苦闘する途中入団の外国人選手11名。 チームの「救世主」候補はいるか?
昨年は12人の外国人選手が"途中入団"したが、チームやファンの期待に応えた選手はおらず、来日してすぐ日本の野球に適応することがいかに難しいのかがわかる。
たとえば、巨人のフアン・フランシスコ。来日当初はメジャー通算48本塁打の長打力が期待されたが、打っては三振の山を築き、守ってはとてもプロとは思えないような拙守を繰り返して、あっけなく二軍落ち。以降はもっぱら夕刊紙の"ネタ要員"として話題になるのみで、シーズンが深まる頃には存在すら忘れ去られていた。
今シーズンはここまで(7月2日現在)11人の外国人選手が途中入団。そのうち6人の選手が一軍でプレーしたが、成績を見れば苦戦を強いられていると言わざるを得ない。
途中入団した外国人選手の成績
投手
ガブリエル・ガルシア(巨人 )/一軍登板なし
コーディ・サターホワイト(阪神)/一軍登板なし
スティーブ・デラバー(広島)/一軍登板なし
レイソン・セプティモ(中日)/一軍登板なし
マイク・ザガースキー(DeNA)/14試合/1勝0敗/防御率2.35
フェリポ・ポーリーノ(西武)/2試合/0勝1敗/防御率1.64
野手
ハ・ジェフン(ヤクルト)8試合/打率.273/本塁打0/打点2
アブナー・アブレイユ(巨人)/一軍出場なし
ホセ・ガルシア(巨人)4試合/打率.000/本塁打0/打点0
エリアン・エレラ(DeNA)24試合/打率.239/本塁打0/打点8
マット・クラーク(オリックス)9試合/打率.130/本塁打2/打点3
※成績はすべて7月2日現在
そのなかでは比較的コンスタントにスタメンに名を連ねているDeNAのエリアン・エレーラ(内野手)は、6月1日の西武戦で来日初出場を果たした。5戦目となるロッテ戦で3安打を放ち"覚醒"を予感させたが、その後は大きな爆発はなく現在の打率は.239。ラミレス監督はエリアンについてこう語る。
「エリアンは日本の野球に適応しやすいと思います。イメージとしては、中日のナニータですね。ホームランはありませんが、今はうまくやれていると思います。多くの外国人選手はホームランを打とうとして苦しむことがあるけど、長打を打つことがすべてではありません。たとえば、ランナー2、3塁の場面では、ランナーを還すヒットでいいわけです。エリアンはそのことを理解して、そうしたバッティングをしてくれています」
その言葉通り、得点圏打率は.409を誇り、徐々に日本の野球に順応してきている印象はある。7月1日の広島戦では敗戦のきっかけとなるエラーを犯すなど浮き沈みはあるものの、2割台後半まで打率を上げていくことができれば、チームの初のクライマックス・シリーズ進出のキーマンになる可能性は大いにある。
巨人のホセ・ガルシア(外野手)は出場4試合、7打席無安打で二軍降格となった。まだ23歳と若く、即戦力というよりはじっくり日本で育てていこうということであればいいのだが......。
ヤクルトのハ・ジェフン(外野手)は、韓国の高校を経てメジャーに挑戦し、マイナーで7年間プレー。今年は四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスでプレーし、30試合で打率.364、6本塁打をマーク。その打力を買われて途中入団を果たした。
ジェフンは交流戦期間中の8試合に出場し、22打数6安打(打率.273)とまずまずの働きを見せたが、外国人枠の影響もあって、リーグ戦再開を前に二軍降格。身体能力が高く、年齢も26歳とまだ伸びしろはある。バレンティンは常にケガの不安がつきまとっており、この先、ジェフンに光があたるチャンスは十分にあるだろう。
西武のフェリペ・ポーリーノ(投手)は、来日初登板となった6月18日のヤクルト戦の試合前に強烈なインパクトを与えていた。なぜなら、練習が始まると、なぜか真っ先にティーバッティングを始めたからだ。田辺徳雄監督はその光景を眺め、「野手みたいなスイングだな」とひと言。
一方、肝心のピッチングは、最速153キロのストレートに、スライダー、チェンジアップを織り交ぜ、5回2失点(自責点0)と好投。勝ち投手の権利を得てマウンドを下りたが、チームは逆転負けを喫してしまった。試合後、クラブハウスへ続く通路のベンチに腰掛けたポーリーノは通訳が来るまでの間、顔を上げてはうつむき、何度も目をしばたかせていた。
「結果的にチームが負けてしまって残念なのですが、まずは一軍のマウンドに立ててよかった。野球をするということは、その環境でどう適応していくかということだと思っています。日本に来て3週間ほどファームでプレーし、日本の野球を少しずつ理解できるようになってきました。これからシーズンが進むにつれ、確実にいいピッチングができると思います」
ポーリーノは来日2戦目となった6月28日の日本ハム戦でも6回2失点と試合をつくったが、打線の援護なく初黒星を喫した。それでも防御率1.64と安定しており、先発のコマ不足に泣く西武投手陣にとっては心強い存在だ。今のピッチングを続けることができれば、いずれ勝ち星もついてくるだろう。
このほかにも、日本でプレー経験のあるマット・クラーク(オリックス/内野手)やマイク・ザガースキー(DeNA/投手)が出戻りで途中入団を果たしたが、目覚しい活躍をするまでにはいたっていない。
途中入団した外国人選手が活躍した例は、1987年のボブ・ホーナー(ヤクルト)、88年のラルフ・ブライアント(中日の二軍経由で近鉄に移籍)、89年のオレステス・デストラーデ(西武)、2013年のキラ・カアイフエ(広島)、14年のユリエスキ・グリエル(DeNA)、エルネスト・メヒア(西武)など、実際には数えるほどしかいない。だが、ここに挙げたような一部の選手たちのインパクトが強かったため、ファンはどうしても「救世主」のような助っ人の登場に期待してしまうのだ。
はたして、これから先、チームの起爆剤となるような選手は現れるのだろうか。外国人選手の獲得期限は7月31日。コーディー・サターホワイト(阪神)、スティーブ・デラバー(広島)のように、これから実力が明らかになる選手もいる。まだあきらめず、楽しみに待ちたい。
島村誠也●文 text by Shimamura Seiya