AI・ロボットをサービス事業に活かす ガッカリする前に考えること|service scientist′s journal /松井 拓己
AI・ロボットのガッカリ感
AIやロボットと聞いて、漫画や映画の世界にある“近未来”が到来したかのように期待が膨らみます。過度な期待の膨らみが、発展途上であるAIやロボットへの“ガッカリ感”に繋がっている側面があります。これは、AIやロボットを提供するベンダーが、事前期待を膨らませるような打ち出しをした結果と捉えることもできます。しかしこのままでは、「使えない」「胡散臭い」「一時のブーム」とレッテルを貼られてしまい、せっかくの技術が十分に活かされなくなる恐れがあります。認知が高まった今後は、事前期待をうまくマネジメントしながら、技術をサービスとして育てていくことが大切です。
着実にサービス事業での活用は広がっている
少し話がそれましたが、AIやロボットといった技術や仕組みをサービス事業として、どうやってうまく活かすと良いのかを考えます。たとえばAIやロボットの活用領域を、図のように顧客接点と非接点の業務、手順型と気付き型の業務の2軸で分類してみます。
多いのは図の下側の、社内業務の仕組み化です。左下は、バックオフィスの単純作業を仕組み化するような取り組みが代表格です。働き方改革の一環で、業務の効率化と働きやすさの向上を狙って、AIやロボットの活用が進んでいます。右下は、ビジネスの意志決定のサポート役として活躍の場が広がっています。経営や業績の分析だけでなく、人材のパフォーマンス向上やチームビルディングなど、様々な経営課題にAIが活かされています。
少しハードルが高いのは、図の上側の顧客接点での活用です。左上は、顧客接点の手順型業務の仕組み化です。ビジネスホテルのチェックイン、スーパーのレジ、飲食店の注文などの業務が、ロボットやタッチパネルに置き換わっているように、仕組み化を通した無人化が盛んです。右上は、顧客接点の中でも気付き型業務です。コンシェルジュや相談窓口での活用にチャレンジしたものの、「ロボに質問したら、聞かなくても分かることしか答えてくれなかった」という具合に、事前期待に応えきれずにガッカリされることが多いようです。
AIやロボットは、とくに顧客接点での活用が期待されていますが、まだまだ課題は多そうです。実は顧客接点での活用を考える場合、AIやロボットそのものの問題よりも、それを活用するサービス側の問題の方が大きいのです。次回は、AIやロボットの活用を見据えて、サービス側の問題に着目します。