VUCA時代をチャンスに変える、サービス人材は“壁”で育てる|service scientist′s journal /松井 拓己
サービス人材育成をテコ入れするために、その観点を分解して考えることが有効です。今回の「育てる」と「育つ」の視点と、その具体策の違いです。
「人を育てる」だけの育成体系ではダメ
人材育成は「育てる」視点が強くなりがちです。若手を中心に、育てることはもちろん重要です。しかし「育てる」ばかりでは、自力で育つ力が養えません。誰かに育ててもらわないと成長できないようでは、日常業務はこなせても、VUCA時代に事業をリードすることはできないのです。
サービスは“顧客と一緒につくるもの”という極めて重要な特徴があります。“顧客”は時代とともに変化します。VUCA時代の変化に対応するには、日々の顧客経験から気付きや学びを得て、サービスを柔軟に磨くことと、自身の成長につなげることが欠かせません。サービスも人材も、自己革新する力が求められているのです。
これが、前回触れた、成長しているサービス事業が実践している“変化のきっかけを掴む力”に繋がります。VUCA時代には、いままで以上に想定外の事態や変化に直面します。それを変化や成長のチャンスにできるかどうかが、VUCA時代の人材の腕の見せ所となるのです。
“壁”でサービス人材を育成する
「育てる」人材育成は、何を教えたら良いのかという観点で、手を差し伸べる要素が大きいものです。対して、「育つ」を重視してサービス人材育成の体系をテコ入れすると、手を差し伸べるのではなく、“壁”を用意する発想で体系を組み直ることが多くなります。
最初は小さな壁を周囲のサポートを受けながら乗り越え、徐々に大きな壁を自力で乗り越えられるようになり、最終的には周囲を巻き込みながら未知の壁を乗り越えるチャレンジを推進します。壁を乗り越える中で、先の読めない変化の時代の事業推進に必要な自己革新する力を養っていくのです。
“壁”によるサービス人材育成を考える際に重要なのが、これからの事業推進に必要な力と、それを養うために乗り越える壁の種類、それらの壁を乗り越えながら成長する道筋を示す育成シナリオです。
“壁”には、たとえば次のようなものがあります。サービス改革では、以前紹介したように、「建前の壁」「顧客不在の壁」「闇雲の壁」「実行の壁」「継続の壁」「情熱の壁」の6つを乗り越える必要があります。これらの壁を乗り越える力を養うことで、VUCA時代にも、サービスを自己革新しながら力強く事業を推進できるはずです。
“壁”を乗り越えながらサービスを変革する力を磨くことは、予測できない変化時代を、事業成長のチャンスに変えることができるのです。