高橋純、小澤、黒瀬など甲子園に届かなかった有力選手たちの最後の夏

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 甲子園に行けるのは49校のみで、負ける学校が圧倒的に多い。今年も有力選手として注目されながらも地方大会で敗れた球児が多くいる。そんな球児たちの夏を振り返っていきたい。

万全だったら...あまりにも悔しい高橋 純平の夏の幕切れ

高橋 純平(県立岐阜商)

 球児たちにとってあまりにも悔しいのはケガで出場できずに終えることだろう。確かに試合に出場すれば、打たれるときもある。野手であれば、打てない時もある。エラーもある。そして負けもある。しかしそれよりも、何もできないことの方が悔いが残るだろう。高校生ナンバーワン右腕の高橋 純平のラストサマーはとても悔しさが残るものであった。

 選抜前のインタビュー(前編・後編)では、夏では勝ちにこだわりたいと語ってくれた高橋 純平。選抜ベスト8に進出し、最後の夏ではどんな投球を見せるか、誰もが楽しみにしていた。しかしそんな高橋にアクシデントが起こる。肉離れを起こしてしまったのだ。高橋はベンチで声を出して、チームを鼓舞する役割。責任感がかなり強い性格である。マウンドに登れないのは非常に悔しい思いがあっただろう。夏の登板は準々決勝の中京戦のみだった。

 だが、裏を返せば、大きな致命傷を負うことなく、次のステージを迎えるのだ。最後の夏に多少の無理をしてでもプレーする球児も多い。それも間違っていないだろう。それでも、高橋の将来性を高く評価している小川 信和監督がかなり気を遣って起用していたのだ。高橋をつぶしてはならない。そんな思いが感じられた。

 この悔しさは次のステージで晴らすしかない。もし8月に開催されるU-18のメンバーに選出されることがあれば、ぜひその舞台で、万全な状態でのピッチングに期待したい。

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小澤 怜史(日大三島)

 高橋 純平以外の選手にも注目してみる。、日大三島の小澤 怜史(2015年インタビュー【前編】 【後編】)は、秋2度負けている静岡を破るために取り組んできたこの半年間。この夏は2回戦で静岡と再戦。自己最速の152キロを計測するものの、打ち込まれ、リベンジは果たせなかった。だが静岡の存在が、小澤にとって大きなモチベーションとなったことは間違いない。次の舞台で恵まれた素質を開花させることができるかに注目したい。

 4季連続の甲子園出場に期待がかかった龍谷大平安は4回戦で敗れ、出場はならなかった。エースの高橋 奎二が、最後は打ち込まれた。高橋は練習試合で打球を左わき腹に受け負傷。実戦登板から遠ざかり、なかなか調子が上がらずに夏を終えた。独特の足上げから投げ込む球威ある直球は見応えがあり、変化球も多彩でしっかりとまとめる投球術もある投手であったが、完全燃焼できなかった分、次のステージで悔しさを晴らしてもらいたい。

 そして今年のドラフト上位候補と注目された大分商の森下 暢仁。細身だが、バネの強さ、しなやかさを生かしたフォームはまるで岸 孝之(埼玉西武ライオンズ)(2013年インタビュー)を彷彿とさせる。そこから投げ込むスピンがかかった140キロ中盤の快速球、キレのある変化球、コーナー自在に投げ分ける制球力の高さ、純朴な雰囲気が岸とダブるところがあった。惜しくも明豊に0対1で敗れたが、高い将来性を感じさせた。

 多くのファンに印象を残したといえば、普天間の與那原 大剛だろう。190センチの長身から振り下ろす最速148キロのストレートが武器の大型右腕だが、初戦の八重山商工戦では再試合に及ぶ熱戦となり(試合レポート)、再試合では完封。さらに2回戦の前原戦でも延長13回完投しサヨナラ勝ちを呼び込んだ。準々決勝で敗れたが、その力投には多くのファンの心を動かした。

 またプロ注目投手では、杉山 晃基(盛岡大附)、内村 悠斗(取手松陽)、宮城 正規(我孫子東)、茶谷 健太(帝京三)、望月 惇志(横浜創学館)、勝野 昌慶(土岐商)、山田 大樹(菰野) 、永谷 暢章(履正社)、中村 晨(ルーテル学院)といった140キロを超える大型右腕が続々と敗退。改めてこの夏の戦いの厳しさを感じさせた。

