「べっぴんさん」35話。時代はこれからベビーブームという周到

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第6週「笑顔をもう一度」第35回 11月11日(金)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出: 新田真三


35回はこんな話



ディスプレーのワンピースを着て入学式に向かった少女・美幸(松田苺)の姿を見て、良子(百田夏菜子)ももう一度、仕事をしようと決意する。

父母を亡くし祖父(芦屋小雁)に面倒を見てもらっている美幸がワンピースを着て、良子に髪をかわいく結ってもらって、笑顔になる。
ひとの心にひとつ光を灯すことができたすみれ(芳根京子)たちが、一度は壊れた4人組を復活させる流れには涙が出た。

なぜ、ベビー商品か


ベビー相談室の構想も具体化し、今度こそ今度こそ、すみれ、良子、君枝(土村芳)、明美(谷村美月)の4人そろってベビーショップあさやは本格始動する。

この店がオープンしたのは昭和21年3月。これは大変タイミングが良い。
戦争が終わって男性たちが帰って来て、日本が第一次ベビーブームを迎えるのが、昭和22年(1947年)から24年(1949年)にかけて。
厚生労働省の統計を見ると、昭和24年の出生数269万6638人で戦後最高となる。平成27年(2015年)の出生率は100万8000人で、5年ぶりに増加したとはいえ、66年前と比べたら半分以下だ。
それだけ子供が生まれたら、当然、赤ちゃん商品の需要は高まるわけで、すみれの時代を読む勘は冴えているといえよう。

とはいえ、すみれは育ちの良さゆえか、美幸にワンピースをあげてしまう(以前、明美がこんなに高価なものをディスプレーにしていると驚いていたが、飾るだけでなくあげてしまうのだ)。肌着も近所の主婦たちに気前よくあげている。その善行が後々生きてくるのだろう。ガツガツしちゃいかん。

夫婦をつなぐ時計


町で偶然出会ったすみれに、妻・良子の給金を手渡される夫・勝二(田中要次)。
そのお金で、以前良子にプレゼントしたものの貧しさゆえ売りに出されてしまった腕時計を買い戻しに行く。
時計店で出された時計のアップをはさんだ場面転換が巧い。
細工の繊細なこの腕時計を「一緒に時を刻んでほしいと思って渡したんや」と言って良子に渡す勝二。
「もういっぺん一緒に時を刻んでくれ」
時計のCMになりそうな名台詞だった。
時計にまつわるエピソードは、夫婦愛を描いた普遍的名作オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」を思い起こさせるような良い話。

4通りの人生を復習しておく


すみれ・・・おとなしいが芯は強い。裕福な家に生まれたが、戦争で父の会社も家も失くなる。夫は戦争に行ったまま帰ってこず、使用人と娘の3人暮らし。

良子・・・型紙づくりの才能がある。夫は15歳上で望まない結婚だったが、いまや良き夫婦関係を築いている。子供ひとり。みかんを煎じて風邪予防、お芋の蜜、どんぐりパンと戦後の節約生活を送っている。

君枝・・・デザイン画がうまい。この時代には珍しい恋愛結婚。住んでいた家は外国人に所有され、使用人の家だった建物に住んでいる。病弱。子供と姑と帰ってきた夫と4人暮らし。

明美・・・英語を学び、ベビーナースの仕事をして自立していたが、クビになってしまう。すみれの家の使用人だった母も亡くなっており天涯孤独の身。あさやの2階に居候中。
(木俣冬)