一人の人が自殺すると、「その人の家族や友人、同僚など平均して約10人の人に大きな影響を与える」とされている。残された人々のほとんどは、もしかしたら自分が事前に止めることができたのではないかという自責の念に苛まれながら、その後の生活を送っている。

 そんな人々の心を少しでも救おうと各地で活動しているのが、自死遺族会だ。私たちにはなかなか馴染みの薄いそれらの団体は、いったいどのような活動をしているのだろう。

 「自死遺族会」と一言でいっても、その形態や活動内容は団体によってさまざま。ほとんどが民間団体で、専門スタッフと多くのボランティアのスタッフで運営されている場合が多い。

 活動の内容としては、電話などで遺族からの相談を受ける他に、遺族が定期的に集まり、自分の体験や今の思いなどを語り合う「分かち合いの会」などを開いている。遺族のほとんどが「自殺」への偏見の目を気にするため、辛くても周りの人に相談することができないでいる。それが、同じ体験をした者同士だと楽な気持ちで話すことができ、心が軽くなるというのだ。もちろん、名前などを明かす必要はなく、話せなければ無理に話さなくてもいい。中には、話に耳を傾けながらじっと涙を流すだけの人もいるという。

 大阪市で「親の自殺を語る会」を運営する佐藤まどかさんは、「口に出すことで、その人自身の中で次第に整理されていくのです。私たちは、特に何もせず、ただ見守るだけ」と語る。

 この会は、遺族の年齢、亡くした時期に関わらず、自殺によって親を失った人を対象にしている。ごく最近親を亡くしたという人もいれば、何十年も前に亡くしたという中高年の方まで、参加者の幅は広い。このような形態にしたのは、「親を亡くした子供という立場に限定することで、今まで打ち明けられなかった思いを口にできることもあるはず」という理由からだ。

 その他、各地で活動を行っている遺族会は以前に比べ、ぐっと数が増えている。しかし、多くの自殺者が出ている現在の日本では、まだまだ十分な数ではないのが現状。また、行政との連携が不十分なために、どこに相談しに行ったらよいのか分からず、孤立してしまう遺族が後を立たない。各団体と行政のネットワークの整備が急務といえる。

 さらに、このような活動に私たちが理解を示し、協力していくのが大切なことも、お忘れなく!(文/verb)

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