1991年に発売された3代目「RX-7」は、「FD」という呼び方でも広く知られるマツダのスポーツカーです。エンジンはもちろん、ロータリー。まちがいなく、唯一無二に数えられる1台でしょう。

マツダの魂、ここにあり

 マツダ「RX-7」の歴史は、1978(昭和53)年の初代SA型に始まります。1985(昭和60)年に第2世代のFC型にフルモデルチェンジし、1991(平成3)年に最後のFD型「RX-7」にバトンタッチされます。


マツダ3代目「RX-7」(画像:マツダ)。

 最初は「サバンナ」のペットネームが使われていましたが、第3世代のFD型から当時の販売チャンネル名にちなんだ「アンフィニ RX-7」の名称が使われます。ただし、販売チャンネルの廃止から1997(平成9)年より「マツダ RX-7」となり、2002(平成14)年まで生産が続きました。

「RX-7」は、マツダが世界に誇るロータリー・エンジンを搭載したスポーツカーです。ロータリー・エンジンをしっかりと量産車で利用したのは世界で唯一、マツダだけ。その開発は困難を極めましたが、広島弁でいう「いちがい(頑固一徹)」の鉄の心でやりとげたという歴史があります。そんなマツダ・スピリッツが最も濃厚に表れたクルマが「RX-7」といえるでしょう。

唯一無二、ロータリー・エンジンが放つ強烈な個性とは

 FD型が誕生した1991年は、バルブの好景気で生まれた国産スーパースポーツが数多く存在していました。日産の「スカイライン GT-R」、トヨタの「スープラ」、ホンダの「NSX」です。そんななかでも、ロータリー・エンジンというほかにないエンジンを抱えた「RX-7」は、強い存在感を放ちます。


3代目「RX-7」の13B型ロータリー・エンジン(画像:マツダ)。

3代目「RX-7」のロータリーシャフト(画像:マツダ)。

5MTのシフトノブは本革巻き(画像:マツダ)。

 とにかく、ロータリー・エンジンの個性は強烈です。エンジンは、アイドリング付近では「バ、バ、バ、バ、バリ、バリ、バリ」と不機嫌そうに回りますが、アクセルを強く踏み込めば、まるで電気モーターのように「シューン」と軽々と回転数を高めます。低回転ではスカスカでも上になると、ドカンとパワーが出ます。

 そして、飛ばすと驚くほど燃費が悪い。ピストンが上下する普通のエンジンとは、まったく異なる性質を持っています。良いところもあれば、悪いところもあるのがロータリー・エンジンです。

世界を魅了した「悪い子」

 そんなピーキーなロータリー・エンジンを、「RX-7」は地を這うような流麗なデザインのボディに搭載しました。馬力ではライバルに劣りましたが、そのぶん、優れたハンドリングを備えます。誰にでも扱いやすいわけではありませんが、上手に使いこなせば速いというのが「RX-7」。そこには、こびない姿勢というか、アウトサイダー的なイメージが漂っていたのです。昭和に大ヒットしたバラエティ番組風に「良い子、悪い子、普通の子」でいえば、「RX-7」は完全に「悪い子」です。でも、そこが魅力的でした。


マツダ3代目「RX-7」の運転席まわり(画像:マツダ)。

「RX-7」は日本だけでなく、世界中で熱いファンを獲得することに成功します。そのため、今も世界中で「『RX-7』復活待望」の声が絶えることがありません。

 とはいえ、環境対策の燃費規制に厳しい昨今、ロータリー・エンジンを復活させるのは非常に困難でしょう。マツダは「ロータリー・エンジンの開発は続けている」といいますが、「RX-7」の後継モデルは、はたして登場できるのか。はたまた夢物語なのか。なんとかマツダには頑張ってもらいたいと思うばかりです。