斉藤 秀樹 / 株式会社アクションラーニングソリューションズ 一般社団法人日本チームビルディング協会

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◆リーダーが求心力となるための新たなツール
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「話をしてくれる上司と話を聴いてきれる上司」どちらの上司が好きですか?と聞けば、
大抵は話を聞いてくれる上司が選ばれます。これは真実です。
しかし、よく話す上司よりもよく聞く上司が少ないのも真実です。


様々なチームのミーティングに同席していると毎回感じることですが、一方的に
リーダーが話していることが多い。メンバーの数名は真剣に聞いているものの
他は上の空。

リーダーの様子を見る限り、この状況が日常のようです。


さて、求心力となるための新たなツールについてお話しします。

そのツールとは「質問」「傾聴」「助言」「応援」「支援」です。
ここに並べられたツール群の共通的な特徴を考えてみてください。何でしょうか。
それは、メンバーの考えを尊重しサポートするためのツールであることです。


求心力となるリーダーは指示、命令の代わりに「質問」と「傾聴」を多用します。
部下が迷った時、「○○しなさい」と指示するのはたやすいことですし、その方が
滞りなく仕事は進む可能性は高いと思います。

しかしこの関わり方の先には依存的で指示待ちの部下の姿が浮かびます。
あるいは、ここまで自分の考えで仕事に取り組んでいた部下が、上司の指示に従うことで、
一気に当事者意識が低下していきます。


チームは人が成長する器でなければなりません。
いかに成果のためとは言え、目先の成果にばかりこだわり成長できないマネジメントを
優先していたら、長い目で見れば人材力もチーム力も衰退する一方です。

もちろん、短期的な問題解決や成果達成にも対応しなければならない場合も多々あります。
そのためには指示命令も必要です。

しかし、これまでお話ししてきたように、そのツールが機能しない状況のままで使い
続けても、結局期待通りの成果は望めません。

リーダーが求心力になるということは、状況によってはメンバーがリーダーの意をくんで
指示命令であってもしっかり機能するようになるということも意味しています。


リーダーが求心力となるための最も重要なスタンスは「支配者」ではなく「支援者」に
なるということです。
支配者とは自分の目的や目標達成に相手を従わせるものです。
支援者とは相手の目的や目標達成を支援するものです。


「支援者」として部下が自力で解決策に気づく手伝いをするのです。
そのために「質問」「傾聴」はとても有効なツールです。


「したことは何ですか」(行動の確認)
「それによって得たい成果は何ですか」(ゴールの確認)
「それによって得られた成果は何ですか」(現状の確認)
「自分にとってその成果は満足できるものですか」(自己評価の確認)
「得たい成果にもう一歩近づくためにできることは何ですか」(改善行動の確認)
「どんな支援や情報があればその課題は解決できそうですか」(助言、支援の確認)
「私に協力、支援できることはありますか」(助言、支援の約束)


このように部下の頭が整理できるように質問をしていきます。
そしてしっかり傾聴します。

その過程で部下は冷静に問題を俯瞰できるようになっていきます。


『なるほど、自分はここに躓いていたのか』
『全体ではなく、一部の変更で解決できるかもしれない』
『不足しているのはこの知識(情報)なのか』


そして、進むべき道が見えてきます。
自分で気づき、行動すると決めたことは簡単にあきらめません。
しっかりとモチベーションを維持しながら取り組みます。

この関わりで重要なことは、自分が何らかの答えを持っていても無理に誘導したり、
押し付けたりしないということです。
誘導や押し付けはやらされ感を創り、メンバーのモチベーションや創造性を奪って
しまいます。


しかし、メンバーが知識や経験不足で自分で進むべき道を導き出せないこともあります。
そんな時は、「私にいくつかアイデアがあるのだけど、話しても良いですか」と提案を
してください。

「是非、お願いします!」メンバーは快く受け入れてくれるはずです。


このように相手のニーズを明らかにしたうえで答えることが本当の「助言」です。
相手の本当のニーズ(最もほしいもの)を見極めずに、ただ情報提供しても部下は
混乱するばかりです。


「分かりました。では、その方法で一度、試してみます。ありがとうございました!」
そして、応援。
「頑張れよ!私は○○さんが、成功するために全力でサポートするから。何かあれば何でも言ってくれ」

(しかし、その後、頑張ってみたが成果が思わしくない)

リーダーはチームの力を借りて支援体制を創ります。
「そうか、よく頑張っているね。それじゃあ、チームみんなの知恵を借りることに
しよう」

チームメンバーに○○さんの状況を説明し、メンバー全員から助言や支援、協力をして
もらいます。チームメンバーからの助言や支援の内容は特に問いません。

具体的な方法論を話すもの、手伝いを申し出るもの、「辛くなったら、ひと声かけてくれ。
飲みに行こう」など精神的なサポートを申し出るもの。
助言や支援は単に業務だけに限定されるものではなく、このように多様な助言や支援が
実力以上の成果を生み出すエネルギー源になるのです。

(次回、最終話へ続く)