コーン・フェリー・ヘイグループ 高野研一 代表取締役社長

 「なぜ経営人材が育たないのか」、ある会社のトップの一言が、本書を書くきっかけです。

 「人が価値を生み出す」「最後は人」と言われる一方、新たな価値を生み出す人材が出てこないことが多くの企業で問題になっています。

 最大の理由は、従来の問題解決手法が効果を発揮しなくなってきていることにあります。環境が安定し、既存のビジネスモデルが価値を生み続ける時代には、問題を専門分野に分解し、各分野のフレームワークを活用して最適解を導くことができました。

 ところが、環境が大きく変化し、既存の延長線上には新たな価値が生まれなくなってきた昨今、このやり方は問題を狭く定義することにつながり、真の解が見えなくなる最大の原因になっています。

 私はかつてファンドマネジャーをしていたことがあり、投資家の立場から世界中の経営者を見てきました。そのときに気づいたことは、新たな企業価値を生み出す場合に必要になるのは、新たなモノの見方(仮説)を発見するとともに、それを検証する力であるということです。

 なぜシリコンバレーからあれだけ多くのイノベーションが生まれてくるのか。それは、シリコンバレーの起業家は、自分の時間の100%を新たなモノの見方の発見と、仮説の検証に投資しているからです。

 情報革命の勃興により、モノづくりから情報の活用へ、目に見える世界から見えない世界へ戦場がシフトしてきています。その中で、新しいモノの見方を発見する力の重要性が増しているのです。

 グーグルのような大企業でさえ、社員の時間の20%は、全く新しい仮説の検証に投入することを求めています。検証しなければ見えない事実があるからです。

 それに比べて、日本企業で働くビジネスマンが、どれだけ新しい仮説の構築と検証に時間を使っているでしょうか。冒頭のトップの言葉から、答は明らかでしょう。

 価値とは目に見えないものですが、見ようとする人にだけ、その姿を顕します。本書は新たなモノの見方(超仮説)を獲得したい人に向けたトレーニング本です。