SBI証券は、インターネット専業証券の中では、顧客口座数でナンバーワンの200万口座を超え、なお成長を続けている。新たなターゲットに掲げる目標は、「リテール証券ナンバーワン」という。同社社長の井土太良氏に、めざす証券サービスの姿について、ズバリ聞いた。

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 SBI証券は、インターネット専業証券の中では、顧客口座数でナンバーワンの200万口座を超え、なお成長を続けている。新たなターゲットに掲げる目標は、「リテール証券ナンバーワン」という。同社社長の井土太良氏に、めざす証券サービスの姿について、ズバリ聞いた。(3回シリーズの1)

――ネット証券として圧倒的なトップ企業となった成功のポイントは? 

 12年前に創業した当時は、ネット証券が誕生したばかりだった。競合会社が続々と名乗りをあげ、証券界に地歩を固めようと競い合っていた。その創業期の最初の時期は、当社はネット業界4位だった。今でも覚えているのは、当時、外資系証券でネット証券業界を担当していたアナリストが、当社にやってきては他のネット証券社長を引き合いに出して褒めちぎるものだから、ずいぶん悔しい思いをしていた。

 転機になったのは、株式委託手数料の最低金額を思い切って3分の1くらいに引き下げて840円にしたこと。当時は、業界の中では捨て身の戦略と受け止められ、「イー・トレード証券(当時の社名)は潰れる」とまで言われた。また、当社よりも上位の証券会社は上場をしていたので、極端な価格政策を実行することが難しいという事情もあった。それで、競合各社が2000円−3000円というときに、当社だけが840円という状況がずっと続いていた。ただ、お客さまはすぐには動かなかった。そのために、当社の価格に対して他社が危機感を持たなかったのかもしれない。結局、お客さまの流れがはっきりと当社に向かい始めるまで2年半くらいの期間が必要だった。

――お客さまが動き始めたのは、なぜ? 

 結果として当社が社是に掲げている「顧客中心主義の実践」が、お客さまに通じたということだろう。

 ただ、当時は実態として「顧客中心主義」の実現をめざして行動していたという意識ではなかった。とにかく、ネット証券の争いの中で、トップになりたいと思ってやってきた。具体的には、手数料はどこよりも安くしたので、「取り扱い投信の数は、どこよりも多くしよう」「システムはどこよりもトラブルがない良いシステムにしよう」「他社がやっていることはみんなやろう」ということで、あらゆることで競合他社に勝とうと思って努力した。

 気がついてみると、どこよりもお客さまにとってメリットのある会社になっていた。それで、結局は顧客中心主義を実践することによって、お客さまが選んでくださったということがわかった。これが正しいのだと。正直、そんな感じだった。

 当時は、純粋な証券マンだったので、ネットの世界で言われる「ウイナー・テイクス・オール」というのは、頭でわかっているだけで、本当のところではわかっていなかった。他の証券会社に勝とうと努力した結果、どこの証券会社よりもお客さんにとって有利なサービスを提供する結果になって、お客さまがどんどんやってきてくださって、「これがウイナー・テイクス・オールということか」ということが実感された。

 それで、この方針をずっとやっていこうと考えた。その結果が、今に通じている。

 ネットの世界は、ごまかしが利かないので、品揃えも、システムのクオリティも、手数料などのコストも、すべてにわたって他と比べて良いと、トータルで見ると圧倒的に良いとならないと、お客さまは来てくださらない。しかし、一度来てくださると簡単には他に移らないということも肌で感じた。

――200万口座は、通過点なのか? 

 200万口座は通過点であるし、特に若い世代には普及の余地が大きいと思っている。そうは言っても株式市場に強気になれなければ、新規の口座開設は進まない。口座開設という分野では、マーケットの影響を受けるということは思っている。ただし、他の証券会社と比較すると経営のボラティリティは低い。相場が悪くなっても赤字にはならない体質になっている。大勢の小口投資家に支持していただいているリテール証券会社の性格が出ていると思う。

 口座の獲得件数は、ピーク時に月間で10万口座を獲得していたことに比べると、今は10分の1の水準。株式市場が回復し、かつてNTTが上場したときのように、誰もが株式投資に関心を持つようになれば、また、月間で5万、10万の口座獲得も可能だと考えている。(つづく)(聞き手・編集担当:徳永浩)



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