南シナ海の、南沙諸島(ベトナム名:チュオンサ/英語名:スプラトリー)を巡り、ベトナムが資源調査、中国側が妨害、両国政府による非難の応酬、ベトナムにおける中国への抗議デモ、ベトナムが南シナ海で実弾演習を実施するなど、両国間の緊張が高まった。中国ではベトナムを非難する意見表明が急増した。

 中国政府・国家発展改革委員会(発改委)経済体制と管理研究所主任の史〓教授は14日、ベトナムが実弾演習を行ったことで「中国がベトナムを討伐する理由ができた。徹底的に思い知らせる必要がある」との考えを表明した。(〓は火へんに「韋」)

 史教授は「中国の伝統に覇権(力による支配)の文化はない」と主張した上で、「ベトナムは中国の発展を見て、中国に学ぶと同時に、中国が強大になれば、覇権を用いなくとも、ベトナムや東南アジアが色あせてしまうと思い知った」、「南シナ海の資源がすべて中国のものになれば、ベトナムが東南アジアの盟主になるとの夢想も話にならなくなる。中国が強大になればなるほど、手遅れだと考えた」と論じた。

 史教授によると、現在の中国は経済利益の重要性を知り、国家による「利益と資源の争奪戦」が極めて重要と理解するようになった。しかし「中国人は発展の機会を失ってまでも、他者との調和を守ることが最も大切と考えている」という。

 しかし、ベトナムが南シナ海で実弾演習を行ったことは容認できる行為ではなく、「私の考えでは、中国は開戦する必要がある。南シナ海で、ベトナムに大きな教訓を与える必要がある」と主張した。

 史教授は、開戦すべき他の理由として「中国の民心を奮い立たせることができる」、「長年にわたり実戦経験がない海軍を訓練できる」、「使用期限がまもなく切れる弾薬を使ってしまえる」、「米国や東南アジアに顔色を変えさせ、小日本(日本に対する蔑称=べっしょう)を威嚇できる」、「ベトナムを引きさがらせることで、将来十年にわたる平和と周辺国家との関係の基礎ができる」、「米国も、中国の海岸線から1800キロメートル以内の範囲で、勢力を伸ばすことは不能と悟る」などと、列記した。

 米国軍の動きについては「米国は、中国と直接の戦争になれば共倒れになることを、よく知っている」として、心配する必要はないとの考えを示した。 史教授は、中国の軍事力が10年前に比べ、格段に向上したと主張。「外蒙古(モンゴル国)の祖国復帰、釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)の回収、沖縄を取り戻すことも、中国の発展にともない、10年前よりは容易になった」と論じた。

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◆解説◆ 史教授が表明した意見は、政府系機関に地位がある人物としては、かなり極端だ。ただし、“愛国者”の間では、同様の考えも珍しくない。なお、中国国内で今のところ、ベトナムに反発するデモの発生は伝えられていない。国民感情のエスカレートが政策に影響を与えることを恐れ、当局が規制している可能性がある。

 沖縄は江戸時代に薩摩藩に服属するようになってからも中国(清)に朝貢していたので、中国では「本来はわが国の一部」と考える人が多い。韓国・北朝鮮やベトナムにも同様な事情があり「本来は自国領」との見方がある。

 自国の歴史と領土に関するモンゴル国の見解は、「歴史上、モンゴルが中国全域を支配した(元朝)ことがある。清朝時代は中国の一民族である満洲族が、中国とモンゴルを支配した。辛亥革命後、モンゴル国は独立を『回復』した。ただし、内モンゴル地域についてはさまざまな事情で自国への併合を放棄した。したがって、現在は中国との間に独立や領土の問題は存在しない」だ。

 これに対して中国は「モンゴル族はそもそも、中国の少数民族のひとつ。元朝は中国の少数民族が成立させた政権だった。辛亥革命以後、モンゴル地域の一部が分離した。中華人民共和国は諸般の事情を考慮し、独立を承認した。したがって、現在はモンゴル国との間に独立や領土の問題は存在しない」との立場だ。

 「現在は問題なし」の認識は両国とも同じだが、1980年代ごろまでは「歴史解釈」を巡り、両国間で論争が生じたことがある。現実的な意味はないので、そのご論争はみられなくなった。しかし中国では現在も「モンゴル国はもともと中国の一部」と考える人が、少なくない。(編集担当:如月隼人)



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