneはディスプレイ内蔵型の指紋認証システムを搭載し、「Apple Pencil」に対応。しかも付属品として、子犬が付いてくるらしい──。ぜんぶウソだ。

過去数年の慣例に従えば、iPhoneの次期モデルは9月に発表される。そしてアップルがメディアの注目を集めるには、何か大きな話題が必要になる。去年の目玉は顔認証システム「Face ID」と、「iPhone X」で採用された有機ELディスプレイだった。2016年はイヤホンジャックが廃止され、2015年には「iPhone SE」が登場している。

ワクワクしてきたところに水を差すようで申し訳ないのだが、この先はちょっと残念な話になる。この記事は、次のiPhoneでは採用が見送られるであろう機能やテクノロジーについてのものだからだ。

1)ディスプレイ内蔵型の指紋センサー

iPhone Xではホームボタンがなくなり、指紋認証システム「Touch ID」を使えなくなった。だが業界内では、指紋認証機能は近いうちに復活するという説が一般的である。指紋センサーはホームボタンやデヴァイスの背面のどこかに配置するのではなく、有機ELディスプレイに組み込むことが可能になっているからだ。

アップルは当初、iPhone Xにディスプレイ内蔵型の指紋センサーの導入を検討したという話がある。だが、時間的に間に合わず、結局いまのようなノッチ(画面上部の出っ張り)とFace IDの組み合わせに落ち着いたという噂は以前からあった。

スマートフォンの背面に指紋センサーを搭載する機種も増えている。写真はグーグル「Pixel 2」。PHOTO: NEIL GODWIN/T3 MAGAZINE/GETTY IMAGES

その後どうなったのだろう。アップルが取得した特許から推測するに、どうもこのアイデアを諦めたわけではないようだ。

だからといってすぐに実現するわけではないし、そもそもフラッグシップモデル以外の機種では当面は採用されないだろう。なぜなら、ディスプレイ内蔵型の指紋認証は有機ELでしか機能せず、現状で有機ELディスプレイを搭載するのはiPhone Xだけだからだ。

市場調査会社Canalysのアナリストであるベン・スタントンは、「技術的に特に難しいことはありません」と説明する。「クアルコムが埋め込み式の超音波指紋センサーを出していますから、単にそれを搭載すれば実現します。ただ、アップルは特にフラッグシップモデルでは、市場に普通に出回っているテクノロジーを使うことを好みません。おそらくは独自の技術を開発していると思います」

さらに、アップルがFace IDに背を向ける理由もない。業界アナリストのパトリック・ムーアヘッドは、「アップルはFace IDに普及に全力で取り組んでおり、(外部のアプリメーカーなどにも)同じ姿勢を求めています。またiPhone Xの販売は好調で、Face IDに特に問題があるという話も聞きません」と説明する。

サムスンは「Galaxy」シリーズにディスプレイ内蔵型の指紋認証機能を搭載する計画で、常に競合モデルとの差異化を図ろうとするアップルがFace ID路線を突き進むことは理にかなっている。それに、同社は顔認証システムは指紋認証より優れていると主張しているのだ。

2)スタイラスペンへの対応

スティーブ・ジョブズが2007年に行われた製品発表イヴェントの基調講演で、スタイラスペンをこき下ろしたのは有名な話だ。しかし業界アナリストたちは、発売がささやかれるiPhone Xの大画面モデル(「iPhone X Plus」という仮称で呼ばれている)がペン型入力デヴァイス「Apple Pencil」をサポートすると予測している。

ビジネス顧客や、アップル製品を愛してやまない人の多いクリエイティヴ産業からの要望に応える動きとしては自然だし、iPhoneの箱にペン型デヴァイスを1本加えるだけで済むから(別売りでも構わない)、簡単だと思うかもしれない。しかし、技術的にはそれほど単純な話ではない。

アップルは「Apple Pencil」が、昔ながらの筆記用具をはるかに超えた製品であると訴求している。PHOTOGRAPH COURTESY OF APPLE

スタイラス対応にするには、まずディスプレイのリフレッシュレートをiPad並みに上げる必要がある。Canalysのスタントンは次のように指摘する。

iPhoneでApple Pencilをサポートすることは可能ですが、そこに意義があるのかと言われると微妙なところだと思います。iPhoneの画面が次に大きく進化するとすれば、iPad Proで使われているProMotionテクノロジーを採用したリフレッシュレートが120Hzのディスプレイを使うことです。ただ、実現は来年以降になるかもしれません」

