11年ぶりのプレミア挑戦となった14-15シーズンは、31節まで最下位に沈んでいたが、そこから怒涛の巻き返しを見せて「グレート・エスケープ(華麗なる脱出)」を完遂していた。 (C) Getty Images

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 4月3日のサウサンプトン戦を1-0でモノにしてリーグ4連勝を飾るなど、勢いは衰えるどころかむしろ加速しているのが、大躍進レスターだ。
 
 32節を終えて2位のトッテナムに勝点7差でプレミアリーグ首位に立ち、クラブ史上初のトップリーグ優勝へ邁進するサプライズチーム――。誰も予想できなかった奇跡の戴冠がいよいよ現実味を帯び、フットボールファンの期待は日増しに強まるばかりである。
 
 そんなレスターが“奇跡の軍団”と呼ばれる理由を6つのトピックから紹介しよう。
 
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【Topic 01】給与総額は下から4番目
 
 2015-16シーズンにおけるレスターの選手給与の総額は4820万ポンド(約82億円)。昨シーズンと比べて1160万ポンド(約20億円)の増額ながら、リーグ全体で見れば下から4番目の17位だ。チェルシー、マンチェスター・U、マンチェスター・C、アーセナルの4チームはほぼ2億ポンド(約340億円)前後と、実に4分の1以下。「給与総額とタレント力は比例する」というサッカー界の定説を考えれば、まさにミラクルだ。
 
【Topic 02】昇格2年目! 昨シーズンは奇跡の生還も
 
 11年ぶりにプレミア行きの切符を勝ち取り、今シーズンは昇格2年目。しかも昨シーズンはシーズン前半を終えて最下位に沈み、降格間違いなしと見られていた。
 
 ところがナイジェル・ピアソン前監督の下で堅守速攻を研ぎ澄ませ、終盤戦に猛反攻。14位で終える“奇跡の生還”を果たしたのだ。なお、昨シーズンはスカッド28名のうち21名がトップリーグ初挑戦だった。現主軸のジェイミー・ヴァーディーやリャド・マハレズ、ダニー・ドリンクウォーター、ウェズ・モーガンらが含まれる。
 
【Topic 03】プレシーズンの激震を乗り越えて
 
 続投確実だったピアソン監督が実息の不祥事を発端にフロントと衝突し、退任に追い込まれたのが昨年の6月末。後任人事はなかなか進まず、退団をほのめかす主軸がちらほらと現われた。
 
 クラウディオ・ラニエリ招聘が発表されたのは7月半ば。結果的に中盤の要だったエステバン・カンビアッソ(→オリンピアコス)が移籍を決断するなど、チームは空中分解寸前の危機的状態に陥っていた。
【Topic 04】優勝オッズ は5000倍!
 
 当然、開幕前の下馬評は低く、『ウィリアム・ヒル』社の優勝オッズはなんと5000倍(4月4日現在は1.33倍)。同社担当者によると購入者は12人おり、レスターが優勝すると200万ポンド(約3億4000万円)を配当しなければならないという。
 
 ラニエリ監督が就任時に掲げた目標は「勝点40」。プレミアの残留ラインとされる現実的な数字で、昨シーズンの「41」と同等の成績を目ざしていた(32節終了時点の勝点は69)。
 
【Topic 05】推定市場価格の平均値はマンチェスター・Cの4分の1
 
 チームの戦力値を図るうえでひとつの指標となるのが、選手たちの「推定市場価格」だ。この1人当たりの平均値を割り出すと、1位のマンチェスター・Cが2091万ユーロ(約30億円)なのに対し、レスターは552万ユーロ(約7億7000万円)とおよそ4分の1で、圧倒的な差をつけられている。
 
 それでも、昨シーズン終了時の値がわずか151万ユーロ(約2億1000万円)だったことを考えれば、飛躍的な進歩を遂げたと見るべきだろう。
 
【Topic 06】夏の補強費総額はデ・ブルイネ獲得資金の半額
 
 レスターが昨夏の補強に充てた総額3820万ユーロ(約54億円)は、リーグ全体で13番目の金額だ。トップのマンチェスター・Cは2億338万ユーロ(約327億円)を費やしており、しかもレスターが岡崎慎司やエンゴロ・カンテら6人の新戦力獲得に投じた総額は、ケビン・デ・ブルイネの移籍金(7400万ユーロ/約104億円)の半分でしかない。
 
※ワールドサッカーダイジェスト2016.03.17号より加筆・修正