新天地マインツで武藤は何を求められているのか。シュミット監督のサッカーにフィットするのか。克服すべき課題は? ドイツ・サッカーに精通したエキスパートが探る。 (C) Getty Images

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 マインツに移籍した武藤嘉紀のチャレンジが、ついに始まった。
 
 プレミアリーグのレスターに去ったエースストライカー、岡崎慎司の代役として期待するファンの声もあるが、チームはあくまでもサイドプレーヤーとしての武藤を評価している。
 
 実際、マルティン・シュミット監督は武藤についてこう語る。
 
「時間をかけて視察を繰り返し、彼のプレーは我々のサッカーに合うと確信した。スピードがあり、俊敏で高い技術を持っている。大きな可能性を秘めた選手だ。我々に欠けていたサイドの位置で探していた選手だ」
 
 躍動感とスピード感にあふれ、攻守に積極的に仕掛けていくサッカーを志向するシュミット監督にとって、サイドアタッカーは生命線。しかし、昨シーズンはその肝心のポジションに適材が見当たらなかった。
 
 韓国代表のク・ジャチョル、アルゼンチン出身のパブロ・デ・ブラシス、スペインU-21代表のハイロ・サンペリオが主に4-2-3-1の両翼を担ったが、いずれもパスを足下に収めてから仕掛けるタイプで、ボールをスペースに引き出してゴールチャンスを作り出す動きに物足りなさがあった。
 
 トップ下のユヌス・マッリ、ボランチのヨハネス・ガイスやユリアン・バウムガルトリンガーが前を向いてボールを持っても、うまくサイドに起点を作れず、攻撃をスピードアップさせられないという課題を抱えていた。
 
 武藤とともに、元ドイツU-21代表のスピードスター、マキシミリアン・バイスターを獲得(ハンブルクから)したことからも、クラブがサイドを重要な補強ポイントと考えていた事実が分かるだろう。
 
 武藤は1対1での突破力に加え、タイミングのいいスペースへの飛び出し、さらにゴール前に抜け出して決めきるゴールセンスを備えている。まさにシュミット監督の要求を満たすタレントと言えるだろう。
 では、武藤は初挑戦のブンデスリーガで本領を発揮できるのだろうか。
 
「ヤー(イエス)」と答えるのは、日本人プレーヤーをよく知るピエール・リトバルスキーだ。
 
 90年イタリア・ワールドカップの優勝メンバーで、現在はヴォルフスブルクのスカウト長を務めるリトバルスキーは、『キッカー』誌のインタビューで、
「ムトウはドリブルが得意で、いいスピードを持っている。マインツというチームに合うだろう」
 と語り、ブンデスリーガの水準に達していると太鼓判を押した。
 
『キッカー』誌は、「戦術、フィジカルの両面をさらに伸ばす必要があるが、2011年にバイエルンに移籍した宇佐美貴史のケースとは違い、マインツでは実戦経験を積みながら成長する時間が与えられるはずだ」との見解を示している。
 
 レギュラーとして起用されるかどうかは、『キッカー』が指摘するように、戦術理解とフィジカルが間違いなくポイントとなるだろう。
 
 激しい当たりが特徴のブンデスリーガでは、サイドプレーヤーにも守備への貢献が必要不可欠だ。自陣から敵陣深くまでスプリントを繰り返し、積極的にプレスを仕掛けなければならない。
 
 しかも、相手のボール保持者に身体をぶつけ、ボールを奪いにいくことも求められる。そうした「ノルマ」をクリアしたうえで、みずからの持ち味を発揮しなければならないのだ。
 
 ヘルタ・ベルリンの原口元気も、1年目の昨シーズンはこの点に戸惑い、終盤までなかなか出場機会を得ることができなかった。
 シュミット監督は今シーズンのサッカーについて、「すべてを変えたりはしない。ほとんどのオートマティズムは残しておく」と明言している。それを一から覚えなくてはならない武藤は、ポジション争いで小さくないハンデを抱えていることになる。