西武・森友哉【写真:編集部】

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2016年は「マイナスからのスタート」覚悟、目標は「捕手としてクリーンアップ」

 西武・森友哉は再出発する。

「本職は捕手ですから、来年は、それに向けて準備したい。今年はやっていないから、マイナスからのスタートのつもりでやります」

 プロ2年目の今季は打率2割8分7厘、17本塁打、68打点の数字を残した。高卒の20歳シーズンとしては文句のつけようがない。だが、あくまでも打者専任としての成績。来季は捕手・森として、今年築き上げたベースラインに近づき、超えることが求められる。

 球審よりも低く沈み込むような構えから、あらゆる球にフルスイングを貫けるのが持ち味。強打者としての源流でもある。だが扇の要につけば肉体にのしかかる負担は、指名打者や交流戦から挑んだ右翼手と比べものにならない。

「捕手もやりながら、この打撃フォームを1年間貫くのは大変だと思う」

 1年間、捕手として出場することなく、打者として専念した森も“両立”が難しいことを自覚している。

 打者として一定の成功を収めた森が来季、捕手への道を再び歩むのには2つの理由がある。第一に挙げられるのはチーム事情だ。

「レギュラーで40歳近くまで正捕手で試合に出たい」

 森が指名打者を占めることにより、起用の選択肢が狭まる。田辺監督は「中村、メヒアを(コンディション的に)1年間守らせるわけにはいかない。DHを空けさせる上でも、捕手を守ってもらう」と説明する。

 中村はシーズン終盤に背中の痛みを訴え、打棒にも影響した。メヒアも巨体を生かした一塁送球に対する捕球はメリットもあるが、狭い守備範囲はデメリットも多い。

 第二に育成時間の猶予を確保できたことだ。

 正捕手の炭谷がFA権を行使せずに残留を決断し、2年契約を結んだ。貴重な「打てる捕手」の人材である森を中期的に育てる時間ができた。鈴木球団本部長は「来年は試合展開によっては右翼手から途中で捕手に入ることもある。実戦で経験を積みやすくなる」と今季は負担を考慮し、1度も行わなかった起用法の可能性を示している。

 即レギュラーは難しいポジションだ。時間をかけて天然素材を培養するしかない。球団として伝統的に高木大成や和田一浩ら捕手から外野手へのコンバート成功例はある。だが森友哉という逸材の能力を、打者という一面だけで終わらせるのは惜しすぎる。

「捕手としてクリーンアップで。ずっとレギュラーで40歳近くまで正捕手で試合に出たい」

 入団時に掲げた大志の実現へ、来年は本格的な門出の1年になる。