″大麻を使った服″はなぜ違法ではないのか?専門家に聞いてみた

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 「ヘンプ」は「リネン」と同様に清涼感のある素材として親しまれているが、「大麻」と聞くと違法薬物を連想する人が多いかもしれない。しかし日本では、大麻を衣食住で一般的に利用してきた歴史が深く、現代においても衣料品に使われる大麻は「合法」だ。では、大麻取締法で違法とされている「大麻」との違いは何なのか。エイベックス・グループ・ホールディングスによるブランド「麻世妙(まよたえ)」で大麻布の普及に努めているプロジェクトリーダー山嵜竜司氏に話を聞いた。

■違法のボーダーラインは「大麻の部位」
 大麻は植物の名前で、リネン(亜麻)やラミー(苧麻)と同様に「アサ」の一種。日本では古くから神社のしめ縄や横綱の綱などに使われ身近な植物として親しまれていた。日本が敗戦した第二次世界大戦後は連合国軍最高司令官総司令部により大麻が「乱用薬物」と見なされ、栽培や所持、譲渡を禁止する「大麻取締法」が1948年に制定。国内における生産・流通が難しくなり、大麻が衣料品に使われることはほとんどなくなった。1962年には「家庭用品品質表示法」が施行。「麻」と表記できるのはリネンとラミーのみとなり、大麻は「指定外繊維(大麻)」など素材名で表示することが義務づけられている。

 大麻草には、多幸感や鎮痛、幻覚などの薬理作用を引き起こす成分が花冠や葉に含まれており、"薬物"の「マリファナ」はその部分を乾燥または樹脂化、液体化させたものを指す。一般的に"大麻マリファナ"というイメージが蔓延しているが、衣料品には成熟した茎といった薬理成分を含まない部分が用いられており、これらの繊維を原料とする製品の製造や販売、使用は「まったく問題ない」(「麻世妙」公式サイトより)という。日本国内における大麻の栽培面積が少なく、「精麻」という紡績事前加工設備が無いため、「麻世妙」では原料を中国から輸入。輸出入についても違法と思われがちだが、薬理成分を含まない成熟した茎や種子といった部分は合法とされている。

大麻の栽培、一歩間違えると違法に
 大麻取扱者の免許を受けていれば、大麻の栽培は「合法」だ。では、免許を持つ者が無免許者とともに栽培することは"違法"になるのか?大本総合法律事務所の佐川未央弁護士によると「指導に当たる者が大麻の研究者の免許を取得すれば足りると通知されているので、問題ないと考えられます」(昭和39年12月1日薬麻第420号各地区麻薬取締官事務所長 厚生省薬務局麻薬第一課長)という。気をつけるべき点は、「持ち帰らないようにすること」。無免許者はあくまで「免許を持つ者と一緒に栽培」することが許されており、持ち帰ってしまった時点で「大麻所持」に当てはまってしまう。なお、現代の罰則によると、大麻所持は「5年以下の懲役」、大麻栽培は「7年以下の懲役」、営利目的による所持は「7年以下の懲役に加えて、事情によっては200万円以下の罰金」、そして営利目的による栽培は「10年以下の懲役に加えて、事情によっては300万円以下の罰金」に処される場合がある。

 近年は「町おこし」「村おこし」と称し、一部の地域で産業用大麻の栽培講習会が開かれているが、大麻の栽培許可を受けていたにも関わらず、幻覚作用のある乾燥大麻を所持していた容疑で逮捕される事案が発生している。参加者の中にも逮捕者が出ており、大麻の摘発の増加を受けて厚生労働省は大麻取扱者の免許審査を厳しくしている。

大麻布にファッションブランドも注目、世界進出も?
 大麻の繊維は非常に繊細で、昔は手摘み・手織りで製造されていた。国内流通の減少は大麻取締法だけではなく紡績の難しさも影響していたが、「麻世妙」では現代のテクノロジーを活用し、大麻布の持つ独自の風合いを工場生産で実現。速乾性や清涼感に加えて、強靭さと柔らかさを兼ね備えた肌触りや保温性の高さを特徴としており、「ビズビム(visvim)」や「ネハン ミハラ ヤスヒロ(Nehanne MIHARA YASUHIRO)」といったファッションブランドとのコラボレーションも行なっている。来年2月にはテキスタイルの展示会「ミラノ ウニカ(Milano Unica)」に出展する予定。「海外ではリネンやラミーが主流だが、日本古来の素材である大麻で勝負をしたい」と意欲を示し、国内では麻への関心が高い人に限らず一般の層にも浸透させていきたいという。「『麻世妙』を出す時に"大麻"と言っていいものかどうか世間の反応を気にしましたが、別に間違ったことをやっている訳じゃない。"麻"ではなく"大麻"というカテゴリーで認知されるようになるのが、目標のひとつです」と考えを述べた。

「麻世妙(まよたえ)」公式サイト