アップルがどこまでやるつもりなのかは、9月12日に予定される発表イヴェントまではわからない。iPhone Xが現行のiPhoneのなかで最も売れていることを考えれば、フラッグシップモデルでは多少値段が跳ね上がっても高い機能性を追求することを選ぶ可能性はある。この場合、価格面を重視するユーザーのために、それ以外のモデルは液晶ディスプレイ(LCD)のままになるはずだ。

3)トリプルレンズカメラ

iPhoneの最新モデルはすべて、デュアルレンズの背面カメラを搭載する。これがトリプルレンズになるという噂があるが、おそらくは実現しないだろう。

アップルのアナリストとして有名なミンチー・クオによれば、部品の供給に問題があるという。現行のカメラでも十分な評価を得ているのだから、品薄になるリスクを冒してまでトリプルレンズにこだわる理由はないというわけだ。ちなみに、既存のモデルではファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」がトリプルレンズの背面カメラをもつ。

ファーウェイは「HUAWEI P20 Pro」にトリプルレンズの背面カメラを搭載した。PHOTO: MARLENE AWAAD/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

「トリプルレンズを採用することの意義がはっきりするまではやらないでしょう」と話すのは、Canalysのスタントンだ。

「P20 Proは確かにトリプルレンズですが、3つのレンズを同時に使う撮影モードはありません。アップルが背面カメラをデュアルレンズにしたのは、背景のぼけ具合を追求するためでした。2つのレンズで撮った2枚の画像情報を合成し、色味などを調整して1枚の画像にすることで、写真の品質を向上させたのです。いまでこそ普通になりましたが、当時のデュアルカメラ携帯でこうした処理をしているモデルはなく、状況に応じて2つのレンズを使い分けることしかしていなかったのです。つまり、アップルがトリプルレンズを採用するのであれば、新しい技術を実現するために必要だから、という理由でそうするはずです」

4)ノッチのないディスプレイ

アップルが始めたことで業界標準になったものに、画面上部の出っ張りであるノッチが挙げられる。スマートフォンのディスプレイにノッチが初めて現れたのは昨年のことだが、アップルはすでに、このFace IDに必要な各種センサーを収めるための「切り欠き」に愛想をつかしており、次期モデルではこれを廃止する方向で動いていると報じられている。

だがアナリストたちは、この報道には賛成しないようだ。ムーアヘッドは、Androidスマートフォンでもこれだけ普及しているほか、アプリメーカーもノッチに合わせて開発を進めるようになっており、やめる理由は特にないと指摘する。

スタントンも「ノッチはそのままでしょう」と言う。「スマートフォンのデザインの標準になった感もあります。それにアップルは、プロダクトのデザインを1年ごとに変えるといったことはやりませんから」

iPhone Xのヒットを受けて、ディスプレイ上部にノッチがあるデザインはAndroidスマートフォンにも広がった。写真はLGエレクトロニクスの「LG G7 Fit」。PHOTOGRAPH COURTESY OF LG ELECTRONICS

今後の注目は?

ここまでは、アップルが今年は見送るであろうことの話をしてきた。では逆に、これから起こりそうなことは何だろう。

ムーアヘッドは5Gの通信技術に注目している。「Android市場では来年上半期になると、さまざまな5G対応機種が発売される見通しです。iPhoneユーザーにとっても、買い替えに当たって5G対応はひとつの基準になってくるはずです」

ムーアヘッドはまた、「拡張性」もキーワードになっていくだろうと指摘する。スマートフォンをノートパソコンやデスクトップパソコンとつないで特殊な使い方をしたり、アクセサリーを付けて新しい機能をもつデヴァイスに変えられるといったことだ。ムーアヘッドは次のように説明する。

「スマートフォンの出荷台数は頭打ち傾向が鮮明になっており、メーカーは販売拡大に向けて新たな用途を付加する方向を試しています。サムスンなら『DeX Station』、レノボがモントローラ製品向けに出した『Moto Mods』といったアクセサリーがこれに当たります」

アップルがこの流れに加わる可能性は低い。だが、アクセサリーが高すぎることに関しては昔から有名なのだから、ここでもある意味では業界に先駆けていると言えるかもしれない。

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