フランスの鉄道会社SNCFのブログ「LE BLOG DE LA LIGNE L」が、駅で遭遇した感動的な話を募るコンクールの結果、日本人観光客に関する話が賞を獲得したと紹介した。

 同コンクール「アンサンブル・オ・コティディアン」では、昨年末までに、フランス国内で駅員による対応や相談、指導などで、特に感動した話を募集したもので、受賞者には50ユーロ相当のプレゼントが用意されていた。駅員の参加も認められており、最優秀賞を受賞した駅員がテーマに選んだのは、パリ郊外の駅で完全に迷ってしまい、フランス語も英語も話せなかった日本人観光客の話だった。

 ある晩、ひとりの女性観光客が電車から降りてきて、困惑した状態で駅員の方に向ってきた。アジア人のようだったが、彼女には英語もフランス語も通じなかった。駅員は住所を教えてくれるようにと、紙を取り出して家の絵を書いた。すると女性は、世界地図を書き、日本から来たことを駅員に伝えた。次に日本人女性は日本人の友人に電話をかけ、駅員と話すように頼んだが、その日本人とも英語もフランス語も通じなかった。

 パリ行きの最終電車の時間が迫っており、駅員は日本人女性がパリ郊外に置いてきぼりになっては大変だと、とにかく焦りを感じ始めた。警察に電話をしようか迷ったが、この女性を怖がらせてしまうに違いないと思い、とどまった。

 そこで駅員は、自分の携帯でイエローページから日本料理レストランを検索し、日本語とフランス語が話せる人を見つけようとした。電話をかけつづけたが、周辺の日本料理レストランのほとんどが中国人経営だったという。しかし、あきらめずに電話をかけ続けると、ついに日本人の経営するレストランにつながった。

 駅員は、レストランで働く日本人に、日本人観光客にパリ行きの最終電車に乗るように伝えてほしいと依頼した。日本人同士の長い会話が終わるのを傍らで待っていると、ついに駅員の言いたいことが伝わったようだった。

 駅員が驚いたことに、レストランの日本人は、その日本人観光客がパリ市内の駅に到着したら電話をするようにと、自分の電話番号を教え、またパリ市内の駅まで迎えに行って、ホテルまで送ると約束をしたという。駅員は、23時に職場での長い電話をした末に、見も知らぬ人のために自分の仕事場から相当に離れたパリ市内の駅までわざわざ移動するという、日本人の団結力に驚かされたと記述した。

 この話を通して、フランス人の駅員の機転と必死さがうかがえ、その優しい一面が垣間みられる。同時に、島国の単一民族だからだろうか、国を変えても存続する日本人の団結力の強さに誇りも感じられる。もっとも、言葉が分からない国で移動する際は、親切な人ばかりではないので、迷った時のためにホテルの電話番号や住所は、最低限持ち歩くようにしたい。(編集担当:下田真央・山口幸治)