中国「完全なる共産主義」が生き続ける村、南街村
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毛沢東を描いた多彩な建物や、巨大なスターリン像。スピーカーからは愛国歌「東方紅」が鳴り響く大通りを女たちは踊り、子どもたちは行進する。
中国河南省にある南街村に立ち寄ると、こうした風景に出遭える。
南街村は、北京や上海といった都市部が資本主義化に走る一方で、中国最後の毛沢東主義を色濃く残す村だ。「南街村は、中国のほかの地域が経験した目がまわるような発展や近代化とは対照的な存在。根底にあるイデオロギーやそのヴィジュアル、すべてが逆なのです」と、写真家のティム・フェンビーは言う。
1970年代後半〜80年代初頭にかけておよそ3,000人が暮らしていた南街村は、中国におけるその他多くのコミュニティーの1つに過ぎなかった。当時、南街村の農家や事業家たちは中国政府から土地や工場を借り、一時は政府による経済改革の波に乗った。
しかし、南街村はすぐに毛沢東時代へと道を引き返した。多くの村民は、無料で電気や水道、教育、医療福祉などの提供を受けるため、自らその土地を手放した。そして、現代でさえ、石炭や食用油、キャンディそしてタバコまですべての生産物の配給を、共同体で管理している。
その南街村のことをラジオで初めて耳にしたというフェンビー氏は、現代中国におけるこの「自立的に歩むコミュニティー」である南街村に興味を抱いた。2015年3月に初めて南街村に訪れ、3日間滞在し、その間あちこちで「共産主義国家の管理経済」を垣間見たという。
旅行者が唯一宿泊できる南街村ホテルでは、幹部従業員が急ぎ足でドアを開け、フェンビー氏と少人数の中国人家族しか宿泊客がいないにもかかわらず、忙しそうに働いていた。「客がいようといまいと、彼らには彼らの仕事があるのです」とフェンビー氏は言う。
彼は、南街村の名所を巡るバスツアー(上記ギャラリー#11)にも参加した。
そのツアーでは乗客がフェンビー氏1人だったため、運転手はフェンビー氏が読めるよう、地図上の歴史的名所に英語を書き添え印をつけた。ビールや即席めんの工場、かの有名な中国共産党の遵義会議の開催地、複製された毛沢東の幼少期時代の家や延安塔…次々と通り過ぎていく場所をフェンビー氏は65mmレンズをつけたマミヤ7で撮影した。
幻想的で、平和すら感じさせる写真たち──そこには彼独特の視点で撮影された「小さな毛沢東テーマパーク」が捉えられている。
一見繁栄しているようにも思える南街村だが、2013年の学術調査研究(PDF)によると、実態は中国政府にかなり依存しているという。1980〜95年の間に南街村は1,000倍以上の経済発展を遂げ、その財源をもとに1,200万ドルもの立派な「温室」を建造した。その温室には、500種類以上の花や10,000種類以上もの植物があり、その植物に囲まれじっとこちらを見つめるカンガルーや恐竜などのシュールな動物の彫刻もある。
この風変わりな被写体たちの意味するもの、そしてこのオブジェクト自体が「南街村の象徴」である、とフェンビー氏は言う。「彫刻の動物たちはほとんど実物に近いけれど、ちょっと違う。南街村の存在のようにね。どちらもちょっとだけ、現実離れしているんだ」
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