目玉選手に流されず… 過去5年ドラフトで“一本釣り”に成功した球団は?
迫る今年のドラフト、大石&斎藤に指名集中の2010年は2球団が一本釣りで“お買い得”選手獲得
2015年度新人選手選択会議(ドラフト会議)が22日に行われる。昨年は育成選手を含めると100名以上が指名を受けた同会議。今年もどのアマチュア球界のスター選手に指名が集まるのか、注目しているファンも多いだろう。
セを代表する投手となった阪神・藤浪晋太郎投手(大阪桐蔭)は4球団が競合。今季、楽天のクローザーとして33セーブ、防御率0.87の活躍を見せた松井裕樹投手(桐光学園)には5球団が競合し、交渉権を得る球団が決定した。ドラフトの主役だった選手たちは、日本を代表するプレイヤーとして活躍している場合も多い。
しかし、藤浪なら獲得できる確率は4分の1、松井なら5分の1と、スーパースターを獲得するためには、くじを外してしまうリスクも存在する。
一方で、リスクが低く、優れたプレイヤーを獲得することもドラフト戦略の1つ。そこで選択肢に入るのが、“一本釣り”と呼ばれる指名だ。数球団がリスクを犯してくじ引きに臨む中、競合選手を避けて確実に最初の指名で交渉権を得られる選手を狙う。
もちろん、リスクを避けるという目的だけではなく、プレイヤー自体の評価の差異や、補強ポイントなどもあり、結果的に“一本釣り“となっているケースも多いだろう。情報戦に勝利して、目玉選手の“一本釣り”を成功させるケースもある。しかし、それも含めて競合なしで欲しい選手を獲得するというのは“賢い買い物”と言えるのではないだろうか。
ここでは過去5年間で12球団の“一本釣り”指名選手と、入団後の現状をまとめてみたい。
2010年のドラフトは大石達也投手(早大→西武)に6球団、斎藤佑樹投手(早大→日本ハム)に4球団と最初の指名が重複した。この六大学の両スター投手を横目に、競合に参加しなかった2球団は“お買い得”の指名となった。
大野雄大(佛教大)は中日が一本釣り。3年目の2013年に初の2桁到達となる10勝(10敗)を挙げると、翌年も10勝(8敗)で防御率2.89。チームの左腕エースに駆け上がった。5年目の今季も11勝(10敗)で防御率2.52。シーズン中盤までセ・リーグの最多勝争いに絡む活躍を見せていた。
澤村拓一(中大)は巨人の守護神として今季36セーブ。防御率1.37と安定した成績を残した。入団1年目から2年間は先発として2年連続2桁勝利を挙げるなど、即戦力として実力を発揮。2013年から2年間は共に5勝止まりと苦しんだが、配置転換された今季に復活を遂げている。
指名が集まった大石は入団から2年間で61試合に登板するも、通算防御率は4.38とパッとせず。2006年の夏の甲子園優勝投手である斎藤も入団から2年間で計11勝を挙げたが、ここ3年間で3勝と結果を出せていない。
今季独走Vのソフトバンクのチーム最多勝右腕も一本釣り、投手3冠のあの右腕も…
目玉選手が少なく、1回目の指名では合計8つの競合があった2011年のドラフトは、“一本釣り”に出る球団も多く出た。
武田翔太投手(宮崎日大高)は高校時代に甲子園の出場経験はなく、3年夏は宮崎県予選の準々決勝で敗れている。しかし、この年、ソフトバンクが1位で指名すると、1年目から8勝(1敗)と結果を残し、今季は13勝(6敗)を挙げてチームのリーグ制覇に貢献。スカウトの鋭い眼力を感じさせる活躍だ。西武は十亀剣投手(JR東日本)が今季、自己最多の11勝(7敗)を挙げている。
広島は地元・広陵高校出身の野村祐輔投手(明大)を指名。1年目で9勝11敗、防御率1.98の好成績で新人王に輝くと、2年目も12勝(6敗)とローテーションで地位を確立した。2014年は7勝(8敗)、今季は5勝(8敗)と苦しんでいるが、即戦力として成績を残した投手といえるだろう。
