セラピスト視点3つのポイントで職場のコミュニケーションが変わる/内藤 由貴子
6月は、祝日もなく雨の日も多いので、それまで外側に向いた意識が内側に向かいやすくなる時期です。
実はセラピーを受けたくなる人も多い時期。
そこで、今日はセラピスト視点での職場のコミュニケーションポイントを実例を交えてお伝えしましょう。
◎上司が急に仕事を振るので、困るという相談 先日、次のような仕事の相談を受けました。
「上司が気まぐれに仕事を急に振って来る。あまり急なので自分は対応できないこともある。
そんな上司のおかげで、自分の仕事の優先順位を変えることもしばしば。どう対応すればいいのか」
という内容です。
相談者からシェアの了解もいただきました。この相談者さん、仮にS子さんとします。
「上司が急に仕事を振って来る」と言う件ですが、それを読んで皆さんは、どんなことを想像しましたか。
私が一瞬想像したのは、終業の1時間くらい前に、急に自分のところにやって来て、
上司 「これ、今日中に仕上げないとならない書類だから、残業してくれる?」
S子さん 渋々「はい…」(今日は仕事の後、友人と食事の約束があるのに、急に言われても…。そのために自分の仕事を早く終わらせようと頑張っていたのにぃ)←こころの声 のようなことかと思ったら、どうやら違いました。
「急にとは、どんな状況で仕事を振って来るの?」と聞きましたら、
この上司、仕事ができて理想が高く、その上司の理想に近づくためには「部下も理想の実現に協力して当然…、上司が何かを思いつくたびに仕事の優先順位がころころ変えられてしまう」というものでした。
「急に残業を言われても…」と言うような単純な内容ではなかったようです。
この相談者、S子さんにはS子さんなりの仕事へのこだわりがあり、
高い精度をもって仕事にあたりたいと言う欲求がありました。
そのための段取りを彼女なりに考えて、期日にベストタイミングで仕上がるよう進めていたのに、
横から「急に」上司の仕事が入るので、そちらを優先せねばなりません。
自分の仕事の優先度は必然的にダウン、自分のモチベーションもダウン。
高いモチベーションを維持できず、結果として仕上がりもダウン。
「そんな上司ってどうなんでしょう?」というわけなのですが…。
ここで、セラピスト的な視点の3つのポイントをご紹介し、3つの視点でこの相談を見直しましょう。
1つめは、自分の世界観だけでものを見ないこと。
2つめは、互いの世界観のすり合わせが必要だということ
3つめは、相手の状況を俯瞰してみること。ちょっと神?のような視点を持つこと
1つめは、自分(ここではセラピスト自身)の世界観だけでものを見ないこと。
この場合、相談者は「上司が急に仕事を振って来る」ことで、自分の仕事が思ったようにできなくて不満がたまってます。
セラピストは、瞬間的には。就業間近な残業などを想像しましたが、その思い込みで話は進めていません。
「どんな状況で…」と尋ねることで、より相手の伝えたい状況を把握しようとしています。
その結果、単純なものではなさそうだとセラピストは理解しました。
2つめは、互いの世界観のすり合わせが必要だということ
互いとは、ここでは上司と部下の視点をセラピストがサポートします。
なぜS子さんは、上司は「急に仕事を振る」と思うのでしょうか。
よく話を聴くと、その人なりの仕事観があることが見えてきます。「時間」がテーマの様でいて、実は仕事へのこだわりの部分が損なわれることが、不満なのだとわかります。
これはS子さん→上司の視点。
しかし、急な仕事にはどんなものがあるのかを尋ねると、上司が手掛ける「イベントの会議に同席して」というような内容もありました。
どうやらその上司は、S子さんに大きなイベントの企画内容を知ってもらい、自分の助けだけでなく、S子さん自身がそんなイベントを手掛けられるようになってほしいという期待がありそうでした。
部下の成長のためだとすれば、急に仕事を振るという意味合いも少々事情が変わります。
上司→S子さんの視点には、伝えるべきタイミングをもっと配慮する視点を持つ必要もあるには違いないのですが。
S子さんは、課題をどうやって仕上げるか、自分で考えて進められる能力がある人ですから、上司もその力を評価している可能性があります。
セラピストは、S子さんの気づいていない「上司→S子さんの視点」に何がありそうか、触れる機会を作ります。
3つめは、相手の状況を俯瞰してみること。ちょっと神?のような視点を持つこと
このケースでは、S子さんは、自分の段取りで、モチベーションを上げた状態で出来上がるタイミングも完璧に仕上げたい、でも上司にそれを妨げられることが、なぜ繰り返されるのか?を見る必要がありそうです。
神の眼のような…と私たちは時々言うのですが、これは決して上から目線を意味せず、高いところから俯瞰するよう対象にちょっと距離を持ち、思い込みを超えて「客観的に」なって対象者を見ることです。メタ認知と言われることに近いです。
私はフラワーフォトセラピストなので、花の写真を使って、聴いた情報以上に心の奥まで分析できます。そんなツールが、客観性を持つことを助けてくれます。
S子さんの場合、自分で自分の幸せを禁止している「幸せの禁止令」があるようでした。*参考)禁止令の記事
人は誰しも幸せを望むのが当たり前だ、と頭では思っています。
しかし、潜在意識で自分に幸せを禁止している人は、いつの間にか幸せから遠さかろうとします。
ここでは理想的な仕事の実現を潜在的に壊すほうへ働くパラドックスが見えました。
さらに言えば、途中で上司が仕事を振りやすくなる状況を気づかないうちに作っているかもしれません。
分析した他の感情には「虚しさ」もあり、「幸せ禁止令」と合わせると「どうせ、私の理想通りにはならない」気持ちがあるようでした。
もし、幸せを自分に許せたら、上司から振られた仕事も「ラッキー!」と自分の成長のチャンスと捉え、それが本人の幸せにつながっていくかもしれません。
S子さんには、禁止令の解放をしてもらいました。
◎相手は、本当は何を伝えたいのか、に近づくこと今回、3つのコミュニケーションのポイントをお伝えしました。
このケースの場合、一見すると急に仕事を振る上司への不満でしたが、
実は「仕事がいつも妨げられて。望むように実現しないことが繰り返されるのは、なぜ?」が本当の主訴でした。
セラピストは、相談者の言葉や態度から、ただ聴くのではなく、言葉の背後まで理解しようとします。
コミュニケーション時に、「こんなことを言っているけれど、本当は何を伝えたいのだろう?」と近づこうと意識すること、理解を忘れないと意識するだけで、関係はきっと変わります。
なぜならそれは、相手への思いやりにほかならないからです。
*写真は「幸せになることを自分に許したい」