お酒はほどほどに(防衛医科大学校プレスリリースより)

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飲酒は「痛風」のリスクとして以前から知られていたが、お酒に強い遺伝子を持つ人は、弱い遺伝子を持つ人より痛風になりやすいとした、遺伝レベルでのリスク裏付けとなる研究結果を、防衛医科大学校の松尾洋孝講師と崎山真幸医官らの研究グループが発表した。

痛風」は、体内の尿酸値が高い状態が続き、結晶化して関節などに付着、「風が吹いても痛い」と言われるほどの激しい関節炎発作を引き起こす疾患。関節痛だけでなく、高血圧症や腎疾患、心疾患、脳血管障害などのリスクにもなることも明らかになっている。

発症リスクとして、食生活の欧米化や肥満といった環境要因が考えられていたが、同じような生活習慣にもかかわらず、痛風を発症する人としない人が存在し、遺伝的要因が指摘されていた。

松尾氏らは、人のすべての遺伝子を解析する「ゲノムワイド解析」を実施。痛風の発症に関係していると考えられる遺伝子配列を9つに絞り込み、痛風患者1048人と、痛風ではない1334人の遺伝子と比較している。

その結果、アルコールの代謝や分解に重要な役割を果たす「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」の機能を決定する遺伝子配列が、患者と患者でない人では異なることを確認した。

ALDH2がほとんど機能しない(お酒に弱い)遺伝配列の人は痛風を発症しにくいのに対し、ALDH2が機能する(お酒に強い)人は痛風の発症リスクは2倍以上高いという。

研究グループは、遺伝子配列を調べることで、痛風発症リスクが高い人を高精度で発見することができ、適切な予防や治療法を提供できるのではないかとコメントしている。発表は、2016年5月16日、英科学誌 Nature 系列のオープンアクセス科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

参考文献
Identification of rs671, a common variant of ALDH2, as a gout susceptibility locus.
DOI: 10.1038/srep25360 PMID:27181629

(Aging Style)