 プロ注目投手ではないが、選抜準優勝投手の大澤 志意也(東海大四)、選抜ベスト4左腕の江口 奨理(浦和学院)、田中 誠也(大阪桐蔭)といった実績十分な好投手たちも敗れ、甲子園に行くことは叶わなかった。

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[page_break:黒瀬、勝俣など有力野手たちの夏]黒瀬、勝俣など有力野手たちの夏

黒瀬 健太(初芝橋本)

 野手で大きく注目されたのは高校通算95本塁打の黒瀬 健太(2015年インタビュー)だろう。圧倒的な長打力、人懐っこい人柄で多くの人を惹きつけるものがあり、この夏の注目度が非常に高かった。しかし重圧があったのか、2戦で6打数0安打と不発に終わった。本人にとってはかなり悔しい結果に終わった。彼の長打力を評価し、練習の様子を見ているスカウトの存在もあった。多大な注目を集める中で結果を残すのは、次のステージで活躍するためにも避けて通れないこと。ぜひその課題を乗り越えてほしい。

 昨夏の甲子園の明徳義塾戦(試合レポート)で本塁打を放った廣岡 大志(智辯学園)(2015年インタビュー)。この夏は主将としてチームを引っ張ったが、2回戦で天理に敗れた。だがダイナミックな動き、スイングスピードの速さが光る打撃は健在で、この試合では最終打席で安打、さらに盗塁を決めるなど敗れても何か印象を残す活躍を見せた。 それはこの夏だけではなく、下級生の時からどの試合でも結果を残し、そして勝ちたいという気持ちが見えるプレーを披露している。大舞台でも動じないメンタリティの強さは次のステージでも生かされることだろう。2回戦で終わるのがあまりにも勿体ない選手であった。

 そして春夏連続出場がかかった勝俣 翔貴(東海大菅生)(2015年インタビュー)は、決勝戦で早稲田実業に逆転負けを許した。準々決勝の国士舘戦で本塁打を放っていたが、再びその強打を全国で見せることはかなわなかった。全国レベルの強打者なだけにプロ志望すれば、今秋のドラフト会議では候補として名が挙がっていくだろう。

 昨年、甲子園で2本塁打を放った強打の二塁手・遠藤 真(盛岡大附)も甲子園出場を逃した。そして守備力ならば今年の高校生を代表する遊撃手・檜村 篤史(木更津総合)(2015年インタビュー【前編】 【後編】)は準決勝で敗れたとはいえ、春以降から取り組んできた右打ちをしっかりと実践。また投手に声をかけたり、チームメイトを鼓舞するなど、精神的に成長した姿を見せていた。また兵庫屈指の大型打者・成田 尚輝(三田西陵)も神港学園に敗れたが、自慢の強打を見せた。フェンスが広い球場でも本塁打を打てる打者。そのパワーを次の舞台でも発揮してほしい。

 2年連続の甲子園出場に期待がかかった神戸国際大附の主力選手・竹村 陸(2015年インタビュー)は勝負強い男になろうと取り組んできた1年間だった。この夏は投打で活躍。ベスト4に終わったが、昨年よりも成長を見せた。

 ちなみに番外編として、独特のパフォーマンスで動画から全米でも話題になった滑川総合の馬場 優治選手。あの姿を見て彼は野球はチームスポーツであることをしっかりと理解した選手だと感じた。まずあのバット捌きは、とても関節が柔軟でなければできないパフォーマンス。何より代打としてチームを勢いづけるためには何ができるかを考えたパフォーマンスであり、実際に4回戦では春日部東に逆転勝ちするきっかけを作っている。彼だけではなく、チームを勢いづける役割に徹する球児は多くいる。そんな球児たちのプレーも見逃せない。

 甲子園に行けなかった悔しさはあれど、多くの選手がプレー面で昨年より成長した姿を見せた。ぜひ多くの選手が次のステージでも活躍することを期待したい。

(文=河嶋 宗一)

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