クレーマーを得意客に変える『カルビーお客様相談室』の真摯
要約者レビュー
企業のなかの「お客様相談室」というと、どんなイメージを思い描くだろうか。顧客絡みのトラブルやクレームに対して、限られたベテランの担当者が、関係部署の迷惑にならないように対応する。一般的にはそんなイメージかもしれない。
だが本書『カルビーお客様相談室』を読むと、そうしたイメージが「思いこみ」であることに気づかされる。スナック菓子企業最大手のカルビーは、寄せられたクレームをいかに前向きな動きに変え、企業ブランドの強化や商品力の充実に結びつけてきたのか。本書はその取り組みの記録だ。
言葉遣いを変えるだけでも印象が変わることにまず驚かされる。カルビーでは顧客からのクレームを「ご指摘」、そのご指摘に対する仕事やアクションを「処理」ではなく「対応」と呼んでいる。こうした言葉遣いからは、寄せられた苦情や問題を真摯にとらえ、会社を変えていこうという覚悟が伺える。
普通は規模が大きく有名な企業ほど、なかなかこうした発想をとりにくいものだ。組織が硬直化しているのに加え、高いプライドが邪魔になるからだろう。だがカルビーはそれを現実にやり抜いた。
お客様の口に入る食品を扱っている会社だから、という面もあるかもしれない。だが真の顧客サービスに業種は関係ないはずだ。カルビーの顧客に向き合う姿勢は、他の企業においても大いに参考となるだろう。 (毬谷 実宏)
本書の要点
(1) お客様相談室は単なる「クレーム処理」の部署ではない。カルビーではお客様に心から満足してもらえる対応を徹底して考え、それを実現する仕組みづくりに注力している。
(2) 社内の関連部署にお客様の声を届けるのも、お客様相談室の重要な役目だ。そこから新たな製品開発につながるケースもある。
(3) どれだけ信頼を積み重ねても、たったひとつの誤りが、それまでのブランドを台無しにしてしまう。だからこそお客様対応のプロフェッショナル人材を育成することに、カルビーは心血を注いでいる。