転職が当たり前になったように移住が当たり前の世の中に!/小槻 博文
今でこそ“転職”は当たり前になったが、たかだか20年前、1990年代頃までは終身雇用が当たり前であり、転職する人は少数派だった。
それまでは一度企業に就職したら定年まで安泰という意識だったが、バブルがはじけたり、山一證券をはじめ大企業が倒産したり、リストラが次々に行われたりなど、世の中が目まぐるしく変わるにつれて、自分の人生は結局自分で守らないといけないという自衛意識や、自分の人生は自分で決めるといったキャリア意識が芽生えるようになり、今では転職が一つの選択肢として市民権を得るに至った。
翻って移住はまだまだ多くの人にとって選択肢になりえていないのが実情だ。とはいえ、東日本大震災をきっかけに、従来の経済的価値観から家族との時間・趣味の時間といった精神的価値観を大切にするようになったり、ITの普及により場所に囚われない働き方が可能になったりなど、少しずつ環境が変わってきており、現在は先駆的なアーリーアダプター層が移住を選択肢にし始めているといった段階だろうか。
今後この動きがマジョリティ層にまで広がっていくと、例えば20代は東京でバリバリ働き、結婚して子どもが生まれたら子育て環境を求めて自然豊かな田舎へ移住。その後子どもが巣立って夫婦だけに戻ったら、老後は都会と田舎の中間の地方都市へ移住する。そんなライフステージにあわせて住むところを変えるのも当たり前になるかもしれない。
昔は新卒から定年まで永続勤務が当たり前だったのが、今ではキャリアプランにあわせて企業を渡り歩くのが当たり前になったように、移住もライフステージにあわせて最適な環境へ移住するのが当たり前に。きっとそんな世の中になれば、人口の再分配・流動化が進み、疲弊した地方は元気を取り戻し、過密化した東京は正常に戻り、そして日本全体が今よりもっと健全な国になることだろう。