キスは免疫を高めるって知ってた?

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愛情表現としてもっともポピュラーなキス。信頼やぬくもりを伝える心理的作用だけでなく、女性の免疫力を高めるための大事な役割を果たしているのだ。

■人体は菌の天国!

人間の身体は微生物に満たされ、成人の場合は100種類以上がともに暮らしている。それらは常在(じょうざい)菌と呼ばれ、ビフィズス菌のように腸の働きを整える善玉菌もあれば、ニキビの原因となるアクネ菌なども存在する。

おもな常在菌の種類とおよその数を挙げると、

○口の中(100億)

 ・ミュータンス菌

 ・カンジタ菌

○顔/皮膚(1兆)

 ・アクネ菌

 ・マラセチア菌

○腸内(100兆)

 ・腸球菌

 ・乳酸菌

 ・大腸菌

といった具合で、人間の細胞はおよそ60兆個なので、どちらが主体か分からない量だ。

口の中では、虫歯を引き起こすミュータンス菌や、唇や舌に白いコケのようなものが広まるカンジタ症の原因となるカンジタ菌が100億近くも存在し、ハミガキやマウス・ウォッシュでは完全に取り除くことはできない。

その状態でキスすれば、互いの菌をだ液を通じて交換し合うに等しい。つまり、キスは相手を感染させる行為なのだ。

何やら物騒に聞こえるだろうが、相手に菌を与える行為は決して悪いことばかりではない。予防接種はまさにこの原理で、少量の菌を体内に入れることから始まる。

当然、少なからず具合が悪くなるのだが、それを乗り越える際に抗体が作られ、次からは感染しにくくなるという仕組みだ。

キスはワクチン。愛は地球を救う。

ただし、赤ちゃんにキスしたり、口うつしで食べさせるのは御法度だ。免疫力の弱い赤ちゃんは母親の常在菌でさえ大病につながる。自分が使ったスプーンで食べさせる「関節キス」も厳禁だ。また、母親に虫歯があるとミュータンス菌が伝染し、子供が虫歯になる率は2倍以上に跳ね上がるというデータもあるほどだから注意しよう。

これは妊娠中の女性も同じで、抗体を持たない菌を取り込むと重大な結果をもたらす場合がある。ただし、妊娠してから初キスでは計算が合わない。同じパートナー(!)であれば、妊娠する前に免疫ができているからご安心を。

■砂場が子供を救う?

幼稚園や学校に砂場があるのはなぜか?自然との触れ合い、創造力など多くの要素があるだろうが、菌を取り込み、免疫を高めるのには絶好の場と言えるだろう。

昨今ではイヌ/ネコのフンによる回虫卵、病原性大腸菌など、有害な要素を正確に知ることができるので、明らかに異常な砂場は避けるべきだろう。

しかしながら、標準的な砂場であれば、遊び終わった後の手洗いさえ怠らなければ大事に至らず、雑菌と呼ばれる一般細菌と触れ合うのに良い機会とする説も強い。

逆に、清掃の行き届かないトイレの蛇口から、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が検出された例もあるほどだから、砂場は汚い、は少々短絡的と言えよう。

免疫力の強化は、菌の侵入なしでは始まらない。つまり、多少なりとも具合が悪くなる局面があってこそ、以降の防御能力につながる。

無菌栽培とは言い得て妙で、病気や感染症に過敏になるあまり菌に触れないよう育てると、免疫力も育たない。多少雑な環境で、痛いメに会いながらの方が強い子に育つようだ。

■まとめ

免疫力は20代がピークで、それ以降は年齢とともに下がる一方だから、子供のころの「菌の取り入れ方」が、一生の免疫力を大きく左右と言えるだろう。

ただし、虫歯をうつしてもメリットはないので、子作り前の治療をお勧めする。

(関口 寿/ガリレオワークス)