ジョー・バイデン米副大統領が現地時間で18日、サンフランシスコでの政治集会で、自らの失言で有権者からブーイングを浴びる事態に陥った。

　バイデン副大統領は、「（アメリカンフットボールのＮＦＬのチャンピオンシップである）スーパーボウルには、ジャイアンツが出場するだろう」と発言。同じサンフランシスコを本拠とする、メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツと、ＮＦＬのサンフランシスコ・49ersを混同しての間違いだったが、時すで遅し。副大統領は49ersのファンからブーイングを浴びせかけられた。

　49ersとジャイアンツとニューヨーク・ジャイアンツは22日、キャンドルスティック・パークでスーパーボウル進出をかけて戦う予定だ。

　政治家がその言動で自らの立場を危うくするのは、どうやらわが国だけではないようだ。バイデン副大統領の上司である、バラク・オバマ大統領もそんな一人だ。

　2008年のワールドシリーズ、フィラデルフィア・フィリーズ対タンパベイ・レイズの第６戦は、試合開始が従来の午後８時から30分遅れたが、これはオバマ当時上院議員の陣営が、試合を放送するＦＯＸスポーツから30分間の放送枠を買い取り、選挙ＣＭを放送したため。
　メジャーリーグにとって今や放映権収入は大きな収入源で、放送局の意向には逆らえなかったのだが、オバマ陣営の選挙ＣＭは「大統領選挙が11月に行われるのは、10月末のワールドシリーズを優先するため」と言われていたアメリカの伝統をぶち壊した。
　またこの件について対抗馬だったジョージ・マケイン氏は、「私が大統領になったら、ＣＭでワールドシリーズを遅らせたりしない」と、オバマ陣営を皮肉った。

　はたして第44代大統領に就任したオバマ氏だが、その後も野球ファンから反感を買うことがしばしば。2009年のオールスター・ゲームの始球式には、自身が応援するシカゴ・ホワイトソックスのジャケットを着て登場。歴代の大統領は特定のチームを応援したり、けなしたりするこは敬遠してきたのだが、ホワイトソックスのジャケット姿のオバマ大統領は、同じシカゴを本拠とするシカゴ・カブスのファンからブーイングを浴びた。
　オバマ大統領はすぐさま、「ホワイトソックスのジャケットを着ていると、妻が『かわいい』と言ってくれるから」「私はホワイトソックス・ファンではあるが、カブス・ヘイターではない」と釈明したが、前年の大統領選挙で「カブスのファンは、球場に行っても酔っぱらうだけで真剣に野球を見ようとはしない。野球を真剣に見るホワイトソックスのファンとは正反対なのだ」との失言を、カブスのファンは忘れてはいなかった。

　オバマ大統領は民主党に所属しているが、2010年に行われたマサチューセッツ州の上院補選では、民主党候補のマーサ・コークリー州司法長官が失言。「なぜ熱心に選挙運動をしないのか？」との記者からの質問に、「この寒い中フェンウェイ・パークの前に立って、ファンと握手しろとでもいうの？」と、シーズン序盤や終盤には肌寒いフェンウェイ・パークでボストン・レッドソックスを応援するファンの怒りを招いた。

　とどめの一言は、投票日３日前のラジオ・インタビューでの失言。当時レッドソックスに在籍していたカート・シリングが共和党を支持していることを聞かれ、先日の失地回復を狙ったコークリー氏は「シリングもニューヨーク・ヤンキースのファンですから」と、地元の英雄を、こともあろうに最大のライバルのファンと公言するタブーを犯した。（シリングは自身のホームページで、「自分の州で何が起こっているかわからない人でないと、僕のことをヤンキースのファンと呼んだりしない」と、コークリー氏の発言の内容を否定した）
　はたしてコークリー氏は選挙で敗戦した。

　わが国の落語では、「まくら」と呼ばれる導入部では、政治と野球の話はタブーとされている。お客さんが、どの政党の支持者で、どの球団のファンか、わからないからだ。

　落語でも気を使うことに、オバマ陣営は失敗を繰り返している。わが国の政治家のみなさん、野球ファンを怒らせると怖いですよ。