◆コナミ日本シリーズ2012第3戦 日本ハム7―3巨人(30日・札幌ドーム) 最初にお断りしておくが、私は日本シリーズ全戦の現場取材は79年の一度しかない。3勝3敗の第7戦、1点差の9回裏無死満塁のピンチを鮮やかに封じ込んだ“江夏の21球”で知られる広島・近鉄の激突である。

 そのシリーズで、ラストシーン以上に鮮明に覚えている出来事がある。それは8年後に当時の米大リーグ記録を塗り替えた連続試合出場記録(最終的に2215)が評価されて、史上6人目の国民栄誉賞を受賞する衣笠祥雄選手を古葉竹識監督が外したことだ。

 公式戦1175試合まで連続出場を伸ばし、チーム3位の20本塁打を放った衣笠は、1、2戦とも「2番・三塁」で出場したが8打数ノーヒット。第2戦には、送りバント失敗に加え、失策も犯していた。連敗スタートに業を煮やした古葉監督は、本拠・広島に戻った第3戦から、三村敏之を二塁から三塁に回し、二塁に木下富雄、山崎隆造を据えると3連勝で王手を掛けた。衣笠は3、4戦は終盤守備固めだけ。第4戦終了後には、150本もの特打ちをして首脳陣にアピールしたが、何と最後まで出番なし。「(敵地の)大阪ではきっとチャンスがある。その時は一生懸命やりますよ」と悔しそうにつぶやいていた。

 第6戦も先発を外れたが、チームが敗れて逆王手をかけられた古葉監督は、最終戦に5試合ぶりにベテランを2番に起用。1回に先制タイムリーを放つと、3回にも安打を放って得点。この試合、決勝点は6回に出た水沼四郎の2ランだったが、衣笠の復活2安打も勝利に大きく貢献。地元での屈辱を最終戦で晴らした。

 主軸を外すという古葉監督の“バクチ”は、流れを呼び込むことに一度は成功。しかし、最後はベテランの奮起がシリーズを制する要因だった。

 1999年、広島と同じようにワールドシリーズで連敗スタートのブレーブスを、現地で見る機会があった。その際、ブ軍のボビー・コックス監督はポジションによっては公式戦同様にツープラトン起用ながら、主軸選手を使い続け、4連敗でヤンキースに敗れた。

 巨人のホームの東京Dで連敗スタートした日本ハム。栗山英樹監督が古葉監督のような荒療治をするのか、それとも普段着野球で巻き返しを図るのか、注目だ。