阪神が指名した伊藤隼太外野手(慶大)は昨季52試合で打率.294と数字を出したが、今季は63試合で打率.252。来季こそは外野のレギュラーの一角を掴みたいところだ。
2012年は藤浪に4球団、東浜巨投手(亜大→ソフトバンク)が3球団、森雄大投手(東福岡高→楽天)に2球団が競合。この年、超大物選手が競合となっていない。
大谷翔平(花巻東高)は当時、高卒からメジャー挑戦を目指す意思を表明。日本ハムが単独で強行指名を行う形となった。右腕は結局、交渉によって入団を決意。今季、最多勝、最高勝率、最優秀防御率の3冠を達成し、球界を代表する投手に上り詰めた。
中日が指名した福谷浩司投手(慶大)は1年目は9試合の登板に留まったが、2年目の昨季はリーグ最多の72試合に登板し、32ホールド11セーブ。防御率も1.81でブルペンの柱として活躍した。今季は開幕から守護神を務め、19セーブ。シーズン中盤から打ち込まれることが増え、課題を残すシーズンとなったが、来季はシーズンを通してストッパーとしての活躍を期待したいところだ。
前の年に巨人入団を希望しながら抽選で日本ハムが交渉権を獲得し、入団を拒否して浪人していた菅野智之投手(東海大)は念願叶って巨人に単独指名されると、1年目から13勝(6敗)とエース級の働き。入団から3年間で35勝22敗と巨人のエースとして君臨している。
西武はここ2年間一本釣りに成功、今季球宴出場の2年目フルスインガーも…
2013年は松井裕に5球団、大瀬良大地投手(九州共立大→広島)に3球団、石川歩投手(東京ガス→ロッテ)に2球団が競合した。
そんな中、西武が森友哉捕手(大阪桐蔭)の一本釣りに成功している。高校日本代表で正捕手を務め、打撃でも高い評価を得ていたが、高卒入団2年目で球宴出場を果たすなど、138試合出場で17本塁打、打率.287。ここまで結果を残すことは各球団も予想していなかっただろうか。
オリックスは吉田一将投手(JR東日本)を指名。1年目は5勝6敗で防御率3.81。2年目の飛躍が期待された今季は1勝(5敗)で防御率5.27と期待に応えられなかった。
2014年は有原航平(早大→日本ハム)に4球団、安楽智大(済美高→楽天)に2球団が競合した。
中日は野村亮介投手(三菱日立PC横浜)を指名したが、今季は3試合に登板するも結果を残せず。大学No.1左腕と評判だった山崎福也投手(明大)はオリックスが一本釣りに成功したが、即戦力という期待には応えられず、今季は3勝(6敗)。2年目の飛躍が期待される。
ロッテの中村奨吾内野手(早大)も即戦力という評判でロッテ入り。4月30日には1番・サードで先発出場すると、プロ初アーチとなる先頭打者本塁打をマークした。今季は111試合出場、299打席ともにルーキーではトップの数字だった。
巨人は高校球界一のスラッガー・岡本和真内野手(智弁学園)を獲得した。今季は終盤に出場機会を得て、プロ初本塁打も放っている。ソフトバンクが指名した松本裕樹投手(盛岡大附高)は怪我の影響で今季、ファームでも登板がなかった。
西武が一本釣りした高橋光成投手(前橋育英高)は素質の高さを存分に発揮した。8月2日にプロ初登板を果たすと、同9日のオリックス戦から9月6日のロッテ戦まで5戦5勝。8月23日のロッテ戦では完封勝利を挙げるなど、8試合の先発で防御率は3.07。高卒1年目ながら1軍の舞台で輝きを放っていた。
ドラフトの会場で各球団は事前に1位で指名する選手を決めている場合も多いが、指名選手を提出する直前で重複を避けるため、ライバル球団の動きを見つつ、会場で指名選手を変えることもある。
理想はノーリスク&ハイリターン。競合というチャンスにかけるのか、それとも確実な策を選ぶのか。運命の22日、各球団の駆け引きに注目してみるのも面白いかもしれない。