「洋菓子のヒロタ」は2001年に民事再生を申請、2002年に21LADYが支援に乗り出し、2005年に再生が終了した。とはいえ業績は苦戦が続く(編集部撮影)

シュークリームで知られる「洋菓子のヒロタ」、北欧からの輸入雑貨販売「イルムスジャパン」を運営する上場会社、21LADYの藤井道子社長が、6月27日の株主総会で解任された。

藤井氏は2000年に21LADYを創業して以来、社長を続け、現在も33.4%を握る筆頭株主。同社の業績は長い間低迷し、ようやく2017年3月期に11年ぶりに営業利益が黒字化し、2018年3月期も黒字を維持するなど浮上の兆しも見えていた。その矢先の解任だけに、いったい何が起こったのか。

過半数株主が藤井社長再任に反対

きっかけは、2位の大株主で、16.8%を保有する投資ファンド「サイアムライジングインベストメント」からの株主提案だった。サイアムは今年4月、藤井氏を含む21LADYの取締役4人(うち1人は社外取締役で、今回新社長に就任した米道利成氏)に加え、新たに3人の社外取締役を選任すべきとの提案を行った。

営業利益が黒字化したとはいえ、経営には不安を抱いており、モニタリング機能をより強化すべきとの考えからだ。

一方、会社側は藤井社長を含む、取締役4人の再任案を提出。総会では、サイアム側の提案は承認されたものの、会社側の提案のうち藤井氏の再任だけは過半数の株主が反対し、否決されてしまった。関係者によると、藤井氏の再任にはサイアム側も反対したもようだ。


再任が否決された藤井道子社長(日本郵政の招集通知より引用)

藤井氏の再任否決を受けて、21LADYは直後の取締役会で米道氏を後任社長に選んだ。米道氏はサイアムの代表でもあり、1年前から21LADYの社外取締役を務めていた。この結果、米道新社長を含む6人の新経営陣のうち、4人がサイアムの関係者あるいは推薦した人物となった。

サイアムは、1997年に経営破綻した山一証券出身で食品会社などを経営する米道氏らによって昨年3月に設立された投資ファンド。昨年4月に、21LADYの大株主だった別の投資ファドから112万株を買い取り、2位の大株主になっていた。

その直後、業績低迷に苦しんでいた21LADYは、営業利益が2017年3月期に黒字化し、続く2018年3月期は純利益も黒字化するという見通しを公表。何年間も100円前後の“倒産株価”だった21LADY株は500円近くまで急騰。いったん200円前後まで下げたが再騰し、現在も400円台をキープしている(結局、2018年3月期は最終赤字で着地)。

サイアムの持ち株数は、今年3月末で119万株。1億数千万円で取得した株式が4億数千万円に値上がりしているわけだから、投資は大成功ともいえる。ただ、サイアムは、21LADYの現状には満足しておらず、さらなる儲けを狙っているようだ。

営業黒字化でも、厳しい実態

黒字化を果たしたとはいえ、それは「洋菓子のヒロタ」の不採算店舗大量閉鎖によるものであり、将来に明るい展望が持てるわけではない。

21LADYは、2000年に旧ベンチャーリンクの出身だった藤井氏が小売り、サービス、外食など「ライフスタイル産業の総合支援」を目的に設立。英国風パブ「HUB」で有名なハブなど、多くの企業への投資を手掛けた。

現在は2002年に子会社化した「洋菓子のヒロタ」と、2010年に子会社化した北欧からの輸入雑貨販売の「イルムスジャパン」の2社に絞り込んでいる。

買収時に民事再生手続き中だったヒロタは、数年後に再建を果たしたが、再び長期低迷。ここ数年で不採算店舗の大量閉鎖に取り組んできた。かつて50店以上あった常設店舗は今年3月末に18店まで減り、黒字が定着しつつある。

それでも、主力のシュークリームの売り上げは停滞し、量販店などへの卸売りに力を入れるがカバーできていない。夏場を中心に販売するシューアイスも天候に左右され、天候不順に見舞われた昨年夏は苦戦。

これが響いて21LADYの前2018年3月期は、当初5000万円(前期比56%増)を見込んだ営業利益がわずか800万円にとどまり、黒字化を狙った純利益は店舗閉鎖の特別損失もあって赤字が続いた。


輸入雑貨イルムスも赤字が続いている(編集部撮影)

一方、イルムスも子会社化以来の赤字体質が続いている。こちらもここ数年で不採算店舗の閉鎖を行い、10店以上あった店舗は今年3月末で7店となったが、販売は低迷しており、赤字体質脱却のメドは立っていない。

21LADYは長く赤字が続いたため、2014年3月期末には2000万円超の債務超過に転落。翌期以降も最終赤字は続いたが、工場売却、藤井社長や投資ファンドへの相次ぐ第三者割当増資で何とか債務超過を回避してきた経緯がある。

前期には、当初黒字化を狙った純利益が赤字見通しとなり、債務超過を避けるため今年3月に急きょ第三者割当増資を実施。サイアムや藤井社長のほか、グループの幹部までもが増資を引き受けている。

21LADYは、今2019年3月期に売上高26億円(前期比1.7%増)、営業利益5000万円(同6.2倍増)と増収増益を見込み、純利益も3000万円と9年ぶりの黒字を目指す。

だが、過去の経緯もあって、株主の多くはこの業績予想に疑心暗鬼となっているのかもしれない。昨年来の株価上昇にもかかわらず、それまで長い間、我慢を強いられてきただけに、蓄積していた不満が爆発し、創業者である藤井氏にノーを突き付けたのだろうか。

なお、藤井氏が社外取締役を務める、日本郵政では賛成96%、NECネッツエスアイも同じく96%の賛成でそれぞれ再任が可決されている。