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 「最近、培養肉バーガーにはまっちゃってさー」という日も近づいているとかいないとか、という話。 「培養」とは、細菌などを育てて増やすことの意。このほど、アメリカ・メリーランド州立大学・博士課程の学生ジェイソン・マセニーと、彼の研究チームが「培養肉」の具体的な生産方法を具体的に2通り発表したという。

 培養肉を作る方法の1つは、牛や豚、魚等の筋肉組織を並べて1枚のシーツ状にし、それを薄い膜の上に乗せておく。その後細胞が発達して1枚の薄い「肉」を取り出し、できあがった「薄肉」を何枚も重ねることによって厚みのある肉にするというもの。しかも、わずかな温度により肥大化する「立体ビーズ」に筋肉組織を敷き詰めた組織の結合も成功させ、チキンナゲットやハンバーガーの肉にも使用可能なクオリティ。マセニーさんは、培養肉を使えば家畜汚染も防げ、家畜を大量飼育する必要もなくなると胸を張る。

 しかし、ここで疑問が沸いてきた。人間が口にするデリケートなものを培養するという技術は、日本でも可能なのだろうか? そこで日本でおもに再生医療のための培養に詳しい専門家にお話を伺った。

 「うーん。たしかに、理論上だけで考えればできるといえなくもないですが、安全面と資金面の両方から考えてもやはりちょっと・・・」

 培養は、汚染を防ぐために宇宙服のような作業服を着て行われるなど、安全性に細心の注意を払う。そのための維持費は何十万とかかる。さらに現在の培養技術では、一度にできる培養膜は1ミリよりもはるかに薄いため、重ねるたびに培養液が染み込みにくくなるなど、問題は山積み。ハンバーガーの肉の食感を実現することは、至難の業だという。

 「食感はスカスカで、言ってみればオブラートを噛んでいる感覚でしょう」(同)

 もし、培養肉バーガーを作るなら値段はどのくらいかかるのか。無理を承知でお聞きしてみたところ、すばやく計算してくれた。

 「1ミリの培養に40〜50万円かかるとして、掛ける20枚。すべての条件を取り入れ換算すると、培養肉バーガーを作るのにかかる総費用は、約1000万円ですね」(同)

 な、なんと今や100円ポッチで買えるバーガーの中身を培養肉にしただけで1000万円とは! 採算度外視もいいところ。しかし、最近の技術は日進月歩。いつ、そんな日が訪れるか分かりません。超豪華「培養肉バーガー」が、お店に出回るまで首を長くして待つことにしましょうか。(文/verb)