ふなずし(「至誠庵」ウェブサイトより)

琵琶湖特産のふなずしをご存じだろうか。「食べたことない」という人は多いだろう。「ちょっと臭かった」という人もいるかもしれない。ふなを塩漬け、ご飯による本漬けなどを経て、自然発酵させ、熟成させた食品だ。いわゆる珍味として、食通に好まれている。

このふなずしの生産を応援するため、インターネット上で小口資金を募る「クラウドファンディング」が企画された。2016年3月18日、募集開始後、わずか2週間足らずで、目標額に到達し、話題となっている。

ふなずしとクラウドファンディングという不思議な組み合わせが、予想外の反響を呼んでいるようだ。

ファンド出資者に、ふなずしの切り身が贈られる


「ふなずし」切り身(「至誠庵」フェイスブックより)

資金を募ったのは、滋賀県大津市の「至誠庵」。石山寺山門前にある創業約50年の店だ。ファンドの運営はミュージックセキュリティーズが行い、同社のウェブサイト「セキュリテ」上で募集した。ファンドは1口2万円、募集額は462万円。出資者にはふなずしの切り身と湖魚のつくだ煮セットが贈られる。

Jタウンネット編集部は大津市の「至誠庵」に電話をして、話を聞いた。井上裕子社長が電話で答えてくれた。


「滋賀銀行石山支店の担当者に、店の将来の展望について話していたところ、『こんな方法もありますよ』と提案してくれたのが、クラウドファンディングだったのです」と井上社長は話す。「クラウドファンドのことは何も知らなくて、ずい分考えましたが、ようやく決心したのが去年の12月でした」。

3月23日、京都新聞電子版がファンド募集の記事(「ふなずし振興へファンド 滋賀銀支援、小口資金募る」)を伝え、Yahooニュースにも掲載された。

「新聞に載ってから、問い合わせがひんぱんに来るようになり、京都からわざわざ来られるお客さんも増えました」と井上さん。「ふなずし苦手やったけど、久しぶりに食べたら、おいしかったわ」とおっしゃるお客さんもいた。来店者は近県の人が多いが、なかには新潟県から来てくれた人もいたという。

クラウドファンドの目標金額達成については、まだ詳しい話を聞いていないので分からないと断りながら、「応援してくださる方が多いことに対して、本当に感謝しています」と語る。「ご期待に応えられるよう、決意を新たにしています」と抱負を述べた。

集まった資金は、原材料の「ニゴロブナ」を仕込む生産設備の増強や、新商品の開発費などに充てられる予定。