栄冠は埼玉県代表の新座片山FC少年団 16年ぶり2度目の優勝を果たす

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 8月3日(土)、静岡県沼津市・愛鷹広域公園多目的競技場にて「第36回全日本少年サッカー大会 決勝大会」の決勝があり、埼玉県代表・新座片山FC少年団(以下、新座片山)が千葉県代表・柏レイソルU−12(以下、柏)を3−1で破り優勝を果たした。

 「うちはセレクションをしていない町クラブ。特に優秀な選手がいるわけでもない。Jリーグの下部組織や強豪クラブに勝つためには走り抜くしかない」と新座片山は持ち前のハードワークで勝負を挑んだ。

 全員が丸刈り頭の新座片山。「精神的に"超"が付くほど弱い選手が多い」というが、ピッチ上では"超たくましい"選手が多い。

 ひとりで勝てないのなら、2人、3人で圧力をかけて、みんなで守る。柏のワンタッチ、ツータッチでの小気味よいパス回し、圧倒的に優れた個の技術を防ぐ手段は、これしかなかった。ボールを奪っては、前線に大きくフィードし力の限り走り続けた。だが、そのキック・アンド・ラッシュのスタイルにしても、前線で待ち受けるツートップの17番・寺山翼くんと21番・竹谷和樹くんが"止める・運ぶ・蹴る"の基礎技術をしっかりと身につけているからこそ成し得るもの。

 そして、新座片山の大きな武器がセットプレー。前半6分の先制点にもつながった30番・長谷玲央くんのロングスローだ。「他のチームではあまりやらないことなので対策されていない。だから自分たちの大きな武器になる」と新座片山が伝統的に取り組んでいるピッチ中央付近まで投げ込むことのできるスローインは、コーナーキック同様の威力を発揮する。ゴールエリア内で待ち構える6番・佐藤輝くんが頭で流したボールを寺山くんがヘディングで決めた。

 先制してからも新座片山に気の緩みはなかった。柏が準決勝の神奈川県代表・バディーSC戦で観客を魅了した両サイドのスペースを突破してからの、えぐるように中央へと鋭く切れ込むドリブルを封鎖。柏のエースストライカー10番・森海渡くんに対しては、5番・宝田来希くんを中心とした守備陣がふんばり、アタッキングサードには立ち入らせなかった。

 守備陣のふんばりに攻撃陣も応えた。待望の追加点は19分、寺山くんの放った豪快なミドルシュート。ボールは柏のゴールマウスへと吸い込まれていった。

 後半になって柏は、準決勝でも1得点をあげているフォワードの11番・太田和隆斗くんをベンチに下げ、9番・窪田亮輔くんを投入。サイドからの突破を試みると、7分に10番・森海渡くんが枚数の揃っている新座片山の守備陣形を個人技で攻略し1点差と迫る。

 だが、柏の反撃もそこまで。「この試合ではプレスをかけることと、相手のパスをカットすることを心がけていました。何本かスルーパスを通されて危ないところもあって、完全に抑えられたわけではないけれど、がんばれたと思います」と新座片山のディフェンダー陣は胸を張る。14分には、その守備陣の一角でもある30番・長谷玲央くんがミドルシュートを決め3−1とし、そのまま逃げ切ることに成功。16年ぶりとなる優勝を決めた。

 「試合終了の笛が鳴って、優勝が決まったとき、意外と子どもたちはケロッとしていましたよ。ただ、それは何が起こったのかわかっていなかったようで、ベンチに戻ってきて、涙を流している監督に抱きしめられたときに、はじめてことの重大さに気がついたようでした」と笑う新座片山・川原嘉雄代表。

 すっかり有名になった新座片山・鈴木慎一監督の"鬼"と書かれた紫のシャツと激しい指導スタイル。体育の教師だったこともあり、子どもたちには、今大会の遠征に夏休みの宿題を持参させ、文武両道を求めてきた。遊び盛りの子どもたちにとっては、辛い環境かもしれないが「楽をして得たものには薄っぺらな価値しかない。困難を乗り越えて得たものにこそ本当の価値がある」と新座片山の指導信念には揺るぎがない。