松山工「一瞬を突く走塁」で松山西の健闘を制す7回裏松山工業無死一塁からの補邪飛にタッチアップして二塁に進んだ4番・杉本 大海(三塁手・2年)

 この試合、まず取り上げたいのは松山西の4番・エース・主将の木室 豪太(2年・181センチ83キロ・右投左打・愛媛県立松山西中等教育学校初等部出身)である。努力の跡が見える重厚な下半身を十二分に使っての体重移動から放たれる重いストレートは、35年ぶりに夏の愛媛大会ベスト8入りしたメンバーが数多く残る松山工打線を翻弄する威力を有していた。

 最後は1対1の9回裏一死から7番・吉本 凌祐(2年・遊撃手・右投右打・172センチ80キロ・えひめリトルシニア出身)に左越三塁打を喫し、初回の失点のみで粘り強く投げたエース・田内 龍成(2年・左投左打・163センチ58キロ・松山坊っちゃんボーイズ出身)の左犠飛で力尽きる形になったが、健闘は十分賞賛に値する。木室投手にはこの悔しさをバネにさらなる研鑽を積み、ぜひ春には県内屈指の本格派右腕として表舞台に帰ってきてほしい。

 それでも松山工が勝ちを取れた理由とは?最大のかぎは同点に追い付いた7回裏にある。先頭の4番・杉本 大海(2年・三塁手・172センチ64キロ・右投右打・松山市立内宮中出身)が敵失で出塁すると、次打者は送りバント。が、バントは捕手後ろへ小フライとなった。ダイビングキャッチ。その瞬間、タッチアップから杉本は脱兎のごとく二塁へ走り、間一髪セーフ。

「準備はしていましたけど、よく走ってくれました」と策士・皿海 拓生監督も絶賛する杉本の果敢な走塁は、6番・貞廣 竜宇(1年・一塁手・左投左打・172センチ67キロ・松山リトルシニア出身)の中前同点打で明確な結果となった。

 筆者の取材してきた愛媛県の高校野球公式戦では長らく記憶にない「一瞬を突く走塁」。松山工がこの日、勝利に結び付けた1つのプレーは他校にとっても十分、参考や指針にすべき事例であろう。

(文=寺下 友徳)

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