米国プロバスケットボール・リーグ(NBA)のシカゴ・ブルズにデニス・ロッドマンという人気選手がいた。マイケル・ジョーダンと一緒にプレーをした彼は、身体中にタトゥー(刺青)を入れ、試合のたびに髪の毛をグリーンやブロンドに染めた。普段はたくさんの鼻ピアスをつけ、高価なリングやブレスレットで身を飾りつけるNBAの問題児だった。

 黙っていても女の子は寄ってくるし、お金はありあまるほどある。あるテレビ局のトーク番組では、椅子にふんぞり返りながらこう言った。「マネー・イズ・パワー、パワー・イズ・マネー!」

 所変わって日本では、「世の中に金で買えないものなんて、あるわけない」と放言したといわれるホリエモンに向かって、「金さえあればいいってもんじゃない」と旧勢力の権化ナベツネが切返したと話題になった。

 紀元前の中国にはこんな話がある。夫の出世を願い「今より少しばかりいい暮らしができますように」と妻が祈った。夫が不思議に思って「どうして、『少しばかり』なのか」と聞いたところ、妻はこう答えたという。「おカネに余裕ができると、他の殿方と同じようにあなたも外に女を囲いますでしょう」。

 伊藤肇氏は著書『帝王学は人間学』のなかで、人物を洞察する際には「富ミテハ其ノ与ヘル所ヲ視ル」という言葉を紹介している。大金を手にしたとき、それを何に使うかを見るとその人物が手に取るようにわかるという意味だ。経営の神様と呼ばれた故松下幸之助翁も「カネの使い方くらい難しいものはない。なぜなら、人格がそっくりそのまま反映するからだ」と話していたという。

 カネがあるに越したことはない。しかし、カネがあってもできないこともある。映画「ライム・ライト」の中で、失意の底にある踊り子テリーにむかって、チャプリン扮する道化師のカルベロが声をかける。

 「人生に必要なのは、勇気と夢とサムマネー(a little dollar)」【了】